緩和ケア | nurseredcatのブログ

nurseredcatのブログ

ブログの説明を入力します。

夜6時に患者さんの部屋に行ったとき。94歳のその患者さんはニコニコ笑って私がゴミを片付けているのを見ているので、”何か他にしてもらいたいことはありますか?”と聞いたら首を横に振っていました。その10分後、モニターのアラームがなっているので見たら脈数が30。慌ててその患者さんの部屋に行ったら意識不明、顔はどす黒く、呼吸困難、脈数30,血圧50/20。腹大動脈の動脈瘤で手術できる年じゃなかったので、緩和ケアに明日する予定だったのですが体に爆弾を抱えているようなもの。動脈瘤が破裂したのでしょう。15分後に亡くなりました。

 

緩和ケアというとすぐに亡くなる人のためと思いがちですが実はそれだけじゃないんです。私の病院ではすぐに亡くなる可能性がある患者さんからガンや心不全などの重病で余命6か月の患者さんまで緩和ケアチームに助言を求めることができます。緩和ケアチームは痛みなどの症状の緩和が主な目的としていますが、患者さんの余生の質をよくするのを手伝ったり、家族の精神的サポートをする仕事もします。また、家族の間で患者さんのケアの目標が決まらない時など、家族全員で話し合うミーティングを設けて目標を定めるのを手伝ったりもします。病院での緩和ケアチームは、緩和ケア専門のドクターやナースプラクティショナーでなりたっており、主治医がオーダーして初めて患者さんに会うことができます。普段、主治医は患者さんに会うのは一日15分程度。でも緩和ケアチームは時間をかけて、必要なら1時間以上かけて患者さんや家族の方の話を聞いて相談にのったり、ケアを調整したりしてくれます。私たちナースにとっても緩和ケアは強い味方!もっと患者さんを楽にしてあげることができるようになるし家族へのサポートが助かるからです。

 

死が近い患者さんが緩和ケアになると、生かすケアから一転して余生を緩和するケアにかわります。痛みを伴う血液検査などはなし、血圧などのバイタルは調べません。患者さんを個室に移して好きな音楽を流したり、家族のために軽食を用意してあげたりして家族が患者さんとの最後の時間を有意義に過ごせる状態にしてあげます。本人が好きなものを食べさせてあげるのもその一つ。塩分が高かろうが、うまく呑み込めなくて肺に入っちゃおうが関係なし。食べたいものを好きなだけ食べさせてあげます。痛みがある患者さんはモルヒネの点滴を入れ始め、痛みや呼吸数によってその量を増やしていきます。よく家族の質問でモルヒネで殺しているんじゃないかと心配して聞いてくることがあります。確かにモルヒネは呼吸を止める副作用がありますが、点滴は少量ずつ、体の状態を見てあげていくのでモルヒネが患者さんを死なせているわけではありません。モルヒネは痛みをとり除き、患者さんの呼吸を楽にしてあげているだけなのです。そして大切なのは家族への対応。死が近づいていくと呼吸のみだれ、水の中で溺れているような音をだすようになったり、熱がでたり、反対に体が氷のようにつめたくなったり。そういう体の変化がでてくることを先に話しておくと家族も心構えができます。

 

緩和ケアになったおばあちゃん。同じベッドに一緒に寝たいかと聞くと涙を流して喜んでしばらく隣でおばあちゃんを抱きしめて寝ていた旦那様のおじいちゃん。あるレストランのハンバーガーが食べたいと駄々をこねたので、ナースの一人が買ってきて食べさせてあげたら一口しか食べれなかったけどめちゃくちゃ喜んでいた緩和ケアになっていた70代の男性。本を出版する直前に病気になり、家族が手伝って本を仕上げて病院が本のサイン会を開催してあげた緩和ケアの50年代の女性。スタバのコーヒーが飲みたいというので医師、ナース二人、呼吸器専門技師4人でタンカーに乗せて病院内のスタバに連れて行って飲ませてあげた緩和ケアになる寸前の重症な30代の男性。最後、幸せにできましたか?