貧血は低血糖症の主な原因。貧血がある方は第一に貧血改善から始めましょう

続いて、低血糖症の対策において真っ先に行っていきたいのが「鉄欠乏性貧血」の改善です。

 

始めにも解説しましたが、鉄欠乏性貧血等の貧血と低血糖症には深い関連があります。血液には酸素を運搬して細胞に届ける働きを担っており、細胞はこの酸素と糖質などの栄養素を利用してエネルギーを産生しています。

 

もし貧血の状態だと、酸欠になって身体が作り出せるエネルギー産生量が低下してしまいます。すると、糖の利用や代謝機能に乱れが生じてしまうことから、貧血と低血糖症には深い関係があります。

 

ですので、貧血がある方は第一に貧血改善から始めましょう。貧血と聞くと「私は病院で貧血と診断されていないから大丈夫」と思われる方が多いかと思いますが、そのような方でも注意が必要です。

 

中には、病院では貧血と診断されていないけど貧血になっている「かくれ貧血」の方もいます。かくれ貧血とは、別名「潜在性鉄欠乏性貧血」とも言い、貧血の診断でよく使われる「ヘモグロビン値」が正常範囲に収まっていても、貯蔵鉄である「血清フェリチン値」が低下してしまっている状態の事です。

 

私達の身体には、出血した際にすぐに貧血とならないよう、体内に「フェリチン」という貯蔵鉄を溜めておく機能が備わっています。フェリチンは鉄分を安全に貯蔵できるタンパク質のことで、体内で鉄が不足したときには真っ先にこのフェリチンから鉄分を取りだして使われる仕組みになっています。

 

しかし、もしこのフェリチンの貯蔵量が足りなくなっていた場合、いざ出血したときにヘモグロビンの材料として使える鉄分が足りません。すると、普段は貧血と診断されていなくても、月経などで出血した場合にすぐに貧血に陥ってしまうのです。

 

実は、現在の病院では貧血の診断を「ヘモグロビン」という値が低いかどうかだけで行っています。ヘモグロビン値の低下は確かに貧血を診断する指標となるのですが、この値が一定以下にまで低下していない限り、仮にギリギリ下限の値だったとしても貧血と診断されません。

 

また、通常の保険診療では血清フェリチン値の検査は殆ど行われていません。このことから、貧血と診断されていなくても貧血の状態になっている「潜在性鉄欠乏貧血」の方が非常に多くいるのです。

 

この隠れ貧血の状態では、ヘモグロビン値が下がっていなくても貧血と同じような不調が引き起こされていきます。また、貧血が徐々に進行していくことから、貧血だと気がつかないまま徐々に頭痛やめまい、倦怠感や食欲不振などの症状が悪化している場合もあります。

他にも「太りやすくなった」「爪がもろくてすぐ割れる」「喉に違和感があり、物を飲み込みにくい」など、様々な症状が引き起こされることがあります。

 

このような不調の症状が多岐にわたることから、元々は貧血が原因にも関わらず「うつ病」や「パニック障害」などの精神疾患と間違えられてしまう場合も少なくありません。しかも、貧血と低血糖症の症状は似ている部分もあり、この2つの症状が重なる事で更に症状が酷くなることもあります。

 

例えば、低血糖症の主な症状を下の表にまとめてみました。鉄欠乏性貧血の症状と見比べてみると、かなり似ていることが分かりますよね。

 

低血糖症の主な症状

  • 全身の倦怠感、疲れやすい

  • 集中力が無い

  • 眠気が強く、朝起きられない

  • 寒がり、低体温

  • 動悸がする

  • めまいがする

  • 冷や汗をかく

  • 不眠

  • イライラする

  • 頭痛

  • 神経過敏

  • 不安、恐怖感が強くなる

  • 太りやすくなった

また、貧血と低血糖症はどちらも症状が似ているので、貧血の裏に低血糖症が隠れていることにも気がつかない場合も多いです。もしくは、どちらも徐々に進行していくことから不調の状態に慣れてしまい、貧血や低血糖を抱えていることにすら気がつかない人もいるほどです。このため、貧血も低血糖症も精神疾患など他の病気と間違えられやすい病気でもあります。

 

このような貧血と診断されていないけど貧血に陥ってしまっている状態の方はかなり多く、一般的な病院の血液検査ではまず見つけてくれません。このような貧血と診断されていないけど実際には貧血が隠れている「隠れ貧血」や「潜在性鉄欠乏性貧血」の方も、低血糖症になりやすくなるので注意が必要です。

貧血を改善させるための具体的な分子栄養学的アプローチ

では、そのような貧血に対してどのような対策を行えば良いのでしょうか?

