
「この記憶をごみ箱に移していいですか?Y/N」
この物語、要約すると「ワイルドな工事現場の兄ちゃんに恋した社長令嬢が結婚して幸せになりかけたけど、若年性健忘症にかかって全てを忘れていく、愛したことも愛されたことも。病気の進行に必死で抵抗する2人だけど・・・」ってな感じだ。
ヒロインは最近の記憶から無差別に、忘れたくないダンナとの思い出さえ、どんどん失っていってしまう。彼女は病気だから仕方ないけど、普通の人間の脳にもおそらく容量ってのがあって、毎日の経験を記録すると同時にいくつかの記憶を失ってるんだと思う。きっと本人の意思には関係なく、自動的に「都合が悪かったり、重要度の低い記憶」から消して行くシステムがあるんだろう。
でも、このプログラムの性能ってのがあまり良くない。「さっき会ったばかりの得意先の偉いさんの名前」は消去されてるくせに「小2の時、学校帰りに小便漏らした記憶」はものすごく鮮明だったりするし、何でだかわからないけど、突然頭の中に「ボーイスカウトでした焼き芋パーティーのシーン」とか「小4で転校していったそれほど親しくなかった友達の顔」が浮かんできたりすることが、俺はある。
だからこの映画を見ながら考えてたのは、記憶を失う時にいちいち冒頭のようなダイアログが出てきて、自分で取捨選択できたらどうなるんだろう?どの記憶を捨てるんだろう?というまるで横道の話だ。
~毎晩、寝る前に自分の記憶一覧を見ながら「これとこれは覚えておかなきゃな」ってクリックすると「容量オーバーです。消去する記憶を選択して下さい」とか反応が返ってきて「小3で初めてスカートめくりした時見たパンツの色」か「水銀の原子記号」のどっちを消すかで悩んだりする。それでもまだ容量が足りなくて「もったいないけど巨人の阿部の出身高校とセッケンの「鹸」ていう漢字は消去してもいいや」って思ったり・・・~
妄想に浸ってしまったが、この作品で人間の記憶の大切さを感じ、愛する人に忘れられる辛さを思い出してしまったので、そんな事も考えちまったわけだ。
映画館はカップルか女性客ばかりで、暗がりからは鼻をすする音が聞こえまくってたけど、そんな女性たちにひとこと言いたい。「あんたら、愛する人のことはいつまでも忘れたくないって泣いてるくせに、その前の男のことはケロっと忘れるやん!それって、矛盾してないか?(なぜか涙)」