ピロリ菌が見つかってもいきなり除菌はNG! 除菌成功率を高める分子栄養学的アプローチとは。

次に、ピロリ菌が見つかった場合のアプローチ方法についてです。
多くのクリニックでは、ピロリ菌が見つかった場合は抗生物質を服用して除菌することになるかと思います。しかし、ピロリ菌の感染が見つかったからといって、すぐに除菌を開始してはいけません。

 

実は、ピロリ菌の除菌成功率は「栄養状態」によって決まります。この栄養状態が悪い状態でいきなりピロリ菌の除菌をしてしまうと、抗生剤を服用した事による強い副作用が発生したり、ピロリ菌の除菌失敗率が上昇したりしてしまうのです。

 

特に、血中のビタミンD濃度はピロリ菌除菌の成否に大きく関係しています。ビタミンDといえばカルシウムの吸収促進や骨の成長促進効果が有名ですが、実はそれだけではありません。ビタミンDには免疫を調整する働きや、胃や腸の粘膜を強くする働きがあります。他にも、糖尿病や自閉症、妊娠しやすい身体作りや花粉症などアレルギーにも効果があると言われています。

 

このビタミンDの血中濃度が20ng/mL以上あるグループと、20ng/mL以下のグループのピロリ菌除菌成功・失敗率を調べた結果があります。その結果、20ng/mL以上のグループはピロリ菌の除菌成功率が86%と高く、逆に20ng/mL以下のグループではピロリ菌の失敗率が75%と高い傾向にありました。

 

つまり、ビタミンDの血中濃度が高い人はピロリ菌の除菌が成功しやすく、逆にビタミンDの血中濃度が低い人ほどピロリ菌の除菌に失敗してしまう確率が高くなってしまうのです。この理由としては、ビタミンDには免疫を調整する働きや、胃や腸の粘膜を強くする働きが関係していると言われています。特に、ビタミンDはピロリ菌の抗体産生を促進する作用があることから、ビタミンDはピロリ菌抗体の産生量を介してピロリ菌に対する抵抗力を強めてくれるという研究結果があります。また、ピロリ菌は胃の粘膜に住みつくので、胃の粘膜が丈夫であればその分ピロリ菌の増殖を防いだり感染を防いだりする力が強まります。

 

このような結果から、栄養が不足している状態でいきなりピロリ菌の除菌を開始してしまうと、ピロリ菌の除菌に失敗してしまう確率が高くなってしまいます。加えて、栄養不足の状態では抗生物質服用時の副作用も強く出る傾向にあり、強い副作用が出た場合は除菌治療を全面的に中止する場合もあります。

 

一般的に抗生物質服用時の副作用発生頻度としては14%〜45%程度と言われており、主な症状としては下痢や軟便、味覚障害や口内炎、皮疹(ひしん)などです。この副作用が起きる原因としては、抗生剤を服用すると腸内細菌が死んで腸内細菌叢が乱れてしまうことが主な原因です。腸内には善玉菌と悪玉菌が住んでおり、この菌のバランスで健康が保たれています。抗生剤を服用すると善玉菌も悪玉菌も含めてすべてを殺菌してしまうことになるため、腸内環境が乱れて下痢や軟便、腹痛や便秘といったお腹の調子が悪くなる副作用が引き起こされてしまうのです。

 

また、ビタミンB群不足や貧血など栄養状態が悪いときは、抗生剤服用時に口内炎や舌炎などの副作用が強く出る傾向があります。軽い症状なら除菌治療が続行できますが、強い副作用が出た場合は除菌を全面的に中止する場合もあります。

 

この時、ピロリ菌の除菌に失敗したからといって、何度でも除菌治療が行えるわけではありません。なぜなら、ピロリ菌に対して一度使用した抗生剤は、ピロリ菌に耐性が付いてしまって二度と使えなくなってしまうからです。このため、ピロリ菌の除菌で使用できる抗生剤の種類には限りがあります。加えて保険適用でピロリ菌の除菌が出来る回数にも制限があり、3回失敗するとそれ以降は保険が適用できなくなります。

 