貧血は低血糖症と関係がありますので、低血糖症を改善させるためにはまず貧血改善が優先です。ただ、貧血改善と言っても、単に鉄を補給すれば改善出来るわけではありません。間違った鉄分補給や方法だと、逆に身体にダメージを与えてしまう原因になります。

特に、貧血改善を行う上で最も重視すべきは「鉄分の種類」です。鉄分には、食品から摂れる鉄分や病院で処方される鉄剤など、様々な種類の鉄分があります。この鉄分には安全な鉄分もあれば身体にダメージを与えてしまう鉄分もあります。鉄分の選び方を間違えてしまうと、貧血改善どころか逆効果にもなりかねません。その中でも特に危険な鉄分が「病院で処方される鉄剤」です。

 

貧血と診断された場合や治療と言えば、真っ先に「鉄剤」が思い浮かびますよね。「鉄欠乏性貧血」と言われているくらいですから、「鉄を補給すれば貧血が改善出来る」と思われています。

 

しかし、病院で処方される鉄剤を飲んでも、貧血を改善することは出来ません。むしろ、鉄剤を摂取する事により大量の活性酸素が発生し、胃や腸の粘膜にキズを付けてしまう可能性があるのです。

 

この原因は、病院で処方される鉄剤の多くが「無機の鉄そのもの」であるか、吸収効率が非常に悪い事が原因です。無機の鉄とは、タンパク質などと結合していない「鉄そのもの」の状態のものです。鉄は、酸素と結びつきやすく、錆びやすいことはご存じですよね。このサビが体内で活性酸素を発生し、細胞を傷つけてしまう原因になる事から、体内では鉄を安全に運んだり利用したり出来るようにタンパク質に包まれて大切に扱われています。

 

しかし、鉄剤を大量に服用すると、吸収されるときに活性酸素を出して粘膜を攻撃してしまいます。活性酸素とは、酸素の一部が通常よりも活性化された状態になることで、この活性酸素の事を「フリーラジカル」とも呼びます。

 

この活性酸素はその活性の高さから細胞を傷つけてしまい、むしろ胃粘膜や腸粘膜を傷つけ、消化吸収能の低下や、SIBO、リーキーガット症候群、過敏性腸症候群(IBS)など炎症性の腸疾患や肝炎、非アルコール性脂肪肝などに進行してしまう可能性があります。この事から、病院で処方される鉄剤で貧血対策を行う事はオススメしません。

 

病院で処方される鉄剤の例としては、次のような物があります。

 

病院で処方される非ヘム鉄の例

  • フェロム (フマル酸第一鉄) 有機鉄

  • フェロミア (クエン酸第一鉄) 有機鉄

  • リオナ (クエン酸第二鉄) 有機鉄

  • インクレミンシロップ (溶性ピロリン酸第二鉄) 有機鉄(食品添加物としても使われる)

  • フェロ・グラデュメット(硫酸第一鉄)無機鉄 発色剤の一種。食品添加物としても使われる。

特に処方が多い鉄剤としては、「フェロム」や「フェロミア」などがあります。これらは1回の服用量が100mgとかなり多く、これだけ飲んだとしてもたった5mg程度しか吸収することが出来ません。かなり吸収率が低い割には身体へのダメージが大きく、人によっては胃がムカムカしたり便秘になったりと副作用が出る場合があります。

 

対して、このような胃腸障害や活性酸素を引き起こしにくく、吸収率が高い鉄が「ヘム鉄」です。鉄には大きく分けて、「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」に分けられます。ヘム鉄とは肉や魚などに含まれている動物性の有機鉄のことで、ポルフィリン環というタンパク質の一種と結合しているのが特徴です。それ以外の鉄は、クエン酸などと結合させた「有機鉄」と、硫酸第一鉄のような有機酸と結合していない「無機鉄」があります。

 

ヘム鉄以外の有機鉄や無機鉄は「非ヘム鉄」と呼ばれ、主に野菜や穀物に含まれています。これら鉄剤や非ヘム鉄は吸収効率が非常に悪く、ヘム鉄の吸収効率が10%〜30%程度あるのに対し非ヘム鉄は僅か5%以下しかありません

 

このことから、鉄分を補給する際は「ヘム鉄」から補給するのがオススメです。ヘム鉄とは、肉や魚に多く含まれる鉄分のことで、ヘム鉄はポルフィリン環と呼ばれるタンパク質のカプセルのような物に包まれており、上述した非ヘム鉄に比べて活性酸素を殆ど発生させません。

