分子栄養学について調べていると、

 

「疲れやすい人は鉄不足かもしれない」

「フェリチンが低い人は、鉄を補った方がいい」

 

といった情報を見かけることがありますよね。

最近では、SNSやYouTubeなどでも、鉄の重要性について紹介されることが増えました。

 

実際に、鉄は私たちの身体にとって欠かせない栄養素です。

でも、ここで少し知っておいてほしいことがあります。

 

「鉄が身体に必要」という情報をもとに「鉄だけ」を補っても、貧血が改善出来るとは限りません。

 

今回は、鉄を例にしながら、健康情報を自分に合わせて活用するための考え方をご紹介します。

鉄は、なぜ身体に必要なの?

 

鉄は、私たちの身体の中でさまざまな働きをしています。

その中でも、よく知られているのが、赤血球に含まれる「ヘモグロビン」をつくるために必

要な栄養素であるということです。

 

ヘモグロビンは、酸素と結びつく働きを持つタンパク質です。

 

 

私たちが呼吸によって取り込んだ酸素は、赤血球の中にあるヘモグロビンによって、全身へ運ばれています。

 

そのため、鉄が不足すると、ヘモグロビンを十分につくれなくなり、鉄欠乏性貧血につながることがあります。

 

また、貯蔵鉄を貯えているフェリチンが低い場合も、潜在性鉄欠乏性貧血といって貧血のリスクが高い状態です。

 

特に月経がある女性では毎月出血するため、貧血になりやすくなります。この他、お子さん、お年寄りの方、スポーツをしている方も、鉄の需要や消耗が多くなるため、貧血のリスクに注意が必要です。

 

ここまでは、一般的にもよく知られている内容ですよね。

では、貧血になった場合、鉄だけを摂ればよいのでしょうか?

 

実は、「鉄だけ」や「鉄」「プロテイン」「ビタミンB群」など、単に栄養を摂れば改善出来るわけではありません。

 

分子栄養学を実践する場合は、「自分の状態に合わせて至適量の栄養を補給すること」が大切です。

赤血球は「鉄だけ」でつくられているわけではありません

例えば、赤血球に含まれるヘモグロビンについて考えてみましょう。

 

ヘモグロビンは、鉄を含む「ヘム」と、タンパク質である「グロビン」から構成されています。

 

 

つまり、ヘモグロビンをつくるためには、鉄だけでなく、タンパク質の材料になるアミノ酸も必要なのです。

 

さらに、赤血球がつくられる過程には、ほかにもさまざまな栄養素が関わっています。

 

例えば、ビタミンB12や葉酸は、赤血球の形成に必要な細胞分裂に関係しています。

ビタミンB6はヘムの合成に関わり、亜鉛や銅などのミネラルも、ヘムの合成や鉄の代謝に関係しています。

 

このように、赤血球を正常につくるためには、鉄だけでなく、複数の栄養素が必要になります。

 

身体の中では、さまざまな栄養素が互いに関係しながら働いているんですね。

 

このように、貧血がある場合は、ほかの栄養素の不足も同時に存在している可能性はあります。

 

例えば、普段の食事量そのものが少ない人であれば、鉄だけでなく、タンパク質やビタミン、ほかのミネラルの摂取量も不足しているかもしれません。

 

そのため、鉄だけに注目していると、身体全体の栄養状態を十分に理解できない場合があるのです。

フェリチンが上がれば、貧血も改善する?

鉄について調べていると、「フェリチン」という言葉を目にすることも多いと思います。

フェリチンは、鉄を蓄える働きを持つタンパク質です。

 

血液中のフェリチン値は、身体に蓄えられている鉄(貯蔵鉄)の状態を評価するための重要な指標になります。

 

一般的にフェリチン値が低い場合には、身体に蓄えられている鉄が不足している可能性が高いと考えられます。

 

また、フェリチン値が低くても、ヘモグロビン値が正常で、まだ貧血にはなっていない場合があります。

 

このような状態は、一般的に「隠れ貧血」と呼ばれています。

 

では、フェリチン値が上がれば、貧血も改善したと言えるのでしょうか?

