薬とサプリメントの具体的な違い。同じように見える物でも何が違う?⑤

薬で処方されるEPA製剤と、分子栄養学実践専用サプリメントのDHA・EPAの違い

続いて、薬で処方されるEPA製剤と、分子栄養学実践専用サプリメントのDHA・EPAの違いについてです。

 

EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)は、主に魚に含まれている油のことで、オメガ3系脂肪酸と呼ばれています。EPAとDHAは必須脂肪酸の一つで、体内で合成することが出来ないことから必ず食事から摂取する必要があります。

 

また、油には他にも種類があり、スーパーなどで売られているサラダ油やコーン油、ごま油などは「オメガ6系脂肪酸」と呼ばれている油です。こちらも、体内で合成することが出来ないため、必ず食事から摂取する必要があります。

 

近年では魚を食べる量が減り、サラダ油やごま油などの「オメガ6系脂肪酸」を多く摂取するようになりました。魚に含まれている「オメガ3系脂肪酸」と植物油に多く含まれる「オメガ6系脂肪酸」は、摂取量のバランスが重要であり、よりオメガ3系脂肪酸の摂取量が多い人ほど、心筋梗塞による死亡率が著しく低いことが分かっています。

 

例えば、デンマーク人とイヌイットの心臓病による死亡率を調べたところ、オメガ6系脂肪酸の摂取量が多いデンマーク人に比べ、オメガ3系脂肪酸の摂取量が多いイヌイットのほうが、心筋梗塞による死亡率が著しく低いことが分かりました。

 

これは、イヌイットは野菜や果物の摂取量は少ないですが、EPAを多く含む魚やアザラシなどが主食のため血中EPA濃度が高濃度で維持できていたためです。

 

このことからEPAには虚血性疾患を予防する作用があるとされ、前回記事のビタミンEと同じく、動脈硬化や虚血性疾患の治療や予防のためにEPA製剤が処方されています。

 

EPAには赤血球の変形能を保ったり、傷んだ血管の修復を促す作用があり、特に狭い血管内を赤血球が流れる際には赤血球の柔軟性が欠かせません。

 

赤血球は全身に酸素を運ぶ役割を持っていて、狭い毛細血管内ではその形を柔軟に変形して身体の隅々まで酸素を送り届けています。この際、赤血球の変形能が低下してしまうと、毛細血管を通りにくくなって血流が悪くなったり、血管と赤血球がこすれて血管が痛んでしまいます。

 

これら赤血球の変形能を保ち、痛んだ血管の修復を促してくれる作用があるのがEPAとDHAです。また、EPAとDHAには不整脈や血栓の形成を防ぐ働きもあります。

 

このことから、動脈硬化や虚血性疾患のリスクが高い方には、ビタミンEと併せてEPA製剤やDHA・EPA製剤のお薬も同時に処方されることがよくあります。

 

では、病院で処方されるEPA製剤やDHA・EPA製剤でオーソモレキュラー療法は出来るのでしょうか? 主なものとしては、「エパデール(EPA製剤)」や「ロトリガ( EPAとDHA(ドコサヘキサエン酸)を主成分とする製剤)」があります。同じDHA・EPAなら、サプリメントのDHA・EPAよりも病院で処方されるDHA・EPAの方が質が高そうな感じがしますよね。

 

ですが、病院で処方されるDHA・EPAでは、オーソモレキュラー療法を実践することは出来ません。

 

なぜなら、病院で処方されるDHA・EPA製剤では、EPAまたはDHAのみを高純度で配合していることから、出血しやすくなるなどの副作用が伴うためです。

 

また、DHA・EPA製剤では、EPAまたはDHAのみを高純度で配合していることから脂肪酸の含有バランスが食品由来のものとは大きく異なります。これでは、日常的な栄養補給や体内の脂肪酸バランスを整える目的としては使えません。

 

例えば、EPA製剤のお薬である「エパデールT」の副作用説明には、使用上の注意として次のような説明があります。

 

<<エパデール使用上の注意>>
◆してはいけないこと(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなります)

  • (1)20才未満の人。

  • (2)出血している人。
    (血友病、毛細血管脆弱症、消化管潰瘍、尿路出血、喀血、硝子体出血等にて出血している場合、止血が困難となることがあります)

  • (3)出血しやすい人。(出血を助長することがあります)

