名無しの権兵衛 | nurseredcatのブログ

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交通事故や心停止で意識不明で運ばれてきた名無しの権兵衛さん。日本ではなんて呼ばれるんでしょう? 山田太郎? アメリカではJohn DoeとJane Doeと呼ばれます。これは私の病院だけかもしれませんが、年は若くて見えても110歳。間違えるといけないのであまりありえない年に指定します。何か証明するものがあればいいのですが、携帯などがロックされていたら法律上、病院側はその携帯を調べてはいけません。でも、生きるか死ぬかの瀬戸際で家族に連絡しないわけにはいけないので、指紋認証でロックされていたら勝手に患者さんの指を携帯にあてて、内緒で携帯を開けて家族に連絡をしてしまうこともあります。プライバシーの侵害で家族や患者さん本人に怒られることは今までに一度もありませんでした。

 

患者さんが入院するときは持ち物をチェックして、貴重品は警備室に保管されます。だから、名無しの権兵衛さんの荷物も調べることになります。ただ、何があるかわからないので、二人のスタッフで調べることになります。アメリカはカードの国。ほとんどの人は100ドルもキャッシュを持ち歩きません。一度、20万近くキャッシュを持っている名無しの権兵衛がいてびっくりしたことがありました。アーミーナイフ、小型の銃、たばこやドラッグなどいろいろなものがポケットに入っていますが、毛糸の玉とかたまに変なものが入っていることもあります。浮浪者の荷物をチェックするのはいつも抵抗があります。

 

これは私自身の経験ではありませんが、私の仕事場のナースが意識不明のJohn Doeをケアしてた時のこと。やっと連絡先が見つかり、女性が病院にきました。ナースがその女性にどういう関係かを聞くと奥さんだとのこと。検査や輸血などはその奥さんの了解のもと行っていました。本人の名前もわかり、めでたし、めでたし。。。と言いたいところですが、ある日もう一人の女性が突然に病院に現れました。その女性は怒り狂っていて、最初の女性と口論に。なんと、そのあとからきた女性が本当の奥さんで、最初の女性は愛人と判明。どうやらその患者さん、州の反対側に住んでいて、会社の出張と称して2重生活をしていた模様。私の友達のナースはその愛人に”関係を嘘ついて色々な検査などに了解したのは法に反する”と言ったら、ことの重大さをやっとわかったらしく、それからは患者さんに会いに来なかったそうです。結局この患者さんがどうなったかわかりませんが、意識が戻っても奥さんから離婚されたかもしれませんね。

 

瀕死状態で他の病院から運ばれてきた男性の患者さん。名前も前の病院から教えてもらっていてわかっていたので、集中治療室のドクターが状況を説明しようと奥さんに電話をしました。

”ミセス、XXXさん? あなたの旦那さんがXX病院に運ばれてきて、今危険な状態です。”

”え? 私の主人は今、隣で一緒にテレビを見てますが。。。”

 

どうやら、前の病院のミスで違う人と間違えていたようで、電話をしてしまったドクターはめちゃくちゃ恥ずかしく、気まずい空気の電話になってしまいました。その患者さんはしばらくJohn Doeに直されましたが結局、同姓同名の人だと後でわかりました。いつもいばっているドクターだったのでちょっとだけ”ざまーみろ”って思っちゃいました。。