
ワタシ、恋人、いません。
代わりに、女房、います。
子供も、ふたり、います。
って、ボクは答えました。ついカタコトで。
それはもう随分と昔のこと...
「なつむぎさぁ。アルゼンチンから設計者の友達が日本に来ちゃったんだよ。
日本で働きたいって前から言ってたんだけど、難しいからやめろって言ってたのに。
とりあえず、新宿あたりのビジネスホテルに泊まってるみたいだから、
お前、面倒見てやってくれよ」
と、前の会社の同僚に言われて、D君に会った頃は日本はバブル経済だったな。
だから、たまたま付き合いのあった日本で一番大きな建築設計事務所にD君を連れて行ったら、
すぐに雇って貰えちゃった。
今思うに、なぜ、ボクの方を雇わなかったんだ???
あの時代は、いろいろと罪作りな価値観を日本に植え付けちゃった時代なんだと思うけれど、
そのまっただ中では、なんだかとってもスピード感がある時代だって感じてたのかもしれない。
「あなた、恋人いるですか?」 と尋ねられたのはちょうどその頃で、
D君にまとまったお金が入ったので、
都内某所にある、アジア某所から来た女性達の居るお店で、
D君のおごりで飲んだ時のこと。
テーブルで日本人はボクだけ。
でも会話は日本語で進んでいるから、
ついカタコトになっちゃうってワケ。
それにしても、それ以来、恋人がいるかなんて聞かれたことがないな。
なぜ、今こそ、そういう興味を持たれないんだ???
*****
もし今、「恋人いる?」って聞かれたら、どうするかな。
やっぱり、正直に答えちゃうんだろうな。
恋人はいらない。