 

また、非ヘム鉄はお茶やコーヒーなどに含まれるタンニンと結合し、吸収率が落ちてしまいますが、ヘム鉄であればこれらの影響をあまり受けずに吸収することが出来ます。逆に非ヘム鉄を大量に摂取してしまうと、吸収出来なかった鉄が大腸へ大量に流れることから、腸内環境の悪化を招く原因となりかねません。

 

なぜここまでヘム鉄が優れているかというと、ヘム鉄の構造もさることながらその吸収経路にあります。

ヘム鉄には「ヘムトランスポーター」と呼ばれる専用の吸収経路が腸に存在しており、この専用の吸収経路から効率的に吸収されることで、非ヘム鉄よりも効率的な吸収が可能になっているのです。

 

ちなみに、非ヘム鉄の吸収経路はDMT1という経路を使って行われています。この吸収経路は亜鉛や銅など他のミネラルを吸収経路と共通になっているため、鉄剤を多く飲めば飲むほど亜鉛など他のミネラルの吸収を阻害してしまい、亜鉛が欠乏することによって「亜鉛欠乏性貧血」という貧血を引き起こしてしまう原因になります。

 

このように非ヘム鉄の鉄剤を大量に摂取することは体内に悪影響をもたらす可能性が高いことから、鉄剤を用いての貧血改善はオススメしません。分子栄養学的にアプローチを行う場合は、必ずヘム鉄を使用するようにしましょう。

 

具体的な分子栄養学的アプローチとしては、このヘム鉄をベースに、造血に必要なタンパク質やミネラルなども同時に補給することです。

 

鉄欠乏性貧血に対する分子栄養学的アプローチ

  • タンパク質

  • ビタミンB群

  • ヘム鉄

  • 亜鉛

  • マンガン

  • セレン

実は、貧血を改善する上で鉄分の補給も大切ですが、それと同じくらい重要なのは「タンパク質」です。先ほども解説したように、無機の鉄そのものの状態が体内で存在すると、活性酸素を発生させてしまってむしろ身体や細胞にダメージを与えてしまいかねません。

 

身体はこの鉄から発生する活性酸素から身を守るために、鉄を運搬、利用する際は必ずタンパク質で出来たカプセルに鉄分子を入れて利用しています。これが、ポルフィリン環やフェリチンなどですね。

 

つまり、鉄を安全に運搬、利用するためにはタンパク質が絶対に欠かせません。いくら鉄分を多く補給しても、安全に貯蔵、運搬、利用出来るためのタンパク質がない状態では、貧血を改善させることが出来ないのです。

 

このことから、貧血改善をするためには鉄分摂取に加えて「タンパク質」もしっかり摂るようにしましょう。最低でも一食当たり100g〜200g程度の肉や魚は取り入れたいところです。足りない分は、プロテインなどを活用するのも良いですね。加えて、タンパク質を利用するために必要な補酵素である「ビタミンB群」も積極的に補給するようにして下さい。

 

そして、次に「ヘム鉄」です。ヘム鉄の摂取量目安は、血清フェリチン値を目安に判断します。血清フェリチン値の検査はオーソモレキュラー療法の血液検査を受けることで調べることが出来ますので、気になる方は是非受受けてみて下さい。

 

血清フェリチン値の基準値は男女で違いがありますが、おおよそ40ng/mL未満では貧血と判断することが出来ます。この場合は、ヘム鉄として一日45mgを目安に摂取してみて下さい。

 

また、血清フェリチン値が40〜100ng/mLの間では、貧血では無いものの貯蔵鉄がやや不足している状態です。この場合も、十分な貯蔵鉄が貯えられるよう、一日あたりヘム鉄として15mg程度補給してみて下さい。継続していくにつれてフェリチン値は徐々に上がっていき、血清フェリチン値が100~125ng/mL程度になるのが理想と言われています。

 

ただし、有経女性の場合は毎月月経があるのでフェリチン値はなかなか上昇しない傾向にあります。有経女性の場合は血清フェリチン値が60ng/mL前後を保てていれば大丈夫ですので、それ以上フェリチンが下がらないようキープすることに努めましょう。

 

それから、フェリチン値は貧血の判断以外にも「炎症」を見るためのマーカーでもあります。フェリチン値は体内で炎症が発生していても上昇することがあり、ガンなどでは著しく上昇する場合もあります。

 

