ちょっと羨ましくなった。

広島の合併寸前の田舎町に起きた類人猿の目撃騒動。重松清の原作は出版直後に読んでいたから筋はわかってたし、2時間に収めるためのストーリーの編集も正直、イマイチだった。でも見終わってなんかあったかい気分になれた。暑い中、チャリンコを飛ばしてちょっと離れたミニシアターまで来てよかったと思った。

俺には田舎がない。重松作品に出てくるガキよりはちょっと年上だけど、オヤジは団塊世代の転勤族。最寄り駅が地下鉄でなかったことがないのが自慢だけど、マンションにしか住んだことないし、冒険する裏山もイタズラする田畑もなかった。おまけに小学校、中学、高校、大学と進学するたびに実家も移動していたので、中学までの友達はほぼゼロに等しい。
俺は都会が好きだし、別に友達がいないわけではないけど、この映画に出てくる「いい年になってもガキの頃の呼び名のままのおっさん仲間」や「合併で消えそうな町の名前を守るためにするガキっぽい奮闘劇」がとても羨ましく見えた。

大人になると恋人はできても、なかなか本当の友達はできにくいと思う。すぐにできる「知り合い」は何となく利害関係があったりしてどちらかが気を使ってしまうし、ガキの頃のような濃密な時間なんて物理的にありえない。
今はお互い全然違う人生を歩んでいるけど、いまだにあだ名で呼びあえ、くだらない思い出をたくさん共有している地元のツレ。俺がこれから作るのは難しいかもしれんけど、それは宝物なんだって息子にはちゃんと教えておいてやろう。