史上最強の痴話ゲンカ。

仮面ライダーといえば、ウルトラマンと並ぶ我々団塊ジュニア世代の最大のヒーローだった。大人になり、小金を持ったその世代を狙って企画したんだろうが、最近のヒーローものファンにも見せたかったのか「アブハチ取らず」な駄作に仕上がってしまった。

俺たちのライダーはあんなんじゃない。写真のように「暑苦しさ日本一」の兄ちゃんが、なぜか世界征服の第1歩として幼稚園バスをジャックするショッカーと毎週毎週戦いつづけた。相談相手は立花のおやっさんしかいなかったし、戦う怪人はさそり男、トカゲロン、アリキメデス…小林製薬の製品名なみになんの工夫もない。そこにはスマートさのかけらもなかったし、まして恋なんて…

さらにアクションシーンが見てられない。改造人間のわりには戦闘員相手に普通の殺陣やってるし、最大の見せ場ライダーキックも単なる跳び蹴り。プロレス界でいうと長州力の必殺技だったラリアットが、いつのまにか誰でもやる「つなぎ技」になってしまったような寂しさがそこにはあった。

濃く、難しいものは敬遠され、手軽でスマートなものがもてはやされる平成の世の中だ。イケメンを起用してもいいし、恋をするのだって許そう。でも世界征服をたくらむ組織の打倒よりも先に、女取り合って戦うのはやめておこうよ。「国とか世界とかの大義より、個の小さな幸せを優先してしまう」日本人の現状を暗喩しているような気がしたのは考え過ぎだろうか。