いや、もうお見事!

9.11が起こる前後に2回、ブロードウェイに行ったことがある。3日くらいしかない日程の中で5本くらいミュージカルを観るという強行軍だったが、ハードスケジュールもなんのその!満喫して本場の凄さを実感できた気になっていた。
でも俺が観ることができたのは、英語がわからんでも何とかなるほんのわずかな作品だけ。本当に人気のある作品というのはかなりの英語理解力が必要なわけで、観たいなぁと思いつつ手を出せずにいた。

その中でもぶっちぎりの人気でチケットも入手不可能だった「プロデューサーズ」が映画化!よくぞやってくれました。これで翻訳されて井上順とか藤井隆あたりが演りそうな日本版を観に行かなくて済むわ、とホッとしつつ劇場へ足を運んだ。

ストーリー自体はそれほど難解ではなく、ブロードウェイの元売れっ子プロデューサーと会計士が組み、最低の脚本&演出家で絶対ヒットしない作品を作って一儲け企んだところが…という業界内幕モノだ。ただ全編にちりばめられたクスグリはハイレベル。ブラックなものや差別&下ネタもバンバンあって、バカバカしくかつ、ビターなコメディになっていた。こりゃ、字幕でもきっと全部伝わってないわ。

でもそんな欲求不満を吹っ飛ばしてくれるのが、劇中劇となるショーのカッコよさだ。ステージで行ってるものを忠実に映像化したらしいが、小難しい理屈なんかどうでもよくなる華やかで完璧な非日常の世界。That's エンターテインメント!これと比べたら、あるあるネタのピン芸人を集めただけのあの番組によく「エンタ」なんてタイトルをつけられたもんだ、恥ずかしくなるわ。

シカゴ、オペラ座、そしてこの作品。映画はそれぞれとても完成度が高く、英語が分からなくて観れなかった俺の欲求を見事にみたしてくれた。でも同時に「クソぉ!これをナマで観てぇ!」という新たな欲求不満を産み出してしまった。世間はなかなかうまくいかんもんだ。辛いのぅ、横山!