わかる。…でもどうなんやろ?

鉱山という男だらけの職場で過酷な労働の上にひどいセクハラにあったシングルマザーが、「立ち上がり」女性たちの希望を見出していく物語。実話に基づいており、いい話ではあるんだけど、どうも納得いかないのが辛い部分の描写の多さだ。2時間4分の作品なんだけど、幸せだったのは4分くらいであと2時間は男の俺が見ても辛いシーンばかり。何でカネ払ってこんな苦しい思いせなあかんねん。

制作者は世の中の不満をかかえている女性の皆さんに「こんな辛い思いをしている人もいるんだから、前向きに頑張んなさい」みたいなメッセージを送りたいんだろう。だから辛いシーンが多い方が都合がいいわけだけど、やりすぎると見てるほうは「アタシもしんどいけど、あの人よりはマシだわ」という論点のずれた解釈をしてしまう可能性も出てくる。障害者や差別を取り扱った映画でもありがちだが、「あの人より自分はマシ」というのは無意識とはいえ問題を容認し、楽な状況の自分を慰めている以外の何物でもない。

セクハラの苦しみについては男の俺に完全に理解するのは不可能だと思うが、この作品を見ていて目を覆ったのは「ムラもしくは群れ社会の醜さ」だ。誰でも多少は心当たりがある経験だと思うが、人はしばしば自分の生活を守るためとはいえ、周りの顔色を伺い、所属する集団の意思に無条件で従う。そしてそれに反するはみ出し者には例えモラルに反するとわかっていても容赦しない。一昨年見た「ドッグヴィル」という映画でもあったが、所詮ひとりでは生きていけない人間としては一番堪える、そして一番醜い仕打ちだと思う。

そんなムラ社会で俺がどうやって生きているかって?映画の中でも出てきたけど、ムラの意思なんてのは最初に言った、声のでかいヤツがコントロールするんだからそっちになっちゃえばいいんだよ!…と思ってたら、上司から来た年賀状に「今年も大きな声で頑張ってください」って書いてあった。やばい!バレてるわ。