
「何で死体の写真を見ちゃいけないんですか?」
映画の中で生徒が先生に聞いたセリフ。あなたは答えられますか?
俺の好きな重松清の原作。主人公の先生は自宅で死にかけた元教師の父親の在宅看護をしている。そのクラスに死体に妙に興味を持ったり、葬儀場に忍び込んだりする生徒が現れて…という話だ。テーマは「死の捉えかた」とでも言えばいいんだろうか?
俺は冒頭の質問に明確に答える自信はない。でも思ったのは「死に興味を持つ前に、まず生きることに意味や興味を持たなくちゃあかんのちゃうか?」ということだ。心配しなくたって人間の死亡率は確実に100パーセント。いろいろ考えたり、調べたって生き残れるわけでないし、誰でもいつかは確実に死ねる。だったら、それまでをまず充実させることを考えるのが先決だろう。
俺はまず質問してきたヤツに「あなたは何のために生きているの?あなたが生きたことで世界のどこが変わったの?」と逆質問してみたい。「自分は必要ないし、自分がいてもいなくても世界は何も変わらない」という逃げ口上以外で明確な答えを聞かせてくれたら、それからは大いに死について考えてもらって構わないと思う。
こんな偉そうなことを書いておきながら、俺自身は俺が質問したいという問題にすら答えられないでいる。だから主人公のオヤジさんが映画の中で身を持って答えを見せてくれたシーンには胸がいっぱいになった。
ただこの映画、唯一の難点をあげるとすれば主役のテリーさん。天才ディレクターとして数々の番組を作られ俺も心から尊敬している人だが、やはりあの目で「普通の人」をやっちゃいけない。天才は天才のままでいてほしい。
(写真は鯛の死体写真)