ボブの告白 | SFショートショート集

SFショートショート集

SFショート作品それぞれのエピソードに関連性はありません。未来社会に対するブラックユーモア、警告と解釈していただいたりと、読者の皆さんがエピソードから想像を自由に広げていただければ幸いです。長編小説にも挑戦しています。その他のテーマもよろしく!!

本編は「ヒート・セーバー」・・・続編です。

 

 テラフォーミング・プロジェクトのボブ・カーヴェルは、カーラのいるスペースナビのアウタースペース・コンタクト(OSC)のオフィスにやってきた。

「初めまして、テラフォーミング・プロジェクトのボブ・カーヴェルといいます」

ボブが緊張した面持ちで握手を求めてきた。

「何だか緊張してしまって・・・大ファンなんです。いつも活躍されてるのを見て、こうしてお目にかかれる機会が来るとは思ってもみませんでした」

「活躍だなんてとんでもないです、ただ運命のいたずらというか、偶然が重なって地球とヒュームの人たちの架け橋をすることになったんです・・・今日はどんな御用かしら?どうぞおかけください」

ボブ・カーヴェルは椅子にこしかけると徐に、

「テラフォーミング・プロジェクトのことで、実はですね・・・」

 

 カーラがボブから聞かされた話は想定を遥かに超えていた。

 グローバルネットワークは今や人類のみならず異星人さえもアクセスしてイメージを交換できるアイテムとなっていることを実感した。そして、カーラも地球人もヒューム人も知ることのなかった情報として、ボブは火星の真実の姿を語ってくれた。

 

 

 火星のグローバルネットワークにアクセスしているのは地球人だけではなかった。火星に訪れるヒューム人たちはもちろんだが、火星の”謎の住人”たちもアクセスを試みていたのである。”謎の住人”たちの話は、ボブとテラフォーミング・プロジェクトの仲間数人だけが共有する現実の話であった。ボブは初めて”謎の住人”たちと接触したのは約1年前であるが、自覚はなかったがすでに20年前にはコンタクトをしていたのだ。”謎の住人”たちは概ね友好的であったが、テラフォーミング・プロジェクトの遂行を阻止しようとしている過激的な住人もいるようだ。

 人々が生活するための限定的な居住地をつくるのではなく、火星自体を地球に近い環境を持った惑星に変身させること、火星の地球化という壮大なプロジェクトが「テラフォーミング」と呼ばれるものだ。

 ”謎の住人”とは、ある事情によってやむなく地下を居住区に造り替えて、何万年も前から火星の地下深くに住み着いている先住民のことであった。

 テラフォーミング・プロジェクトの遂行を快く思っていない地下住民たちのグループが、グローバルネットワークにアクセスしていた時、ヒューム人が接触してきたのである。一方、ボブとその仲間は友好的な地下住民と何度か接触を試みていた。双方にとってテラフォーミング・プロジェクトの有効的な推進を模索していた矢先に重要な発見があったことをボブ・カーヴェルから打ち明けられたのである。

 

 火星の地下に住んでいる先住民たちの事をボブたちは「火星人」だと思っていた。しかし、彼らについて調べた結果をカーラに直接渡すことが最善だと判断して、ここへやって来たのだ。テラフォーミング・プロジェクトを遂行するうえで、地球人とどこまで共存できるのかを環境問題の観点から推測するために、彼らのDNAを採取して調べたのである。

 

 その結果判明したことは・・・

 

 DNAが示していた結果は「火星人」たちは「ヒューム人の子孫」だということだ。

 

 ボブは地下住民の間で伝えられてきたという「太陽系のシンボル」が描かれた石盤の3Dホログラムも見せてくれた。それはまさしく、10万年前の地球古代文明の遺跡から発見された石盤と瓜二つであった。

 

 

 

…続く