 

実は、そうとは限りません。

 

なぜなら、フェリチンは鉄の貯蔵状態を評価する指標であり、貧血の有無を判断するヘモグロビンとは役割が異なるためです。

 

例えば、鉄を補った結果、ヘモグロビン値が改善しても、貯蔵鉄はまだ十分に回復していない場合があります。

 

反対に、フェリチン値が上昇していても、ヘモグロビン値が十分に回復していなければ、貧血が改善したとは判断できません。

 

さらに、フェリチンは感染症や炎症、肝疾患などによって上昇することもあります。

 

そのため、フェリチン値が高いからといって、必ずしも鉄が十分に蓄えられているとは限らないのです。

 

貧血や鉄の状態を考えるときには、フェリチンだけでなく、ヘモグロビンや赤血球の状態、必要に応じてほかの検査結果なども組み合わせて確認することが大切です。

 

一つの検査値だけでは、身体の状態を十分に理解できないこともあるんですね。

「何が不足しているか」だけでなく、「なぜ不足しているか」も大切

もう一つ、貧血について考えるときには重要なことがあります。

 

それは、なぜ鉄が不足しているのか? 何故貧血が起こっているのか?ということです。

 

例えば、食事から摂取する鉄の量が少ない場合もあります。

月経などによって、鉄が失われる量が多くなっている人もいるかもしれません。

 

また、消化・吸収に影響する問題があったり、消化管などからの出血が関係していたりする場合もあります。

 

このように、鉄不足が起こる理由は、人によって異なります。

 

そのため、鉄を補給して一時的に数値が改善したとしても、不足している原因が解決されていなければ、再び鉄不足になる可能性もあります。

 

特に、出血や病気などが関係している可能性がある場合には、当てずっぽうで対応しようとせず、医療機関で原因を確認することが大切です。

 

分子栄養学を実践する際にも、単に不足している栄養素を探すだけでなく、その背景にある食生活や身体の状態まで考えることが重要です。

「正しい情報」と「今の自分に必要な情報」は違う

鉄が赤血球の形成に必要な栄養素であることは、科学的に正しい情報です。

 

しかし、その情報を知っただけでは、今の自分にどのような栄養補給が必要なのかは分かりません。

 

鉄以外の栄養素の状態はどうなのか。

そもそも、なぜ鉄が不足しているのか。

現在の身体の状態はどうなっているのか。

消化吸収能に問題は無いか。

運動や年齢、生活習慣に合わせて実践できているか。

 

こうしたことも考える必要があります。

 

特に、ネットやSNS上でオススメの補給量が書いてあったとしても、その量が自分にとって必要な量とは限りません。また、自分に合っている方法とも限りません。

 

「身体に必要な栄養素の情報」とそれが「今の自分にとって最適な情報」は、まったく別の話なのです。

 

健康情報を見つけたときには、

「この栄養素は身体によいらしい」

というところで終わるのではなく、

 

「では、今の自分にとって最適な情報なのだろうか?」

 

と、一度考えてみたいですね。

分子栄養学を、自分に合わせて活用するために

栄養素の働きや身体の仕組みを学ぶことは、とても大切です。

でも、ネットやSNSに書かれた情報をそのまま実践すればいいわけではありません。

 

学んだ知識を使って、自分の身体や生活を理解し、自分に必要な方法を考えられるようになる。

 

そして、必要に応じて医師などの専門家の力も借りながら、自分に合った方法を選んでいく。

 

そのような実践をしていく事が大切です。

 

人を分子栄養学に合わせるのではなく、分子栄養学をその人に合わせる。

 

このような考え方は「オーソナライズ」と言います。

 

貧血や分子栄養学についての情報も、こうした考え方で受け取ってみると、また違った発見があるかもしれませんね。

鉄・フェリチン・貧血について、さらに詳しく知りたい方へ

今回の記事では、鉄を例に「正しい健康情報」と「自分に必要な健康情報」の違いについてお話ししました。

 

分子栄養療法ナビでは、フェリチン・赤血球・ヘモグロビンの関係や、赤血球の形成に必要な栄養素について、図解を交えながら詳しく解説しています。

 

また、健康情報の科学的な根拠を確認する方法や、自分に必要な情報を判断するための考え方も紹介しています。

興味のある方は、ぜひ参考にしてみてください。

▶ 「健康情報を理解する」とは?数ある分子栄養学の情報から、自分に必要なものを見極める方法