オーソモレキュラー療法が怪しいと言われる理由④

サプリメント代がやたら高いのはなぜ? サプリメントを売りつけられるって本当?

次に、オーソモレキュラー療法ではやたら高いサプリメントを売りつけられるという噂についてです。

 

インターネット上の一部口コミでは、オーソモレキュラー療法を受けたら高額なサプリメントを購入するよう勧められたとの書き込みがされている事があります。

 

例としては、オーソモレキュラー療法の血液検査の結果が出たので解説をクリニックまで聞きに行ったところ、帰りの会計でやたら高いサプリメントをいくつも勧められたというパターンや、「もっと安い別のサプリメントを知っているのでそちらを購入する」と断っても、どうしてもこちらの高い方のサプリを使用しないとダメだと言われて仕方なく購入したなどがあります。

 

また、人によってはオススメされたサプリメントの合計額が10万円以上と高額になることもあります。

 

このようなことから、「オーソモレキュラー療法は高額なサプリメントを売る商法なのでは?」と思う方も少なくありません。果たして、オーソモレキュラー療法を受けると高額なサプリメントを売りつけられるというのは本当なのでしょうか?

 

結論を先に言いますが、オーソモレキュラー療法で使用するサプリメントは一般的なサプリメントよりも高額なのは確かです。ただ、それを無理に押し売りするといったことはありません。

 

オーソモレキュラー療法の殆どは、近所のクリニックが提供しています。そこではオーソモレキュラー療法専用のサプリメントを取り扱っていることが多く、この専用のサプリメントでオーソモレキュラー療法を行っていくのが本来の流れです。

 

そのため、オーソモレキュラー療法を受けた方に対して、必要なサプリメントの購入を勧められるのは当然と言えば当然です。これは、例えるなら診察を受けた後にお薬を処方されるのと同じようなことです。もしここでサプリメントを断ったとしても、相手はクリニック等ですので、押し売りしてくることはまずありません。

 

また、繰り返しになりますが、そもそもオーソモレキュラー療法を受ける方は、現在何らかの不調や病気を抱えている方が殆どです。病院の治療を受けても体調が良くならなかった方、原因不明の体調不良が続いている方、ガンと診断されて治療法を模索していた方等、状態に差はありますが、ほぼ何らかの不調や悩みを抱えている方々になります。

 

そうなると、必要なサプリメントの量が増えてしまうのは当然のことです。オーソモレキュラー療法を行う上では、「ドーズレスポンス」や「個体差」「至適量」を考慮して行いますので、一般的な栄養学と比べて遙かに多くのサプリメントを摂取します。この時、摂取量が少なければ、殆ど意味がありません。

 

ということは、サプリメントの合計額が高額だった方というのは、それほど状態が悪い方や病態を抱えている方ということになります。状態や病態が悪い方ほど検査代や治療代が高額になるのは、オーソモレキュラー療法に限った話しではありません。

 

つまり、オーソモレキュラー療法のサプリメント代が高額になってしまうのは、その方に必要だからそのサプリメントを推奨しているだけであって、決して押し売りすることが目的ではないのです。

 

それから、そもそもの話しですがサプリメントの購入を勧められたくないのであれば、始めからオーソモレキュラー療法を受けなければ良いだけのことです。オーソモレキュラー療法はサプリメントを使っていく療法ですから、オーソモレキュラー療法自体を受けなければ、サプリメントを勧められることもありません。

 

それに、オーソモレキュラー療法を受ける方は、事前にオーソモレキュラー療法がどういった療法なのかを知っていて受けているはずです。現在ではクリニックのホームページ等で料金やシステム、サプリメントについて解説されていることから、知らなかったとは考えられません。また、無理矢理オーソモレキュラー療法を受けさせられるなんてことも絶対にありません。

 

このような前提において、オーソモレキュラー療法を受けた方が、結果の解説やサプリメントを勧められた段階で「サプリメントが高すぎる」「これはボッタクリ商法では?」「サプリメントを売りつけられた」と感じるのは、逆におかしな話しではないでしょうか。

