「インターネットは民主主義の敵か」を読んで(1) | 砂上の賃貸

「インターネットは民主主義の敵か」を読んで(1)

ちょっと前にキャス・サンスティーンの「インターネットは民主主義の敵か」(原題:Republic.com)を読んで、その後も読み直しているのですが、その概略と感想について、回を分けて書こうかと思います。
 

まず、この本の概要についてですが、扇情的なタイトルのせいで誤解を招いていますが、主題は「インターネット時代における、アメリカの民主主義のあり方について」であって、日本版への序文でも著者が


私の主な目的は、「デーリーミー(Daily Me 日刊の『私』)」という概念を使って民主的自己統治の前提条件を明らかにすることだ。インターネットは民主主義にマイナスになるとか、新しい情報通信技術は世の中を進化させるよりも退化させるとか主張するつもりはない。

と書いてあるとおりで、インターネットが普及し情報通信技術が発達した世の中における懸念点は示していても、それ自体を目的としているのではなく、そのような懸念事項が起こりうる世界で、あるべき民主主義の形を実現するためにはどのようにするべきかが主題であるということを理解する必要があります。そして、アマゾンのカスタマーレビューに「インターネットと民主主義との関係について論じながら、実は米国の民主主義の制度や考え方についてのオーソドックスかつ最良の参考書になっています」とあるように、アメリカの民主主義について丁寧に説明がなされています。本来適切な邦題は原題をそのまま訳した「共和制ドットコム」だと思いますが、まあ、編集者的な角度から考えれば仕方ないんでしょうね。
  

さて、まずは全体を読み通しての大まかな感想ですが、読みやすくて内容も理解できるが、ある意味で難しいです。なにが難しいのか?というと、先に書いたとおり、これはあくまでもアメリカの民主主義の考え方に沿ってインターネット時代の民主主義のあるべき姿を論じている本であって、日本に暮らす日本人である自分がそのままにすんなり受け取ることはできないというところです。文脈を理解し、自分たちの身に置き換えて、照らし合わせなければならないでしょう。そして、そうやって考えてみると大きく突き当たるのは、日本における民主主義とはなんぞや?という当たり前のようでおざなりにされてきた部分です。
 
しかし、そういう意味では、この本はとても勉強になります。インターネットの善し悪し以前の問題として、例えば


私が一貫して強調しているのは、共和制は直接民主制ではないことと、優れた民主的システムとは――人々の好き勝手な発言にいつでもすぐに反応するのではなく――適度の熟考と討議を確保するシステムを内包しているということだ」
(本書第九章「結論 リパブリック・コム」より引用)


というサンスティーンの提言はとても本質的な問いかけであり、民主主義を考えるきっかけとして面白かったです。
  

とりあえず今回はここまでにして、次回は本書のインターネットに関する各論について取り上げてみようと思います。(続きはこちら