  • (4)手術を予定している人。(出血を助長することがあります)

  • (5)次の医薬品を服用している人。
    ミフェプリストン及びミソプロストールを含有する人工妊娠中絶薬、ワルファリン等の抗凝固薬、アスピリンを含有するかぜ薬・解熱鎮痛薬・抗血小板薬、インドメタシンを含有する鎮痛消炎薬、チクロピジン塩酸塩やシロスタゾール等の抗血小板薬(出血傾向が強くなることがあります)

  • (6)脂質異常症(高脂血症)、糖尿病又は高血圧症と診断され現在医師の治療を受けている人、あるいは健康診断等で医師の治療を勧められた人。

https://www.taisho-direct.jp/products/detail/EDT-00-L2F000Xより

 

また、同じくDHA・EPA製剤である「ロトリガ粒状カプセル」においても次のような副作用が記載されています。

 

ロトリガ粒状カプセルの副作用

主な副作用
過敏症 、 発疹 、 薬疹 、 そう痒 、 高血糖 、 めまい 、 頭痛 、 鼻出血 、 下痢 、 悪心 、 腹痛

重大な副作用
肝機能障害 、 黄疸 、 AST上昇 、 ALT上昇 、 AL−P上昇 、 γ−GTP上昇 、 LDH上昇 、 ビリルビン上昇

上記以外の副作用
おくび 、 腹部膨満 、 便秘 、 鼓腸 、 痛風 、 味覚異常 、 低血圧 、 消化不良 、 胃食道逆流性疾患 、 嘔吐 、 胃腸出血

薬剤との相互作用
血液凝固阻止剤、ワルファリンカリウム、抗血小板剤、アスピリン いずれも出血等の副作用

 

このように、病院で処方されるDHA・EPA製剤では出血しやすくなるなどの副作用が起こる他、特定の病態を抱えている方や薬を服用している方では、相互作用に対して特に気をつけることが必要です。

 

そのため、DHA・EPA製剤は医師の判断の下、慎重に投与が行われており、副作用など安全性の観点から日常的な栄養補給の用途として安易に用いるべきではありません。病院で処方されるEPA・DHA製剤は、あくまで病気の治療を目的としたお薬です。

 

それから、DHA・EPA製剤では、EPAまたはDHAのみを高純度で配合していることから、オーソモレキュラー療法で必要な体内の脂肪酸バランスを整える目的で用いることは出来ません。

 

本来、魚に含まれている油にはDHA・EPAに加え、魚油由来の脂肪酸がバランス良く含まれています。例えば、同じくオメガ3系脂肪酸の「α-リノレン酸」や、オメガ6系脂肪酸である「アラキドン酸」や「リノール酸」などです。

 

α-リノレン酸は主に亜麻仁油など植物に含まれている油で、体内ではEPAやDHAに変換される出発物として、EPAやDHAに変換されて使われています。このα-リノレン酸が魚油にも含まれる理由としては、植物プランクトンにもα-リノレン酸が多く含まれており、それを食べる動物プランクトンや、動物プランクトンを食べる魚では、食物連鎖によってオメガ3系脂肪酸が蓄積していくためです。

 

また、「アラキドン酸」や「リノール酸」はオメガ6系脂肪酸の必須脂肪酸であることから、これら油もバランス良く摂取する必要があります。

 

オーソモレキュラー療法ではこれら油をバランス良く摂取して体内の脂肪酸バランスを整える事が目的で、DHA・EPA製剤のように病気の治療を目的としたものではありません。

 

そのため、当方が推奨するオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントでは、医薬品のように合成のEPAやDHAを配合するのではなく、天然に存在する魚から油を抽出して作られています。

 

例えば、当方が推奨するオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントでは、使用されている原材料が食品由来の天然成分であるため、副作用の心配は基本的にありません。これは、例えるなら魚を食べているのと同じような状態になるためです。健康な人が魚を食べても副作用がほぼ起こらないのと同じように、天然由来の食品成分であれば、副作用が起こることはほぼありません。

 

また、DHAにはEPAと同等、もしくはそれ以上の抗炎症作用がある事から、EPAとDHAを同時に摂取することで相乗効果が期待出来ます。病院で処方されるDHA・EPA製剤はEPAもしくはDHAのどちらかしか含有していませんが、当方が推奨するオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントではDHA・EPAどちらもバランス良く含まれています。