 

ただ、中には検査だけを受けて、その結果を基に海外サプリメントや市販サプリで代用しようとしている方もいるかと思います。そのような方については、オーソモレキュラー療法専用のサプリメントを使用するよう促されることがあります。人によっては、これがサプリメントを売りつけられたと感じてしまったのかもしれません。

 

それから、もしかすると中にはサプリメントを売ることが目的の人もいる可能性があります。そのような場合は、もっとまともにオーソモレキュラー療法を提供してくれる所に変えるのがオススメです。

 

では、なぜオーソモレキュラー療法ではこのような専用のサプリメントが用いられているのでしょうか? これは海外サプリメントや市販されているサプリメントと一体何が違うのでしょうか?

 

また、なぜオーソモレキュラー療法専用のサプリメントは、海外サプリメントや市販されているサプリメントと比べて値段が高いのでしょうか?

 

例えばドラッグストアで売られているサプリメントが1,000円前後だとすると、オーソモレキュラー療法専用サプリメントではその3倍〜5倍、ものによっては10倍近くするものもあります。

 

また、最近ではインターネットを使って海外サプリメントを手軽に個人輸入することが出来るようになりました。海外サプリメントでは、日本で販売されているサプリメントと比べて、かなりの高濃度です。この海外サプリメントは高濃度でありながら値段も手ごろで、1つあたり1,000円〜3,000円程度で購入することが出来ます。

 

このような安くて高濃度のサプリメントを駆使すれば、わざわざ「オーソモレキュラー療法専用のサプリメント」なんて必要ないのでは?と思いますよね。

 

ですが、このようなドラッグストアで販売されているサプリメントや、海外サプリメントでは、残念ながら分子栄養学やオーソモレキュラー療法の実践は出来ません。何故かというと、これらサプリメントは単に栄養素が配合されているだけであって、生体内での利用効率や消化吸収能などは考慮されていないからです。

 

一般的なサプリメントとオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントの違い

 

 

 

例えば、サプリメントに配合されている栄養素の中には大きく分けて、「合成型」と「天然由来」があります。合成型とは、栄養素の分子構造を変化させて作られた人工的なもの、天然由来は野菜や果物、魚介や酵母など自然界に存在するものから抽出したものが天然由来です。

 

栄養素というものは、体内で酵素と結びついて初めて利用出来る状態になります。そのためには、限りなく天然に近い形である事が必要です。人工的に合成された栄養素や、もともと天然物を使っていても保存性を良くするために誘導体をつけたり加工したりしたものでは、体内で酵素と結びつけずに、異物として排泄されたり効果が弱まったりしてしまう可能性が高くなってしまいます。

 

この主な物として上げられるのが、ビタミンEのサプリメントです。実は、一言でビタミンEといっても、様々な種類や化学構造のものがあります。特に大きな違いとしては、「天然由来」か「天然型」か「合成型」かの違いです。

 

食品由来の天然成分から抽出した物は「d-α-トコフェロール」と言って、もっとも抗酸化力が期待出来るビタミンEです。オーソモレキュラー療法専用サプリメントでは、この天然由来のビタミンEが配合されています。

 

対して、海外サプリメントや市販されているサプリメント、薬として処方されるビタミンEでは「酢酸 d-α-トコフェロール」や「酢酸dl-α-トコフェロール」が配合されている物が殆どで、いわゆる「天然型」や「合成型」と呼ばれています。こちらはビタミンEを酸化・劣化から守るために「エステル化」という加工がされています。

 

エステル化とは、いわゆる「コーティング」のようなもので、抗酸化力を発揮する水酸基の部分をアルコールや酢酸などの物質と結合させて安定化する加工のことです。この水酸基をエステル化させることによって、空気や光などからビタミンEが酸化されないよう防いでいます。

 

しかし、このエステル化を行ってしまうと、デメリットも大きくなってしまいます。それが「抗酸化力の低下」です。エステル化を行うと、水酸基から「H」の水素が外れにくくなってしまうため、十分な抗酸化力は望めません。このことから、「天然型」や「合成型」ビタミンEが体内に入っても、本来の栄養素としての働きが十分に行えなくなってしまうのです。

