子供の低血糖症を防ぐために。まずは日頃から十分な量の食事を摂らせることが大切です。

ここまでは、子供の低血糖症の原因や応急処置について解説してきました。低血糖症は、一度陥ると命に関わる恐ろしい病気です。そのため、低血糖症に陥ってから慌てて対処するよりも、日頃から低血糖症に陥らないために十分な対策を行っていく事が重要です。

 

お子さんが低血糖症に陥らないために行うべき対策としては、日頃から十分な食事を摂らせることです。お子さんが発症する低血糖症の殆どは、主に「ケトン性低血糖症」と呼ばれる低血糖症になります。これは、食事量が足りなかったり、運動会など激しい運動を行ったりした事によって糖の消費量が増大した場合に引き起こされる低血糖症です。

 

このことから、子供の低血糖症を予防するには第一にカロリーをしっかり摂らせることと、食事はなるべく抜かないようにしましょう。特に朝食が重要で、朝食を抜くとエネルギーが足りなくなって低血糖症を引き起こしやすくなります。また、日中の活動が多い時間帯では、おやつなど補食を上手く取り入れることで血糖値が下がりすぎてしまうことを予防出来ます。

低血糖を予防する食事内容は、和定食や地中海料理がオススメ。成長期はタンパク質を中心にカロリーをしっかり補給しましょう。

もしかすると、朝食は食パンで済ませていたり、食べないからといって何も食べさせずに学校に行かせていませんか?

 

成長期のお子さんは、日々成長のためにカロリーや栄養を多く消費しています。朝食をパンだけで済ませてしまうと、十分な栄養やカロリーが摂れないため、低血糖症に陥りやすくなってしまいます。

 

また、朝食を食べたくないお子さんも多く、もし朝食を抜いてしまうと低血糖症に陥りやすくなってしまいます。低血糖症を引き起こさないようにするためにも、朝食はしっかり食べさせてあげましょう。

 

オススメの朝食としては、やはり和食がオススメです。ご飯に味噌汁、納豆に卵焼き、焼き鮭などの和定食は、炭水化物に脂質、タンパク質をバランスよく摂る事が出ます。

 

また、食事内容としては他に地中海料理もオススメです。地中海料理は、肉や魚などおかずの種類も多く、炭水化物や脂質、タンパク質をバランスよく摂る事が出来ます。朝から凝った料理を作って食べさせる必要はありませんが、作り置きや冷凍のストックなど駆使してなるべくバランス良くしっかりカロリーが摂れる食事を提供してあげましょう。

 
 

この時、必要な量のカロリーはしっかり摂るようにして下さい。カロリーは身体を動かすために必要なエネルギー源のことで、これが足りなくなると低血糖を引き起こしやすくなります。

 

必要なカロリー量は年齢や体格、活動量で変わります。お子さんに必要な量のカロリーを計算して、十分な量を摂らせてあげてください。お子さんに必要なカロリー量については、次のサイトで計算することが出来ます。

 

 

基礎代謝量・1日の必要エネルギー量計算式 基礎代謝量・1日の必要エネルギー量計算サイト

 

サイト上で、お子さんの身長と体重、年齢と性別を入力し、活動レベルを「低い」「普通」「高い」の中から選択して「計算」ボタンを押せば、一日に必要なエネルギー量と基礎代謝量が分かります。ここで計算したカロリー量を参考に、一日に必要なエネルギー量は必ず摂取するようにして下さい。

 

例えば、ある人の基礎代謝量が1320kcal/日、一日に必要なエネルギー量が2292kcal/日だとしましょう。

 

この基礎代謝量は、「体温など生命維持をするために絶対必要なカロリー」のことです。この基礎代謝を下回ると命の危険に晒されてしまいます。


基礎代謝量以上のカロリーは生きる上で最低限必要なカロリーですので、絶対に下回らないよう注意してください。

 

一日の必要エネルギー量は、基礎代謝に加えて体を動かしたり、頭を使ったり、喋ったりするなど日常生活を送る上で必要なカロリーが足されたものです。この一日の必要エネルギー量を十分に摂取する事で、低血糖症に陥ることを防ぐことが出来ます。逆に、この一日に必要なエネルギーよりも摂取カロリーが足りないと、低血糖症の発症や筋肉量の低下に繋がります。

