ジョアン・ボスコの作曲ですが、エリス・レジーナの歌で有名かもしれない。
タイトルからして、
「酔っ払い」も「綱渡り芸人」も何かの比喩であることは、容易に想像がつきますよね。
一説によると、この歌が歌われたころのブラジルは軍事政権の圧政下で、
「酔っ払い」は、やりたい放題の政府を、
「綱渡り芸人」は、危険を承知でロープの上を一歩、一歩進む「希望」を表しているのだそうです。
希望を、綱渡り芸人と表現するのは、とってもきれいだな。
希望の持つ危うさを、とっても良く表している。
そしてその舞台のサーカスは、つまりは人生のことなんだろうけど、
華やかであっても、いつもどこか寂しさが宿っている。
人を笑わせるピエロが、いつも泣き顔であるようにね。
でもな...
この詩で、酔っ払いはちょっとかわいそうな役割を担わされてる気がして、
ちょっと肩入れしちゃうよ。
彼が酔うには、きっと酔わなくちゃならない理由があったんじゃないかって。
だって、ボクはたいてい酔っ払いだから。
*****
詩は比喩に満ちていて、
何度読み返しても、なかなかその意味をはっきりと示してくれないよ。
でも、「人生の過酷さに対して希望を捨てない」
そんなメッセージが込められているんだって思う。
酔っ払いと、綱渡り芸人が出てくるところだけ、
拙い日本語訳をつけてみました。
♪ Caía a tarde feito um viaduto
E um bêbado trajando luto me lembrou Carlitos
高架に陽が暮れる。
チャップリンに似た喪服の酔っ払いが居る。
A lua, tal qual a dona de um bordel
Pedia a cada estrela fria um brilho de aluguel
E nuvens, lá no mata-borrão do céu
Chupavam manchas torturadas - que sufoco!
Louco, um bêbado com chapéu coco
Fazia irreverências mil pra noite do Brasil
Meu Brasil
気の違った、山高帽の酔っ払いは、
ブラジルの夜に、私のブラジルの夜に、
多くの無礼を働いている。
Que sonha com a volta do irmão do henfil
Com tanta gente que partiu num rabo de foguete
Chora a nossa pátria mãe gentil
Choram Marias e Clarices noi solo do Brasil
Mas sei que uma dor assim pungente
Não há de ser inutilmente
A esperanca danca na corda bamba de sombrinha
E em cada passo dessa linha pode se machucar
私は知っている。こんな突き刺すような痛みでも、
決して無駄ではないことを。
希望は、傘をさして、たるんだロープの上で踊っている。
その一歩、一歩が、失敗に終わるかもしれないのに。
Azar, a esperanca equilibrista
Sabe que o show de todo artista tem que continuar
●João Bosco e Zizi Possi
●Elis Regina
●Nani Medeiros

泣きます。
だって、人生は泣くに値するから。
喜びの涙でも、悲しみの涙でも、涙の出ない乾いた人生よりはいい。
そして、酔っ払いのボクは、酔って泣きます。
酔って無礼を働くよりは、良いでしょ?
笑顔で、陽気に騒ぎながら、
「なんでもないさ。どうってことないよ」と強がりを言いながら、
心の中で泣きます。
心の中で涙を流しているから、人前だって大丈夫。
