
↑ ランタンの街ホイアン チャンプー通りで
ども!
サイゴン駅で統一鉄道「SE2便」に乗車したまま行方をくらませていた「なつむぎ」です。
諜報活動がばれて当局に拘束されたんじゃないかって心配してくれた方々には、ごめんなさい。
実はこの後、統一鉄道の終着地ハノイで病院送りになって、一金3000万ドンの手術の契約書にサインするハメになるんだけど、そのくだりはいずれまたね。
今日の記事はまだ元気な頃の話だよ。
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ベトナムの列車に乗った後は、タイの列車がキレイに見える。
そんな風な記事をどこかで読んだ事があって、だから結構なポンコツ車両を想像していた。でも統一鉄道の車両は思ってたほどオンボロじゃなかった。
4人コンパートメントの「Soft Berth」(つまり1等寝台車)を選んだからなのかもしれないけれど、清潔なシーツもあったし居心地は悪くない。それに、共産国の列車の車掌って言うとつい無愛想で高圧的なキャラクターを想像しちゃうけど、統一鉄道の車掌はフレンドリーだったしね。
それでも、いつもの夜行列車の旅と比べるとなんとなく眠りが浅かった。いや、なんとなくじゃなくて理由は想像が付くんだな。
理由の1つは保線の具合が悪いのかかなり揺れが激しかったこと。そしてもう1つは……
コンパートメントの中で、ボクのベッドは下段の1つで、上段の2つのベッドは中年のベトナム人男性が使っていた。ボクの隣のベッドの乗客は、サイゴン駅を出発してしばらくしても姿を現さなかった。
これは翌日になって分かったことなんだけど、隣のベッドの主は、ボクと同じ車両に乗っていた欧米人団体客のツアーガイドだった。彼は出発してしばらくの間、その団体客の世話なんかをしていたんだろうな。
列車がホーチミン市の市街を抜け、カーテン越しに窓から差し込む光も弱くなった頃、ボクらのコンパートメントはライトを落とした。彼がやって来るのを待たずにコンパートメントはほとんど真っ暗になっていたのね。
ガタギシ揺れる列車の中でボクが半分眠りに落ちようとしていた頃、扉を開け誰かが入って来る音がした。ボクは横向きに壁に向かって寝ていたから入って来た人の姿は見えないのだけれど、ヒソヒソと話をする2人の声が聞こえる。一人は男性、一人は女性。
しばらくして扉を閉める音がした。でも相変わらず2人のヒソヒソ声が聞こえる。そしてどちらかが、あるいは両方か、ベッドに横たわる音がする。
気になったな。
もっと早く身体の向きを変えておけば良かった。タイミングを逸してしまって今更寝返りを打つのはなんかはばかられるし、別にそんなに大変な事態にはなっていないだろうけれど、なんか見ちゃいけないんだろうってそんな風に感じた。
その内にヒソヒソ声は列車の音にかき消されるようになり、いつの間にか耳を澄ませても声は何も聞こえないようになり、気付かぬうちにボクは眠っていた。
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朝目覚めた時には、ボクの隣のベッドには30歳くらいの青年一人が寝ているだけだった。
朝の挨拶をした後、ツアーガイドの彼としばらく旅について話をした。
わざわざこの列車に乗るためにスケジュールを組んだのだとボクが話すと、彼も列車の旅が好きらしく、それならばこのサイトを見てみると面白いよと世界中の鉄道旅行についてまとめたサイトを教えてくれた。
ちょっと仲良くなったんだけどね。
でも、昨日の夜このコンパートメントに居た女性は何だったのかって、それは聞けなかったな。
前日の19時にサイゴン駅を出発した列車が1時間遅れて13時にダナンの駅に着いた時は、結構どんよりと疲れた気分だった。そんなこんながあったせいかな。
ダナンから南に30キロ程に位置する目的地のホイアンまでは乗り合いバスがあるんだけれど、とにかく早く熱いシャワーを浴びて身体をしゃっきりさせたかったものだから、30キロをタクシーで移動しちゃったよ。
小さな愛らしいホイアンの街についてはまた別の記事に書くとして、夕暮れ時のこと、街をぶらぶらしている内に小学生高学年くらいの少年が店番してる居心地の良さそうなレストランを見つけてね。その店でホイアン名物のカオラウという名のうどんを食べる事にしたんだ。もちろん生ビールも一緒。
そしたら店番の少年がタバコ吸ってるじゃん。こりゃ大人として注意しなくちゃならんかな、なんて思いながらよーく観察してみると、少年じゃなくて大人だった。
あ、そか。大人だったんだ。
って思った時に声が聞こえたんだけど、驚いたことに女の子でもあった。
少年っぽい女の子に会計をお願いしてさらに驚いたことには、生ビール1杯6000ドン(約24円)だった。
いやもっと驚いたことには、隣の店では5000ドンだった。
そして翌朝もっともっと驚いたことには、すこし街を外れた店では4000ドンだったんだ。
この街は、どんだけボクにビールを飲ませたいのやら。

↑ ホイアンの街並みは中国色が色濃い

おっと。問題なのはビールじゃなかった。前夜の声だけの女性についてなんだけど……
列車がダナン駅に到着する1時間くらい前、ツアーガイドの彼がコンパートメント前の通路で団体客の何人かと話をしている声が聞こえて来た。英語を勉強している友達なんだけど少し会話をしてもらえないかと、若い女性を紹介しているようだった。彼女は1等寝台車ではない別の車両に居たらしかった。
きっと昨夜の声の主に違いない。そう思ってコンパートメントから顔を覗かせ見てみると、なんとも可愛いらしい女性がたどたどしい英語で、自分は23歳で学校で経営を勉強していると話していた。
そう言えばツアーガイドの彼はこの地方の出身だって言ってたっけ。ホイアン観光をガイドした後しばらく休みを取って、家族の元で過ごすんだって言ってたっけ。
きっと、家族に紹介するつもりでガールフレンドを同行させていたんだろうな……