いや、日本の科学技術だったらレベル7の事故は起きないはず、って驚いたワケじゃないんだ。
3月15日の大爆発で何十万テラベクレルとかの放射能のほとんどが放出されたってことなのに、なんでそれが4月12日になって発表されたんだろう、ってね。
*****
大学を出て数年間、ボクはゼネコンのサラリーマンとして働いていたんだけれど、その会社には原子力発電所に関連する部署があった。もちろん発電機本体を作るんじゃなくて、それを設置する建物を作るための部署だった。つまり「建屋(たてや)」を。
なにかの設備のために必要となる建築物を「建屋」って呼ぶのはゼネコン勤めのボクには耳慣れたものだったけど、今回の原発事故で誰もが知る言葉になってしまったよ。
ボクと同期入社のM君は会社に入ってすぐこの原発関係の部署に配属されて、だからボクはよく彼から原発について話を聞くことがあった。
----- なつむぎさぁ。お前には良くわからないかも知れないけど、原発ってこうなってるんだよ。
ってな感じでね。
えっと…… ボクも一応工学部の出身で、彼と同じように建築職としてその会社に入ったワケだけど、彼は構造設計を勉強してきたバリバリの構造系エンジニアで、一方ボクは、あの国の街並が美しい、この時代の建物が魅力的だ、と言ってるだけの意匠系。
そりゃ、工学的知識に差があるワケだよ。
----- 原発の建屋はさ、さまざまな外力に耐えうる様にすごく堅牢に造られてるんだよ。たとえば飛行機が原発に墜落したとするじゃない? その時も安全である必要があるんだよ。
へー、そうなんだ。原発って賛否両論あるけれど、専門家それぞれがみんな知恵を絞って安全に作り上げているもんなんだ。
なんてね、無邪気に思っていた。
そして、水素爆発やらで建屋が吹き飛んだ映像を見たときは、いったいどうしたことかと思って無邪気だった自分を恥じたね。
そう無邪気に思っていたって点で、今回の事故に関しては自分も同罪なんじゃないか、いや「共同正犯」じゃないだろうけれど、「未必の故意」くらいではあるんじゃないかって。
だからつらい。
科学技術を信じるってことの多くは、専門家の意見を信じるってことなんだ。
決して全てを理解をして、その上で確信してるワケじゃない。
でも、信じた結果は背負わなくちゃならない。
つらいね。
*****
ボクがもっと無邪気だった小学生の頃、雨に濡れると放射能の影響でハゲになるってウワサになって、ボクらは急な雨の時はランドセルを頭の上にのせて走って帰ったっけ。
今となって思えばそれも単なる風評だったんだろうけれど、いやまてよ、あの時にもっとちゃんと頭を隠していれば、今もまだボクの頭髪はゴワゴワでフサフサだったのだろか???
----- ね、パパ。それってチェルノブイリの時の話なの?
違うんだな、娘。チェルノブイリってのは25年前の話でさ、そりゃその頃パパはまだピチピチの青年だったけど、ランドセルを背負う程は幼くなかったのさ。
----- じゃ、なんの放射能?
それが、米国のものだか、ソ連のものだかは忘れたけれど、当時は大気圏内で核実験なんかをバンバン行ってて、その放射能だったんじゃなかったかな。冷戦時代だったしね。
----- わぁ、冷戦時代って。古っ!
そんな話を昨夜、ビールを飲みながら娘とした。
こいつ、冷戦が終わってから生まれて来た子なんだ。
きっとボクの親は、戦争を巡るボクとの会話の後で、
こいつ、終戦後に生まれて来た子なんだ。
って思ったかも。
*****
久しぶりの記事なのに、とりとめがなくて、すんまへん。
ここ10日くらい、忙しかったり、あわくってたり、煮詰まってたり。
そのあたりの事情は、またいずれ。