 

このように、病院で処方されるDHA・EPAとオーソモレキュラー療法で使用するDHA・EPAは、それぞれ配合されている成分も使用する目的も違うことから、病院で処方されるDHA・EPAをオーソモレキュラー療法で使用する事は出来ません。

 

もし、DHA・EPA製剤が保険適用で利用出来るようになったとしても、やはりオーソモレキュラー療法で使用する事は出来ないのです。

 

また、当方が推奨するオーソモレキュラー療法で使用するDHA・EPAのサプリメントは、脂質を上手く吸収できない方のために「ミセル加工」が施されているものもあります。ミセル加工とは、水に混ざりにくい油を、水に混ざりやすくした加工のことです。

 

繰り返しになりますが、脂質や脂溶性ビタミンは消化液などの体液と混ざりにくく、そのままでは吸収・運搬することが出来ません。これを解決するために、私達の体内では「胆のう」から分泌される胆汁によって、脂質と水分を混ざりやすくする「乳化」という仕組みが備わっています。この乳化の仕組みは、女性の方であればメイク落としを想像していただければイメージしやすいかと思います。

 

そして、この乳化能力は、加齢やストレスなど様々な要因によって低下してしまう場合があります。このような場合、いくら脂質を摂っても、体内でうまく乳化することが出来ないため、十分に吸収することが出来ません。

 

当方が推奨するオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントの場合では、このような加齢やストレスなど様々な要因によって乳化能力が低下している方のために、予め乳化を施した「ミセル加工」(自己乳化型加工)を施した製品が用意されています。

 

また、天然に存在するDHA・EPAはそのままの状態だと光や酸素の影響で酸化、劣化してしまうため、それらから有効成分を守るために天然由来の成分を使って酸化・劣化しないよう保護しています。このような加工がされていることも、当方が推奨するオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントの特徴です。

 

このような違いがあることから、病院で処方されるDHA・EPA製剤やドラッグストアなどで市販されているDHA・EPAサプリメントを使ってオーソモレキュラー療法を行う事は出来ません。

 

DHA・EPAというとみんな同じように見えるかもしれませんが、比べてみるとオーソモレキュラー療法と保険診療では、使う材料ややり方、考え方に大きな違いがあることが分かりますね。

 

 

Column : 魚をたくさん食べればDHA・EPAサプリメントの代わりになる?

 

EPAやDHAはサバやイワシなど青魚の脂に多く含まれている成分です。先ほど解説したイヌイットの例では、イヌイットはEPAを多く含む魚やアザラシなどが主食のため血中EPA濃度が高濃度で維持できていました。

 

また、当方が推奨するオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントでは、サバやイワシなど食品由来のものから抽出した成分を原材料に使用しています。

 

このことから、魚を多く食べればサプリメントと同じようにDHAやEPAが摂れるのでは?と思う方もいますよね。果たして、魚を多く食べれば、サプリメントに頼らなくても血中EPA濃度を高濃度で維持することは出来るのでしょうか?

 

これについては、不可能とは言いませんが、なかなか難しい部分が多くあるかと思います。

例えば、手軽に食べられるサバ缶の場合、DHAが1300mg、EPAは930mg含まれているとされ、イワシ缶ではDHA・EPAはそれぞれ1200mg・1200mg含まれていると言われています。※文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)脂肪酸成分表」より

 

オーソモレキュラー療法におけるDHA、EPAの推奨摂取量は、一日あたり1,000mg~とされていますので、毎日イワシまたはサバ缶を100g以上食べ続ければ、推奨摂取量が満たせる計算です。やろうと思えば、何とか出来そうな気がしますよね。

 

しかし、サバ缶やイワシ缶からDHA・EPAを摂取するとした場合、缶詰内にある汁まですべて残さず摂取した場合に限り、先ほどのDHA・EPAを摂取する事が可能です。汁を捨ててしまったり、残したりしてしまった場合は、DHA・EPAの総摂取量は減ってしまいます。

 

また、DHA・EPAは非常に酸化されやすく、保管状況や調理の仕方によっては、DHA・EPAの酸化が促されて栄養成分が損失したり成分が劣化してしまったりします。

 