このことから、ピロリ菌を除菌する際はまずしっかりと栄養補給を行って、ピロリ菌の成功率を上げておくことが重要です。ピロリ菌の除菌に失敗して除菌治療を何度も受ければ、その分だけ身体に大きなダメージがかかります。いくら保険適用といえど、除菌治療にはお金もかかりますし、クリニックに通う手間もかかります。1回で除菌が成功するなら、それが一番良いですよね。

 

ですので、ピロリ菌の除菌前と除菌後はしっかりと栄養補給を行って、ピロリ菌の成功率を上げておきましょう。除菌開始前はビタミンDを中心に粘膜を強化しておくことが重要です。

また、除菌後は乱れた腸内細菌叢を回復させるためにも、プレ・プロバイオティクスを中心とした腸ケアを行って下さい。この除菌後のアプローチを疎かにすると、腸内環境が悪化してうつ病に繋がったり、肥満や糖尿病の発症、低血糖症が治らなかったりなどの健康状態が悪化する原因にも繋がります。下記のアプローチを参考に、ピロリ菌の除菌開始前と除菌後のケアを行うようにしましょう。

 

ピロリ菌除菌の前後に行う栄養アプローチ

  • 消化酵素

  • グルタミン

  • ビタミンD

  • ビタミンA

  • ビタミンB群

  • ビタミンC

  • 亜鉛

  • プロバイオティクス

  • プレバイオティクス

ピロリ菌の除菌前に行う栄養アプローチは、ピロリ菌除菌の1ヶ月~2週間前を目安に、ご自身の状態を確認しながら行って下さい。先ほども解説しましたが、血中のビタミンDの濃度が低い場合はピロリ菌の除菌に失敗してしまう確率が高くなります。この血中のビタミンD濃度は血液検査を受けることで分かりますので、現在ご自身がどれくらいビタミンDの血中濃度があるのかは事前に調べておきましょう。

 

ちなみに、グルタミンと亜鉛は腸粘膜のケアに必要な栄養素で、この2つに加えてビタミンAとビタミンDも粘膜のケアに必要な栄養素です。この2つは協力して働くのでセットで摂る方が効果的です。

 

その他、ビタミンB群やビタミンCも除菌時の副作用を減らしたり免疫力を高めるのに有効ですので、これらはなるべくセットで摂るようにして下さい。加えて、胃の消化能力を助けるためにも消化酵素による消化サポートも同時に行うようにしましょう。

 

これらの栄養アプローチは、どのくらいの量を補給すれば良いのかについても個人差があります。最適な補給量については、オーソモレキュラー療法の血液検査を受けてみて下さい。

それから、ピロリ菌の除菌では抗生剤を使うため、除菌前後でプレ・プロバイオティクスを用いた腸ケアが重要になります。「除菌前に腸ケアを行っても結局抗生剤で腸内細菌がすべて死んでしまうのでは?」と思うかも知れませんが、これをやっておくのとやらないのとでは、副作用の発生率や治療後の回復速度に大きな差が出てきます。

 

この除菌前後のアプローチを疎かにすると、腸内環境が悪化してうつ病に繋がったり、肥満や糖尿病の発症、低血糖症が治らなかったりなどの健康状態が悪化する原因にも繋がります。せっかくピロリ菌の除菌が完了しても、その他の病気のリスクが上がったり体調不良になっては意味がありませんので、腸ケアは必ず行うようにして下さい。

 

そして、抗生剤を一定期間服用した後は、実際に除菌が出来たかどうかを胃カメラや呼気検査でチェックする事が必要です。何度も胃カメラを受けるのは抵抗がある方が多いと思いますが、この確認だけはしっかり行って下さい。場合によっては除菌が失敗していて二度目の除菌治療が必要になる場合があります。この除菌がしっかり出来ているかの確認も、胃カメラを行う技師の腕によります。技師の腕によっては見逃してしまうこともありますので、しっかりと知識と経験のあるクリニックを選ぶようにしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

この記事は、下記記事から一部を抜粋・改編したものです。記事全文は下記記事をご覧下さい。元記事はこちら↓