
やっぱ難しいな・・・。
人気のある舞台の映画化作品はこれまでにもいくつか見ている。日本で言うと「12人の優しい日本人」「笑の大学」などの三谷作品とか本広カントクだと「スペーストラベラーズ」。洋画だと「シカゴ」「オペラ座の怪人」などがある。でもこれまでは舞台版は、あえて見ないでいた。まあ、やっていなかったというのもあるが。
ところが今回初めて舞台→映画という流れで、しかも連チャンで見てみた。
だもんでまず舞台の感想から軽く書く。ヨーロッパ企画の芝居はこれまで何度か見ていたけど、どの作品でも「サークルの延長線上にある学食のノリ」を舞台から消すことができていなくてイマイチ好きになれなかった。でもこの作品はまさにヨーロッパ企画のための芝居。俺が気に入らなかった空気もこの作品でならすんなり受けいれられるし、幾重にも張り巡らされたタイムスリップの伏線が見事で、本広監督が選ぶのもうなずける作品だった。
で、その映画のほうだ。ネタばれというか芝居を見ているので、驚きがないのは仕方ないのだが、それにしても物足りなかったというのが正直なところだ。
芝居を映画化する場合、一番難しくて勝負の分かれ目になるのは舞台では表現しきれない部分をどう見せるのかという点だと思う。「オペラ座の怪人」なんかは観客の想像の中にしか存在しなかったファントムの地下室を具体的に出現させ、ある意味すごく映画化の価値のあった作品だし、三谷作品はそのポイントを避け、舞台をそのまんま中継したようなつくりになっている。
ところがこの作品の「見えなかったポイント」の表現のしょぼかったこと!それをチープな効果音とかで作風に見せるところがさらに卑怯だ。伏線の見せ方も非常にわざとらしいし、映画を見れば見るほど舞台版のすばらしさを感じてしまうというヘンな感覚に襲われた。
演劇関係者と「劇場中継をした時、100の面白さがどのくらい伝わるか」という話をしたことがある。返ってきた答えは「やり方にもよるけど、10とか20くらいですかねぇ・・・」そこでやっている、同じ空気を吸っているというライブ感、舞台のどの部分をみたいかという選択など、カット割をどう工夫しても伝えきれないものがあるという。また、そこにこそ演劇の価値があると思う。
でも、マイナーな存在の演劇が映画化によってたくさんの人に見てもらえる機会が増えるというのはとても素晴らしいことだ。ただ10や20の面白さを映像屋の腕で違う部分に増幅する工夫が必要だとは思うけど・・・。
もしも、俺にタイムマシンを使うチャンスがあったら・・・一昨年の秋に行って、ナベツネに彼の続投を直訴するだろうな。