特に、フェリチン値が200ng/mLを超えていたり、フェリチン値が高くてヘモグロビン値が低い場合は何らかの炎症が関与している可能性が高いです。この場合は、炎症の元となっている原因を調べ、適切に対処するようにして下さい。

 

さらにこのヘム鉄の補給に加えて、亜鉛の補給も重要です。亜鉛は、上述したようにポルフィリン間の材料となったり、赤血球の膜を強くしたり、インスリンの働きに関与していたりと、貧血や低血糖症にも大きく関係している栄養素です。この亜鉛を同時に摂取する事で、更に貧血を改善しやすくなるという結果が出ています。

 

例えば、貧血の女性に「鉄だけ」を摂取してもらったグループと、「亜鉛だけ」を摂取してもらったグループ、そして「鉄と亜鉛」を摂取してもらったグループの変化を見た実験があります。この結果では、鉄のみ、亜鉛のみのグループと比べ、「鉄と亜鉛を同時」に摂ったグループの方が赤血球数の改善に有意な差が見られました。

 

このことから鉄分だけや亜鉛だけを摂取するのでは無く、鉄分と亜鉛は同時に摂取する方が効果的です。この時補給する鉄分は、もちろん「ヘム鉄」を選ぶようにしましょう。ヘム鉄はドラッグストアーなどで売られている物もありますが、何でも良いわけではありません。

安いヘム鉄のサプリメントでは、そもそも有効成分の含有量が少ない場合があります。このような有効成分が少ないサプリメントでは、十分な鉄分を補給することが出来ないため、分子栄養学的アプローチは行えません。

 

これに対し、分子栄養学で用いる専用のサプリメントは規格化された高濃度の原材料を使用し、有効成分の含有量が必ず一定以上になるよう作られています。また、栄養素の体内での利用効率も考慮し、サプリメントの専門家が消化吸収や生体内利用効率、安全性など様々な考慮を行って作られています。そのため、高容量の摂取でも身体に負担が無く安心です。

 

このことから、選ぶヘム鉄は何でも良いわけではありません。分子栄養学的なアプローチを行う場合は、必ず分子栄養学実践専用に設計・開発されたサプリメントを選びましょう。

 

市販の安いヘム鉄サプリにはご注意!

 

ヘム鉄のサプリと言えば、ドラッグストアーなどで安く販売されている物を見かけることがありますよね。ヘム鉄が補給出来るなら、安くて量が摂れるに越したことはありません。しかし、同じヘム鉄といえどその質にはピンからキリまであります。特に、「ヘム鉄パウダーの量」と「ヘム鉄含有量」は全く違うものですので注意して下さい。

 

ヘム鉄は主に豚の血液を精製して作られており、ヘム鉄パウダーと呼ばれるパウダー状の中にヘム鉄が1%もしくは2%含有している物が一般的です。例えば「一粒でヘム鉄50mg」と書かれていても、これはヘム鉄パウダーが50mg含まれているだけであり、実際にはその中の1%〜2%である0.5mg〜1mgしかヘム鉄が含まれていない計算になります。このように、多く含まれているように見せかけて、実際にはヘム鉄が殆ど含まれていない物があるのです。

 

また、繰り返しますが貧血改善にはヘム鉄以外にも微量ミネラルと呼ばれるセレンやマンガン、銅や亜鉛など他のミネラルの補給も重要です。ヘム鉄として市販されている商品の多くはヘム鉄のみなど鉄分の補給しか出来ません。加えて、ヘム鉄の製造管理には高度な技術が必要で、生体内利用効率まで考慮すると安く作る事は不可能です。物によっては、製造管理体制が悪く、品質が劣化している物もあります。

 

この事から、同じように見えるヘム鉄サプリメントであっても、体内での利用効率が悪く、貧血が改善出来ない場合があります。これを避けるためにも、ヘム鉄を摂取する際は生体内のミネラルバランスや生体内利用効率などを考慮した質が高いものを選ぶようにして下さい。分子整合栄養医学で使われているヘム鉄製品は、「鉄の取り込み」「利用」「貯蔵」「排泄」など貧血改善における鉄分本来の働きが安全に出来るよう考慮されています。ヘム鉄を選ぶ際は、値段や含有量にとらわれず、体内で安全に利用出来る安心、安全な製品を選びましょう。

 

分子栄養学実践専用のサプリメントは、当方の推奨するオーソモレキュラー療法にて用いられています。興味のある方は、是非オーソモレキュラー療法を受けてみて下さい。

 

 

 

 

 

 


この記事は、下記記事から一部を抜粋・改編したものです。記事全文は下記記事をご覧下さい。元記事はこちら↓