また、海外サプリメントや市販されているビタミンEサプリメントの殆どには、単品のd-α-トコフェロールしか含まれていないことが挙げられます。

 

ビタミンEには大きく分けて「トコフェロール」と「トコトリエノール」があり、この二つにはそれぞれα(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)、δ(デルタ)の4種類、計8種類が存在しています。少し分かりにくいですが、α-トコフェロールやα-トコトリエノール、β-トコフェロールやβトコトリエノールなど、それぞれのトコフェロールやトコトリエノールに種類があり、合計で8種類あるということですね。

 

このトコフェロールとトコトリエノールの大きな違いは、分子構造の違いと、その作用の違いです。トコトリエノールは炭素同士の二重結合があり、この二重結合がある事で細胞膜への侵入が容易に出来ます。そのため、トコトリエノールはトコフェロールと比べて速効性があり、生理活性がトコフェロールよりも高いという特徴があります。

 

対してトコフェロールは、炭素同士の二重結合が無いことから細胞膜への進入速度が遅く、代わりに持続性があるのが特徴です。

 

また、α(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)、δ(デルタ)の4種類はそれぞれ生理活性や抗酸化力に違いがあります。最も生理活性が強いのはα型で、次にβ型、δ型、γ型と続きます。この生理活性は、主に妊娠をサポートする力やホルモンの活性作用などです。

 

生理活性の一つである抗酸化作用については、γ型が最も強く、次にδ型、β型、α型と続きます。つまり、α型のビタミンEが最も生理活性が高く、抗酸化作用についてはγ型のビタミンEが最も高いということになります。

 

では、海外サプリメントや市販されているサプリメントのビタミンEはどうかというと、これら様々な種類のビタミンEのうち、α-トコフェロールのみしか含まれていません。

 

実は、ビタミンEはこれら8種類が補い合って作用していることから、8種類すべてをバランス良く摂取する事が大切です。

 

例えば、持続性のある「トコフェロール」と速効性のある「トコトリエノール」両方を同時に摂取する事で、体内のビタミンE濃度を高濃度で維持することが可能になります。

 

また、α型のビタミンEが最も生理活性が高く、抗酸化作用についてはγ型のビタミンEが最も高いことから、α(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)、δ(デルタ)の4種類、それぞれ8種類すべてのビタミンEをバランス良く摂取する事が、最も生理活性と抗酸化作用が期待出来る方法です。

 

つまり、海外サプリメントや市販されているサプリメントのビタミンEでは、α-トコフェロールのみしか含まれていないことから、ビタミンEが本来持っている生理活性と抗酸化作用は殆ど期待出来ないのです。

 

対して、当方が推奨するオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントでは天然由来の植物成分から抽出していることから、α(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)、δ(デルタ)を含むすべてのトコフェロール、トコトリエノール8種類が含まれています。

 

食品に含まれているビタミンEにはもともと複数のビタミンEが含まれていて、α-トコフェロール単品のみが含まれているなんてことはありません。そのため、食品由来の成分から抽出した天然由来のビタミンEサプリメントでは、8種類すべてのビタミンEが含まれています。

 

また、当方が推奨する分子栄養学実践専用サプリメントのビタミンEでは、脂溶性ビタミンが上手く吸収できない方のために「ミセル加工」が施されているものもあります。ミセル加工とは、水に混ざりにくい油を、水に混ざりやすくした加工のことです。

 

例えば、脂質や脂溶性ビタミンは消化液や血液などの体液と混ざりにくく、そのままでは吸収・運搬することが出来ません。これを解決するために、私達の体内では「胆のう」から分泌される胆汁によって、脂質と水分を混ざりやすくする「乳化」という仕組みが備わっています。この乳化の仕組みは、女性の方であればメイク落としを想像していただければイメージしやすいかと思います。

 

そして、この乳化能力は、加齢やストレスなど様々な要因によって低下してしまう場合があります。このような場合、いくら脂溶性のビタミンを摂っても、体内でうまく乳化することが出来ないため、十分に吸収することが出来ません。

