オーソモレキュラー療法が怪しいと言われる理由②

オーソモレキュラー療法では、やたら大量のサプリメントを摂取するよう薦められるって本当?

次に、オーソモレキュラー療法では大量のサプリメントを摂取するよう薦められるかどうかについてです。

 

先に結論から言いますが、これは本当です。オーソモレキュラー療法では、一般的な栄養学の摂取量よりも遙かに多くの量の栄養素量をサプリメントで摂取するようアドバイスされることがあります。

 

例えば、ビタミンCであれば一日に3,000mg〜10,000mg、ビタミンAであれば1回に10,000IU以上、多い方では一日に60,000IU〜程度の量を摂るようアドバイスされる事があります。しかもこれはほんの一部で、他にもプロテインやビタミンB、ビタミンE、ビタミンDなどのビタミン類や、亜鉛、鉄などのミネラルも摂るようアドバイスされる事が殆どです。

全体的に見たら手のひらの上に小盛りになるほどの量になる事もあり、はじめてオーソモレキュラー療法を受けた方は、このサプリメントの多さに驚くかと思います。しかも、これが不調の改善にどのような役に立つのか、全く意味が分かりませんよね。

 

このため、人によっては「過剰摂取になるのでは?」「こんなにサプリメントを摂って大丈夫?」「サプリメントを売るのが目的じゃないの?」「こんなに大量のサプリメントなんてとても飲めない」と思われる方が少なくありません。

 

また、「食事からでも十分な栄養が補給出来るじゃないか」「一般的な栄養学でも十分な栄養が補給出来るじゃないか」といった認識を持っている方が多いかと思います。

 

サプリメント自体に懐疑的な方も多い事から、このような大量のサプリメントの摂取をアドバイスされることも、オーソモレキュラー療法が怪しいと思われてしまう理由です。

 

では、なぜオーソモレキュラー療法ではこのような大量のサプリメントがアドバイスされるのでしょうか?

 

この理由について、まずオーソモレキュラー療法では、その人の状態や病気の状態などによって摂取量が大きく異なることがあげられます。これは、活動量が大きいときや、ストレスがかかったとき、風邪など病気のときでは栄養素の消費量が大きくなることから、栄養素の必要量が多くなるためです。また、慢性的な病気(糖尿病やアレルギー疾患、肝臓病など)やガンの時などは、更に必要量が大きくなります。

 

例えば、ビタミンCの必要量で言えば、少ない方では1回に1,000mgを一日に2〜3回程度摂取すれば十分な方もいます。これは殆どの場合、健康な状態であるか、そこまで必要量が多くない場合です。

 

対して病気やガンなどを抱えている方の場合、人によっては1回に2,000mg〜3,000mgのビタミンCを摂取する事もありますし、場合によっては更に高濃度のビタミンC(10,000mgや20,000mgなど)を点滴で入れる場合もあります。

 

健康なときほど栄養素の摂取量は少なくなりますが、病気やガンなどで身体の状態が悪いときほど栄養素の必要量が多くなります。それに対し、至適量の栄養を摂取する。これが、オーソモレキュラー療法の基本中の基本です。

 

また、例え同一人物だとしても、加齢や生活習慣の変化、病態の変化、体調の変化は常に起こっています。年齢を重ねていく毎に栄養素の必要量は多くなることから、日々の状態に合わせて必要量の栄養素を摂取していくことも、オーソモレキュラー療法では必要になります。

 

この前提において、そもそもオーソモレキュラー療法を受ける方は、現在何らかの不調や病気を抱えている方が殆どです。病院の治療を受けても体調が良くならなかった方、原因不明の体調不良が続いている方、ガンと診断されて治療法を模索していた方等、状態に差はありますが、ほぼ何らかの不調や悩みを抱えている方々になります。現在健康な方がオーソモレキュラー療法に関心を持つことは、あまりありません。

 