 

そのため、お子さんに必要な一日のエネルギー量を計算し、これを下回らないような食事をするようにしましょう。

 

このカロリーは、多すぎても少なすぎても身体にはよくありません。必要エネルギー量よりも多いカロリーを摂取してしまうと肥満に繋がります。適切なカロリー摂取量を心がけて下さいね。

 

それから、低血糖症を防ぐには朝昼晩の三食共に十分な量の食事を摂る事が大切ですが、一度に十分な量の食事が摂れないお子さんもいます。この場合は少量の食事を何回かに分けて食べる「回数頻回食」を行ってみて下さい。

一度に多く食べられないお子さんは、食事をこまめに摂る回数頻回食を実践しましょう。

お子さんの状態によっては、一度に多く食べられないお子さんも居ます。この場合は、少量の食事をこまめに摂る「回数頻回食」を実践してみましょう。

 

回数頻回食とは、1時間や2時間おきに少量の食事を何回も摂取する事です。また、朝昼晩の三食に加えて、間に間食を挟むという方法もあります。


こうすることによって一日を通して十分な糖質とカロリーを摂取でき、血糖値を一定に保てるので低血糖も防ぐことが出来ます。

 

回数頻回食のコツは、「吸収が比較的穏やかな糖質を組み合わせる」事と、「なるべくこまめに食べる」ことです。こうすることで血糖値の乱高下を防ぎ、更に血糖値を下げないように安定させることが出来ます。

 

ここで言う吸収が比較的穏やかな糖質とは、お米や芋類などのデンプン質のことです。デンプンは噛むことによって徐々にブドウ糖に分解され、徐々に吸収されていきます。このため、精製された砂糖を補給するよりも、比較的穏やかに血糖値を上昇、維持させることが出来ます。

 

お団子くらいに小さく握ったおにぎりを1時間おきに食べるなど細かく分けて食べれば、血糖値をなるべく一定以上に保つことが可能です。

 

加えて、お米などのデンプン質は油でコーティングすると急激な血糖値の上昇を緩やかにしてくれます。具体的には、チャーハンやピラフなど、お米を油で炒めるものがこれにあたります。

 

これらも低血糖の予防としてはそれなりに活用出来ますので、吸収の早い糖質と吸収の遅い糖質を組み合わせてなるべく回数頻回を行い、十分なカロリーの確保と低血糖の予防をしてみて下さい。

 

また、成長期のお子さんの場合は、おやつなど間食を摂らせてあげることも低血糖症の予防に効果的です。

 
 

おやつの種類としては、先ほど解説したように飴やチョコレート、クッキー、果物、おにぎりなどのデンプン類がオススメです。この間食も、人工甘味料やカロリーオフの食べ物は避け、砂糖や果糖が含まれているものを選びましょう。

 

食べる時間としては、食事と食事の間や、外遊びをしているとき、勉強をするときなどエネルギーの消費が増えるタイミングで摂るのがオススメです。この間食は必要量のみにし、過剰には与えないように注意して下さい。

食事を工夫しても繰り返す低血糖症。その原因にはもしかして消化吸収能の低下が関係しているかも。

ここまで、お子さんの低血糖症としてしっかりとカロリーを確保すること、一度に食べられない場合は回数頻回食を行う事について解説してきました。ただ、このような食事の改善だけでは根本解決にならない場合もあります。

 

特に、何度も低血糖症を繰り返してしまう場合や、食事を工夫しても低血糖症に陥ってしまう場合は、胃や腸などの消化吸収能に問題があるかもしれません。

 

私達の身体は、食べた食べ物を細かく分解して吸収する機能を備えています。例えば、大きな食べ物は口でよく噛んで細かくし、胃では胃酸によって更に分解しています。この分解して細かくなった食べ物は、最終的に小腸で吸収され、残りかすは便として排泄されています。

 

この消化吸収の過程に問題があると、食べた食べ物がうまく消化・吸収することが出来ません。その結果、食べていても体内で栄養が不足し、低血糖症に陥ってしまう事があります。