 

当方が推奨する分子栄養学実践専用サプリメントの場合では、このような加齢やストレスなど様々な要因によって乳化能力が低下している方のために、予め乳化を施した「ミセル加工」(自己乳化型加工)を施した製品が用意されています。

 

また、天然に存在するビタミンEはそのままの状態だと光や酸素の影響で酸化、劣化してしまうため、それらから有効成分を守るために天然由来の成分を使って酸化・劣化しないよう保護しています。このような加工がされていることも、当方が推奨する分子栄養学実践専用サプリメントの特徴です。

 

このような違いがあることから、海外サプリメントやドラッグストアなどで市販されているビタミンEを使ってオーソモレキュラー療法を行う事は出来ません。オーソモレキュラー療法を行う場合は、オーソモレキュラー療法専用に設計・製造されたサプリメントで行う事が重要です。

 

サプリメントは体内できちんと消化吸収されて初めて意味があります。人によっては、胃酸の分泌量が少なかったり、胆汁の分泌量が少なかったりして、上手くタンパク質や脂質が消化吸収出来なくなっている状態の方もいます。

 

このような方でも問題なくサプリメントを摂取していただくためには、消化吸収能を考慮したサプリメントの設計・製造が必要です。通常、市販されているサプリメントの多くは、コストを抑えるために人工的に加工した栄養素を使っていたり、単に栄養素をカプセルに詰めただけなど、その人の状態や体内での栄養素の利用効率は考慮せずに作られていたりしています。

 

そのため、一見すると安くて良さそうに見える市販品や海外サプリメントでも、それがきちんと体内で消化吸収され、きちんと利用されているとは限りません。

 

大抵の方は、サプリメントの錠剤が体内できちんと崩壊しているかなんていちいち気にしませんよね。薬と同じ感覚で、体内できちんと崩壊されて吸収されるのは当たり前だと思われています。

 

しかし、市販されている多くのサプリメントでは、単に原材料を固めただけで体内での崩壊は考慮されていません。信じられないかと思いますが、事実、市販されているサプリメントの中には、胃や腸などで全く溶けないものがあることが多く報告されているのです。

 

例えば、独立行政法人国民生活センターでは、『錠剤・カプセル状の健康食品は、外見上医薬品と誤認されることが多いものの、医薬品並みの品質管理がなされているものではないとされています。また、成分が一定量に調整されていない商品や、消化管の中で確実に溶けて、吸収されるように作られていないと思われる商品があるともいわれています。』と解説しています。

 

そして、独立行政法人国民生活センターが市販されている商品を実際に購入して崩壊性を調べた結果、なんと100銘柄中42銘柄が、医薬品に定められた規定時間内に崩壊しなかったという結果になりました。

 

市販されている商品に関するテスト

 市販されている商品をテスト対象として、崩壊せず体内で吸収されない可能性があるか、表示されている機能性成分(注6)が表示どおり入っているか、微生物や重金属に汚染されていないか等、品質について調べました。

  • 消費者へのアンケート調査の回答結果を参考に、多くの消費者が摂取すると考えられた機能性成分を10カテゴリー(「マルチビタミン」、「GABA」、「黒酢、香醋(こうず)」、「コエンザイムQ10」、「酵素」、「HMB」、「ルテイン」、「乳酸菌類」、「グルコサミン」、「DHA、EPA」)選定し、神奈川県内、東京都内及び徳島県内のドラッグストアの店頭やインターネット通信販売の大手ショッピングモール(Amazon.co.jp、楽天市場、Yahoo!ショッピング)、検索サイトGoogleにて市場調査を行い、各カテゴリーにつき10銘柄ずつ、合計100銘柄を選定しテスト対象としました。100銘柄中には、栄養機能食品が21銘柄、機能性表示食品が11銘柄含まれています。

  • 崩壊性を調べた結果、100銘柄中42銘柄が、医薬品に定められた規定時間内に崩壊しませんでした。

 

