従来、治療などの結果の評価は生存率、治癒率、有効率や腫瘍縮小率など、医療者の視点による医学的評価に基づくものがほとんどでした。

病気の症状や医薬品の副作用は、検査結果や明確な基準に沿って重症度を判定するものもありますが、主観的な判断が伴う痛み、嘔気や疲労感などは、医師と患者さんの評価がずれていることもあります。

ですから、現在では、患者本位の医療を実現するため、

「PRO」(Patient Reported Outcome)、すなわち、患者の報告に基づくアウトカムがますます重要視されています。

アウトカムとは

そもそもアウトカムとはどういうことでしょう。
アウトカム(Outcome)とは、直訳すると「成果・結果」という意味を持つ言葉です。

医療では、転帰(疾患・怪我などの治療における症状の経過や結果)と訳され、治療や予防などの
医学的介入から得られるすべての結末のことです。

PROの重要性

PROは、治療の効果や副作用を患者の視点から評価するための重要なツールです。
従来の臨床評価だけでは得られない情報を提供し、治療法の改良や患者ケアの向上に役立ちます。
たとえば、最新のFDAガイダンスは、PROデータを新薬承認プロセスに統合する重要性を強調しており、治療の効果や患者の生活の質に関する患者自身の報告が不可欠であるとしています。

FDAガイダンスとは

米国食品医薬品局(FDA)が発行する文書で、医薬品や医療機器の開発、試験、承認プロセスに関する具体的な指針を提供します。
これらのガイダンスは、業界の専門家がFDAの期待や規制要件を理解し、遵守するのに役立っています。


PROとは具体的に?

PRO(Patient Reported Outcome)は、患者自身が
報告する健康状態や治療の影響に関するデータを指します。
具体的には以下のような項目が含まれます。

症状の重さ:痛みや疲労、吐き気などの症状の程度や頻度。
日常生活の質:日常生活や社会活動への参加度、精神的健康、身体機能。
治療の影響:治療による副作用や効果の感じ方、治療に対する満足度。

これらのデータは、質問票やインタビュー、デジタルデバイスを用いて収集されます。

最新の治験データ

2024年に発表された最新の治験データでは、CARーT細胞療法のアウトカムに関するPROデータが注目されています。
たとえば、ZUMA-24試験では、イエスカルタ(世界で最初に悪性リンパ腫へ使用が可能となった抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)を導入した自家由来のT細胞製品)の外来患者への投与が従来の入院治療と比較してどのように安全性や効果に影響するかを評価しています。
この試験では、患者の報告による治療の受容性や副作用の軽減が確認されました。

また、欧州癌研究治療機構(EORTC)の研究では、癌臨床試験におけるPROデータの使用基準が設定されました。
これにより、患者の生活の質の向上が目指されています。

患者報告アウトカム(PRO)は、治療法の評価や患者ケアの向上において不可欠な要素です。最新の治験データは、PROの有用性とその影響力を示しており、今後もPROデータの重要性は増していくことでしょう。

どんな状況であっても、自分の人生は、自分が主人公です。
だからこそ、医療においても、患者本位でなくてはならないのです。
よりよい医療の実現のためにも「PRO」の普及と発展を強く望みます。