(意外と)大切なこと | nurinuri.jp うるしぬりぬりブログ

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漆職人の日々の行動を綴ります。仕事のこだわりから近所のお散歩まで…

久しぶりの更新です。

 ちょっと前からほっといていた黒漆。今日は上塗りに使おうと準備してます。
 黒は特に刷毛目が直りにくくなりがち。そこでなやしを掛けます。
 なやしっていうのは、生の漆を精製する『くろめ』と同時に行うことが多い作業で、漆を摺りこんで滑らかにする…といったら伝わりやすいですかね。くろめは撹拌して水分を抜く作業です。

 塗る前に毎回することではありませんが、漆の調子を試す『つけ』で不安があると行います。『つけ』というのは、ガラスなどに漆を付けてみて固まる早さや滑らかになるか、色などなどの具合をみること。

 

 作業自体は鉢に入れて摺りこむだけの単純なこと。夜中にやると当たり前ですけど……眠くなります。


 この『なやし』もそうですが、細かい作業が実は大切!工程の説明をするとき、下地を付けるとか漆を塗るといった『増やす』ことを中心にします。でも同じかそれ以上に大変なのが『減らす』こと。研ぎ研き(みがき)です。
 そのまた隙間にある作業、例えば泥拭き。研いだ後の泥を水拭きするんですが、水が乾くと拭いた布の繊維が強力に付着します。その繊維は漆塗りの大敵。そのまま塗ったら、ふし上げ(塗った後にごみを除去する作業)で泣きます。大泣きします。
 これを防ぐには2つの方法があって、ひとつは厚塗り。ほこりが隠れるほどに厚く塗ります。

 薄塗りにするにはもう一つしかないんですね。繊維を擦ってはがします。でも、そうすると静電気を生みます。また一難です…… この厄介な静電気、貼りついた強情さはなく纏わりつくもの、水分には素直に離れてくれるんですね。

 こういった細かい作業が実は一番重要かもしれません。地味なんで工程説明にはまず出ませんけど。

 
 弟子入りして、一番に考えさせられたのは想像する大切さ。目に見えている状態より、見えない部分までミクロの目で見たと想像してみる。これで仕事が変わりました。