利用途中の健康食品に関するテスト

 消費者の利用状況等が錠剤・カプセル状の健康食品の品質に影響を及ぼすかを調べるために、徳島県内で利用途中の健康食品を収集し、同時に、対面でその健康食品の利用実態に関するアンケート調査及び聞き取り調査を実施しました。容器を移し替えておらず、かみ砕いて摂取する錠剤ではない合計105商品をテスト対象としました。

  • ハードカプセルの内容物が硬化しているものがみられました。

  • 医薬品に定められた規定時間内に崩壊しなかったものが半数あり、未開封品よりやや高い割合でした。

  • 収集した利用途中の健康食品の多くでは、未開封品と比べると機能性成分の量がわずかに少ない傾向がみられました。

https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20190801_1.html

 

また、既に利用中の健康食品の崩壊性を調べた結果もあり、テスト対象とした合計105商品のうち、医薬品に定められた規定時間内に崩壊しなかったものが半数あったとの結果にもなっています。

 

このことから、市販されているサプリメントのおよそ半数は、医薬品に定められた規定時間内にきちんと崩壊していないという事実があります。当たり前ですが、どんなに良い原材料を使った高濃度の有効成分が含まれているサプリメントでも、それが胃や腸できちんと崩壊しなければ全く意味がありません。

 

なぜこのような結果になってしまうのかというと、サプリメントは「食品」という位置づけである事から、医薬品ほど厳密な設計や製造、テストが行われていないためです。医薬品は有効性を保証するために体内での崩壊性を考慮した設計や製造、厳しいテストを行いますが、市販されているサプリメントの多くはこのような考慮や設計は殆ど行われていません。

大抵の場合は、コストを抑えるために単に原材料を錠剤の形に固めただけで販売されています。この時に固めすぎてしまうことで、体内できちんと崩壊しないといった結果になってしまうのです。

 

また、サプリメントがきちんと体内で崩壊するよう設計・製造するためには、専門家による設計と製造が必要です。当然、医薬品と同じ基準で設計や製造、テストを行おうとすると非常に多くのコストがかかります。

 

市販されているサプリメントの多くはコスト優先で安く多く販売することを優先とし、利益を追求する目的で販売されています。そのため、体内での崩壊性は考慮されていない商品が多くあるというわけです。

 

対してオーソモレキュラー療法専用サプリメントでは、サプリメントの専門家が体内での崩壊性もきちんと考慮した設計・製造を行っています。加えて、医薬品と同じ基準での崩壊性試験を行い、体内できちんと溶けるよう1つの製品に数十段階もの工程を設けて製造されています。

 

また、消化酵素などの一部成分においては、カプセルが胃で溶けてしまうと胃酸によって成分が分解されてしまうものもあります。このようなものについても、胃で溶けずに腸で溶ける「腸溶性カプセル」を使用したり、胃酸に影響を受けないようコーティングを行うなどの工夫が施されています。

 

このような専門家による設計や、医薬品と同じ基準で製造されたサプリメントは、工程や手間の増加、製造管理費、原材料費が高くなることから、市販されているサプリメントよりも値段が数倍高くなってしまいます。これが、オーソモレキュラー療法で使われるサプリメントが高額な理由です。

 

一方で市販されているサプリメントはこのような考慮や設計、工夫は行われていないため、成分が胃液や胆汁などの影響によって有効成分が分解されてしまっている可能性が高いです。このようなサプリメントでは、そもそも効果が期待出来ないためにオーソモレキュラー療法の実践は行えません。

 

それから、信じられないかも知れませんが、サプリメントによる医薬品成分の検出が相次いで発生しています。このようなサプリを摂取した結果、肝機能障害が引き起こされたなど健康被害を伴う事件も発生しており、厚生労働省や日本アンチドーピング機構などが注意を呼びかけています。

 

https://www.jtu.or.jp/news/2017/10/18/13162/より
https://www.pref.aichi.jp/eiseiken/3f/ken_shoku5.htmlより

 

