光のウラには必ず影があるんや。

戦後の日本人に勇気を与えた英雄、力道山。プロレスラーというより、歴史の教科書にでてきそうなイメージがある。その半生を事実を元に映画化した作品だが、偉人伝ではない。伝記にありがちな「彼はすごかった・偉かった」ではなく、描かれていたのはヒーローの孤独感、焦燥感だった。

朝鮮人という出自から相撲での成功が叶わなかった力道山が選んだのは、世界の共通言語、プロレス。しかしアメリカから凱旋帰国した彼が背負ったのは、皮肉にも自分を差別した日本人代表として外国人をなぎ倒す役目だった。
瞬く間に成功をおさめたものの、続いて課せられたのは「負けられない」というプレッシャー。全ての国民の夢を受けて、スポットライトを浴び続けなくてはいけないヒーロー。その裏で彼が感じていた「誰にも頼れない」「誰も信じられない」孤独感を知り、つくづく気の毒になった。今だと、イチローなんかもこんな気持ち味わっているんだろうか?

大先輩へのリスペクトを込め、武藤・小橋・秋山ら現役に加え、故・橋本慎也も出演、迫力のある試合を見せてくれていたが、気になったのは技の新しさ。確かに力道山の空手チョップとボディスラムじゃ絵にならんけど、ラリアートにブレーンバスター、メキシコばりの空中戦まで入れるのは、熱演とはいえ時代考証が滅茶苦茶だ。

日本語が最後まで怪しすぎたとはいえ、主演のソル・ギョングの演技は見事だったけど、「シルミド」の時は大杉漣だった顔が、今回はマッチョな鳥越俊太郎に見えて仕方なかった。鳥越 対 草野「史上最強キャスター決定戦」も見てみたい。