そうなると、サプリメントのアドバイス量が増えてしまうのは当然のことです。病気=分子の乱れですので、身体の状態が悪いほど生体内の分子は乱れています。その乱れた分子を整えるためには、それ相応の分子(栄養素)を補給することが必要です。

 

また、病気の7割から9割は生活習慣と関係していると言われています。今まで食生活に気を遣わなかった方や、お酒やタバコなどで散々不摂生してきた方は、ガンや糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病のリスクが高くなっています。

 

このような生活習慣によって生活習慣病を発症してしまった方が病気を改善させるためには、やはりそれ相応の栄養状態に身体を整える事が必要になります。今までの不摂生や生活習慣によって体内の栄養状態は相当悪化していますので、サプリメントのアドバイス量はどうしても多くなってしまうのです。

 

このような理由から、オーソモレキュラー療法を受けた方にアドバイスするサプリメントの量がかなり多くなってしまうという現状があります。これが、「オーソモレキュラー療法では大量のサプリメントを摂取するよう薦められる」と言われてしまう理由の1つです。

 

また、もう一つオーソモレキュラー療法のサプリメント摂取量が多くなってしまう理由に、「ドーズレスポンス」と「至適量」という考え方があります。

 

一般的には「栄養素は少し摂れば足りる」という考え方がまだまだ根強いですが、実はそんな事はありません。栄養素による改善の際には一定以上の量を補給していくことも重要です。特に栄養素においては、摂取量が少ないと殆ど身体に変化が現れないことから、栄養摂取の効果は用量に大きく依存しています。この一定以上の量を摂取することで栄養素の効果を発揮させることを「ドーズレスポンス」と言います。

 

例えばビタミンC(アスコルビン酸)の場合、血流に乗って全身の細胞に運ばれて抗酸化作用等を発揮するためには、ビタミンCの血中濃度を一定以上に維持することが必要です。

 

この抗酸化作用を発揮するためには、ビタミンCを一度に1,000mg以上摂取して初めて血中濃度の上昇が見られることが分かっています。ただし、ビタミンCは水溶性ビタミンのため、摂取後3〜4時間で血中濃度が最大となり、その後は尿と共に徐々に体外へ排泄されてしまいます。

 

そのため、ビタミンCの血中濃度を維持するためには、一度にある程度まとまった量(1,000mg以上)を定期的に補給することが必要です。これがドーズレスポンスと呼ばれているものです。

 

更に、ビタミンCには美白作用や抗ウィルス作用、ヒスタミン抑制作用、抗がん作用などがあり、抗ウィルス作用が期待出来るビタミンCの血中濃度はおよそ10-15mg/dL、ヒスタミン抑制作用を発揮する血中濃度は88mg/dL程度と言われています。

 

このような違いがあることから、ビタミンCの摂取量はその人の状態や目的によっても大きく変わってきます。また、その人の状態や生活習慣、年齢や性別、消化能力、酵素と基質の親和性の個体差などによっても摂取量は異なります。この状態や目的に応じて、最適な栄養素の量を摂取すること。これが至適量と呼ばれる量です。

 

オーソモレキュラー療法では、このような病態や個人差を考慮した「至適量」の栄養摂取を行っていく事が基本です。例えば、同じ病気を抱える方が、同じ消化吸収能力だったとしても、その人の年齢や性別、酵素活性や生活習慣、目指している目的などによっても必要な栄養素の量は変わってきます。

 

身体を動かすことが多い人もいれば、身体をあまり動かさない人もいます。ストレスが多い人も居れば、ストレスなく過ごしている人もいます。当然、身体を動かす量が多い人や、ストレスが多い人ほど、より多くの栄養素の摂取が必要です。

 

また、摂取した栄養素(ビタミンなどの補酵素)は体内で酵素と結びついて初めて働けるようになります。この酵素と栄養素(ビタミンなどの補酵素)が結合するために必要な結合力や、結合出来る量(親和性)は、人によって異なっています。