例えば、2017年には「ANAVITE」という海外製サプリメントに、ドーピングで禁止薬物であるタンパク質同化ステロイドが検出された事件が発生しています。

 

この他にも、愛知県衛生研究所が平成18年4月1日から平成19年3月31日までの一年間で、国内で販売された健康食品の成分を調べた結果、66のサプリメントから医薬品成分が検出されたとの結果が出ました。

 

この情報からも分かるように、国内外問わずサプリメントに違法薬物が混入している事例が相次いでいます。基本的にサプリメントには成分をすべて表示する義務がないため、パッケージの栄養成分表示を見ても薬物が混入しているかどうかは分かりません。

 

もし、サプリメントに薬物が混入していることに気がつかずに摂取し続けてしまった場合、最も懸念されるのは健康被害です。薬物には必ず副作用があり、摂取量や他の薬との飲み合わせなどによっては、最悪の場合死に至る恐れもあります。

 

また、薬物の解毒は肝臓で行われていることから、肝臓にも大きな負担がかかります。特にオーソモレキュラー療法では、一般的な栄養学で推奨されている量よりも遙かに多い量の栄養素を補給することが殆どです。この時に、もし薬物が混入しているサプリメントを使用した場合、その健康被害は相当なものになります。

 

このように、一見すると同じように見えるサプリメントでも、その中身や製法は全く異なります。オーソモレキュラー療法を行っている医師や専門家はこのことについて熟知しているため、使用するサプリメントはオーソモレキュラー療法専用のサプリメントを推奨することが基本です。

 

仮にオーソモレキュラー療法を受けた方が「海外サプリメントや市販サプリメントなどもっと安いサプリメントを使用する」と言っていた場合は、安全面や質の観点からも、オーソモレキュラー療法専用のサプリメントを使用するよう勧めるのは当然とも言えます。

 

このようなサプリメントの実態をあまりご存じない方、検査だけを受けて海外サプリメントや市販されているサプリメントを使用しようと考えていた方にとっては、もしかすると高額なサプリメントを売りつけられたと思ってしまうのかも知れません。

 

何度も言いますが、オーソモレキュラー療法専用に作られていないサプリメントや海外サプリメントでオーソモレキュラー療法を行う事は出来ません。また、オーソモレキュラー療法を受けた方にオーソモレキュラー療法専用のサプリメントを勧められるのは当然の流れです。

 

このことから、高額なサプリメントを売りつけられたというのは完全なる誤解であり、悪意があって行っている事ではありません。

そもそもオーソモレキュラー療法を受ける方が、オーソモレキュラー療法とはどのような療法なのか、オーソモレキュラー療法専用のサプリメントはどのような物かをしっかり理解せずに受けている事の方が問題です。

 

オーソモレキュラー療法を受けて嫌な思いをする前に、まずはオーソモレキュラー療法とはどのような療法なのかについてをよく学んでから受ける様にして下さい。

 

Column : 特定の栄養素をサプリメントで過剰に摂取することは、むしろ生体内に分子の乱れを引き起こし、ガンなどのリスクを上昇させる可能性あり

 

この記事でも解説しているように、一般的なサプリメントや海外サプリメントでは合成した原材料などが主に使用されていることから、特定の栄養成分のみしか含まれていない物が大半です。

 

このような特定の成分のみしか含まれていないサプリメントで分子栄養学を実践すると、むしろ生体内に分子の乱れを引き起こし、ガンなどのリスクを上昇させてしまう可能性があります。

 

例えば、フィンランドで行われたα-トコフェロール・β-カロテンがん予防試験(ATBC)で、29,000人以上の男性喫煙者に20mg/日のβ-カロテンおよび/または50mg/日のα-トコフェロールを与えて効果を調べた研究があります。

 

また、米国で行われたβ-カロテンおよびレチノール有効性試験(CARET)では、30mg/日のβ-カロテンと25,000IU/日のレチノール(ビタミンA)の組み合わせを、喫煙者、以前に喫煙していた者、または職業的にアスベストに接していた18,000人以上の男女に与えて効果を調べた研究があります。

 