例えば、揚げ物や炒め物など高温での調理を行う場合や、煮るなど長時間の加熱料理ではDHAやEPAの酸化反応が促進されるため、DHA・EPAが酸化してしまう場合があります。

また、酸性の環境でも酸化が進みやすいため、酸味の強い料理や酢を多く使用する調理法では酸化の影響を受けやすくなるので注意が必要です。(サバの酢〆など)

 

それから、DHAやEPAは酸素との反応が速いため、調理中など空気に触れている状態であれば、酸化しやすくなります。これは、調理中に限らず、開封して余ったサバ缶やイワシ缶を保管する場合や、乾物、塩蔵品、干物なども同様です。(魚油が酸化している場合、黄色ないし赤褐色に変色し、味や香りなど風味の劣化が著しくなります)

 

もし、このような酸化したDHAやEPAを多く摂取してしまった場合、酸化した油によって発生する活性酸素(フリーラジカル)の影響によって、むしろ体内でダメージを受けてしまう恐れがあります。活性酸素によってダメージを受けると、炎症が促進され、動脈硬化や虚血性疾患、ガンなどのリスクが上昇してしまうことにも繋がりかねません。

 

そのため、サバ缶やイワシ缶など食品からDHA・EPAを十分に摂取しようとした場合、なるべく製造日から日が経っていないものを選ぶことと、なるべく調理はせずにそのまま食べる事が理想となります。これについては筆者も一度チャレンジしてみたことがあるのですが、サバ缶を3日連続で食べたあたりから魚油の臭いで気持ち悪くなり、とても食べ続けることは出来ませんでした。

 

また、魚油というとDHAやEPAしか含まれていないというイメージですが、実は心筋梗塞のトリガーとなる「セトレン酸」や「エルカ酸」「ドコセン酸」と呼ばれる脂肪酸も多く含まれている傾向にあります。

 

具体的には、サンマではエイコセン酸とドコセン酸をあわせて45%程度含まれていることもあり、マイワシやサバでは、多いものでそれぞれ15%〜25%程度含まれていると言われています。

 

このため、魚を食べれば必ず心筋梗塞や心疾患の予防、改善に効果が期待出来るとは言えません。

 

これは、魚に限らずサプリメントも同じです。サプリメントの種類によっては、このような不要な脂肪酸がそのまま含まれているものや、逆に、不要な脂肪酸は取り除かれているものの、α-リノレン酸やリノール酸、アラキドン酸などの必須脂肪酸まですべて取り除かれてしまっているものもあります。また、サプリメントによっては酸化しやすい魚油成分に対して十分な酸化対策や工夫がされていないものもあります。

 

そのため、やはり魚を食べるのとサプリメントからDHA・EPAを摂取するのと、薬で摂取するのとでは、摂取できる有効成分や脂肪酸バランスに大きな違いがあります。

 

では当方が推奨するオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントのEPA・DHAサプリメントはどうなのかというと、精製過程でドコセン酸をはじめその他不必要な脂肪酸はしっかりと取り除かれているので安心です。加えて、体内で必要なα-リノレン酸やリノール酸、アラキドン酸などの必須脂肪酸は残すという絶妙な塩梅で精製がされています。

 

また、当方が推奨するオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントでは「ミセル加工」(自己乳化型加工)を施した製品も用意されており、加齢やストレスなど様々な要因によって乳化能力が低下している方でも安心して摂取出来るよう配慮がされています。

 

酸化・劣化対策においても、有効成分を守るために天然由来の成分を使って酸化・劣化しないよう保護しています。このような加工がされていることも、当方の推奨するオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントの特徴です。

 

このように、当方が推奨するオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントでは、消化吸収能を考慮し、体内の脂肪酸バランスを整えるために必要なものは残し、不要なものは極力排除するという絶妙なバランスで設計、製造されています。

 

魚の油には確かにDHA・EPAが含まれていますが、魚とサプリメント、薬では、摂取出来る有効成分や脂肪酸のバランスに大きな違いがあります。

 

そのため、食事からDHA・EPAを摂取することも大切ですが、脂肪酸のバランスや有効成分の酸化・劣化、消化吸収能も考慮し、必要に応じてサプリメントや適切にお薬も使用することが大切です。

 

 

 

 

 

※この記事は、下記記事から一部を抜粋・改編したものです。記事全文は下記記事をご覧下さい。元記事はこちら↓