 

そのため、補酵素と酵素の親和性の個体差からビタミンの必要量にも大きな個体差が生じます。その差は、最大1:20にも及ぶとされ、ちょっと栄養補給すれば足りる人も居れば、摂っても摂っても全く足りない人もいるのです。

 

加えて、人によっては「もっと筋肉を付けたい」「もっと肌が綺麗になりたい」などの要望があったり、目標を掲げていたりする方もいます。このような個人的な要望や目標なども考慮し、個人差にあわせた最適な栄養素の量を摂取することを「至適量」と言います。

 

オーソモレキュラー療法ではこのような「病気による栄養需要の増加」や「ドーズレスポンス」「至適量」を考慮して行うため、身体の状態や病気の状態によってはサプリメントのアドバイス量が大幅に増加してしまうことがあります。これはその方の状態を客観的に分析した結果でのアドバイスのため、決してサプリメントを売りたいからではありません。

 

ですので、オーソモレキュラー療法を受けると大量のサプリメントがアドバイスされるのは割と普通なことです。これはオーソモレキュラー療法とはどのような療法なのか?を理解すれば怪しい点はなくなるかと思います。オーソモレキュラー療法が怪しいと思っている方は、まずオーソモレキュラー療法とはどのような療法なのかをしっかりと学んでみてください。

 

ちなみに、「一般的な栄養学でも十分な栄養が摂取出来るのでは?」「サプリメントをこんなに大量に飲んだら過剰摂取になるのでは?」という声もよく頂きます。このあたりについて学ぶことも、オーソモレキュラー療法を正しく理解する上では重要です。

 

まず、過剰摂取についてですが、栄養素についての知識を深めることが大切です。過剰摂取のリスクがあるのはお薬で処方されるビタミンDやビタミンAなどの「活性型」であり、サプリメントに含まれる栄養素は過剰摂取の心配は基本的にありません。

 

オーソモレキュラー療法と薬物療法の違い

薬物療法

  • 既に活性化したもの(薬物)を投与する

  • 栄養素や体内での働きを強制的にコントロールする

  • 速効性がある、誰にでも同じように効果が期待出来る

→副作用がある

オーソモレキュラー療法

  • 天然物を投与する

  • 栄養素の利用は生体内のコントロールに任せる

  • 速効性は無いが、人それぞれにあった効果が期待出来る。

→副作用が少ない

 

このあたりの薬とサプリメントの違いについては、前回の記事を参考にして下さい。

 

また、必要な栄養素については「食事からでも十分に摂れる」と言った声や「一般の栄養学でも十分摂取出来る」という意見もあります。

 

これについても、病態を抱えている方が食事や一般的な栄養学でオーソモレキュラー療法における必要な栄養素量を補うことはほぼ不可能です。

 

なぜなら、食事から得られる栄養素は胃や腸の働きによってきちんと消化吸収されて初めて意味があります。この時に胃や腸に問題を抱えている方は、きちんと消化吸収出来ないため必要な栄養素が十分に摂取出来ません。加えて、食事から必要な栄養素を摂取しようとすると、むしろ栄養バランスや食事が偏ってしまい、病気のリスクを上げてしまう恐れもあります。

 

それに、一般的な栄養学では個人差や消化吸収能、病態などを考慮しておらず、あくまで「健康な人」を対象とした栄養摂取の目安を定めたものです。病態を抱えた方に、一般的な栄養学の摂取目安量は全く当てはまりません。

 

このようなことから、食事や一般の栄養学でオーソモレキュラー療法を実践するのはほぼ不可能です。一人一人の必要量は状態によって変わることから、必要な時は適切にサプリメントも使用するようにしましょう。

 

 

 

※この記事は、下記記事から一部を抜粋・改編したものです。記事全文は下記記事をご覧下さい。元記事はこちら↓