この結果としては、β-カロテンのサプリメントを摂っていたグループの肺がんリスクが、ATBCの参加者で6年後に16%増加し、CARETの参加者でも4年後に28%増加したという結果になりました。

 

このことから、1996年にアメリカ国立がん研究所が「β-カロテンにはがん予防効果が無く、また喫煙者では逆に肺がんを増加させる恐れがある」という研究結果を発表しています。多くの専門家は、特に喫煙者やその他のハイリスク集団においては、高用量β-カロテン補給の危険性の方ががん予防効果を凌ぐのではないかと考えているようです。

 

このように聞くと、サプリメントで栄養素を摂取する事はむしろ危険な行為のように思えますよね。ですが、27,000人以上の男性喫煙者を14年間調べたフィンランドでの研究では、β-カロテンを除いて全カロテノイド、リコピン、β-クリプトキサンチン、ルテイン、およびゼアキサンチンの食事からの摂取が、逆に肺がんリスクを有意に減らしていたという結果になりました。また、全カロテノイド、α-カロテン、およびリコピンの摂取が最も多かった男女は、摂取が最少であった男女よりも有意に肺がんリスクが低かったという研究結果があります。(https://lpi.oregonstate.edu/jp/mic/食事性因子/植物性化合物/カロテノイド#肺がんより)

 

この結果から、食事などから全カロテノイド、リコピン、β-クリプトキサンチン、ルテイン、およびゼアキサンチンなどを摂取した場合はガンのリスクを低下させ、逆に合成のα-トコフェロールや合成のβ-カロテン、レチノールなど特定の栄養素を大量に摂取した場合はむしろガンリスクを増加させてしまう恐れがあると考えられます。

 

特に、前者の研究(ATBCやCARET)で被験者に投与されていたのは合成のβ-カロテンでした。合成のβ-カロテンでは100%オールトランスβ-カロテンで構成されています。

 

通常、食品に含まれる天然のカロテノイドには、オールトランスβ-カロテンの他にもシス体のβ-カロテンやα-カロテン、リコピンなど様々なカロテノイドを含んでいます。何か1種類のカロテノイドだけが大量に含まれているなんてことは基本的にありません。

 

このような何か特定の1種類のカロテノイドを大量に摂取した場合、他のカロテノイドの吸収や組織での利用を妨げてしまう可能性があります。また、ある種の抗酸化剤が単独で大量に摂ると、条件によっては抗酸化剤としてよりも酸化促進剤として作用してしまう可能性があります。

 

そのため、サプリメントを選ぶ際は食品由来の原材料を使用した高品質なサプリメントを選ぶことが大切です。特定の成分のみしか含まれていないサプリメントで分子栄養学を実践すると、むしろ生体内に分子の乱れを引き起こし、ガンなどのリスクを上昇させてしまう可能性がありますので注意して下さい。

 

市販されているサプリメントや海外サプリメントでは、上述したように合成のβ-カロテンのみや、レチノールのみ、酢酸 d-α-トコフェロールや酢酸dl-α-トコフェロールのみといったように、特定の栄養成分しか含まれていない物が殆どです。

 

このようなサプリメントでは特定の栄養成分しか含まれていないことから、大量に摂取すると生体内の分子の乱れを引き起こし、ガンなどのリスクを上昇させてしまう可能性があります。

 

対して、分子栄養学実践専用サプリメントでは、天然由来の食品成分を原材料として使用し、なるべく食品と同じになるよう複数のカロテノイドや複数のトコフェロール、トコトリエノールなどの栄養成分が含まれています。このような設計や製造がされているサプリメントを選ぶことが、安全にオーソモレキュラー療法を実践する際のポイントです。

 

同じように見えるサプリメントでも、含まれている栄養成分や使われている原材料には大きな違いがあります。また、それによって得られる結果も変わってくる恐れがありますので、オーソモレキュラー療法を実践する際は必ずオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントを使用するようにして下さい。

 

 

 

※この記事は、下記記事から一部を抜粋・改編したものです。記事全文は下記記事をご覧下さい。元記事はこちら↓