特に、十分な消化吸収を行うためには各種臓器から分泌される消化酵素の働きが重要です。例えば、炭水化物を分解する際は唾液やすい臓から分泌される「アミラーゼ」という消化酵素が必要ですし、タンパク質を分解するためには胃酸に含まれる「ペプシン」と呼ばれる消化酵素が必要です。

 

これら消化酵素はタンパク質を分解して出来るアミノ酸から作られており、タンパク質が不足するとこれら消化酵素の合成量が低下してしまいます。低血糖症を発症しやすいお子さんはタンパク質不足など栄養欠損に陥っている傾向が多く、その原因の多くが朝食をパンだけで済ますなどの食生活に問題がある場合が多いです。

 

また、タンパク質を消化するために必要な「ペプシン」もタンパク質を元に作られている事から、タンパク質が不足するとますますタンパク質不足が進行します。このような事も、食べた食べ物が十分に消化吸収出来なくなる原因です。

 

このことから、慢性的に栄養が不足している状態だと、消化酵素の分泌量が低下して消化吸収がうまく出来なくなり、低血糖症を発症しやすくなります。このような場合は、食事内容の工夫に加えて消化サポートも必要です。

 

具体的には、先ほど解説した回数頻回食に加え、消化酵素のサプリメントを併用するのがオススメです。消化酵素のサプリメントには、アミラーゼやリパーゼ、ペプシンなどの消化酵素が配合されている物があり、これらが食べた物の消化を助けてくれます。

 

また、過敏性腸症候群や機能性ディスペプシアなど消化管に問題がある場合は、消化酵素のサプリメントに加えてアミノ酸やグルタミンを摂取する事も効果的です。グルタミンはアミノ酸の一種で、腸のエネルギー源として利用されます。加えて、アミノ酸の状態であれば消化の必要が無いため、消化管に問題がある場合でも吸収することが可能です。

 

ただし、これら消化酵素のサプリメントを選ぶ場合はサプリメントの質に気をつけて下さい。消化酵素は強力すぎると自身の粘膜を消化してダメージを与えてしまう場合があります。逆に弱すぎる物だと、消化酵素自体が胃酸で分解されてしまって効果が無くなってしまいます。

 

特に市販されている安いサプリメントや海外サプリメントは、品質が劣化したり効力が無くなっていたりするものが多くあります。このため、無闇に独自で栄養療法を行う事はむしろ危険です。しっかりとアプローチしたい場合は分子栄養学実践専用のサプリメントを使いましょう。

 

それから、実際に消化吸収能に問題があるかどうかは、検査を受けて頂くことがオススメです。

 

血液検査でわかる胃の状態 (単位省略)
PG I:胃酸分泌の程度 40~60
PG II:胃粘膜の炎症程度  10以下
PGI/II:胃粘膜萎縮の程度 3.1以上
Hp抗体:ピロリ菌感染の有無 10未満

 

消化管の中でも最も中心的な役割を担っているのが「胃」です。胃の働きが悪くなるとタンパク質の消化吸収能が低下し、低血糖症を発症しやすくなります。

 

この胃の状態は、血液検査によっておおよそ知ることが出来ます。検査項目としては、「PG1」や「PG2」「Hp抗体」などです。PG1は胃酸分泌の程度を表しており、40以下の場合は消化能力が低下していると考えられます。

 

また、お子さんの場合でも母子感染などによってピロリ菌に感染している場合もあります。この場合も胃炎の状態によっては胃腸機能が低下し、低血糖症に陥りやすくなる原因です。

高校生や大学生など年齢や状態によっては、ピロリ菌の除菌からスタートする必要もありますので、お子さんの消化吸収能に何かしら問題がありそうな場合は、まず第一に胃の検査を受けてみて下さい。胃の検査は、当方が推奨するオーソモレキュラー療法の血液検査で受ける事が出来ます。

 

 

 

 

 

 

 

この記事は、下記記事から一部を抜粋・改編したものです。記事全文は下記記事をご覧下さい。元記事はこちら↓