頑張れ!ウォン・フェイフォン

年のせいもあって、目がチカチカするカット割のアクションしかできないジャッキーと違い、ジェット・リーは常人では考えられない身のこなしができる本物のアクションスターだと思う。

しかし、皮肉にも彼らがハリウッドに持ち込んだワイヤーアクションによって、ポッと出の俳優やムキムキだけがとりえのオッサンでもある程度のアクションはこなせるようになってしまい、本来の実力とはかけ離れた不当な扱いを受けている。ジャッキーは大抵「ちょっと強いうっかり八兵衛」だし、この作品のジェット・リーなんてついにイヌだ!脚本を書いたフランス野郎の黄色人種蔑視がとてもよく現れた設定だと思う。

確かに動きは素早いけど、男前でもないしちっこくて英語はヘタ。でもこの映画でリーは輝いていた。しかも得意のアクションでなくその演技でだ。

子供のときに誘拐され、殺人犬としてのトレーニングしか受けていないためダニーは最初、言葉もほとんど知らないし、感情も理解できない。それが親切な人達に出会い、だんだん人間らしくなっていくという話なのだが、とにかくセリフは少ない。主役なのに始まってから10分くらいセリフないし、やっと喋ったら「Yes」だけ。でもその分何で演技していたか?眼だ。

殺人マシンの時の怒りを帯びた眼、戦い以外の時の生気のない眼、新たな世界への興味を示し始めた眼、新しい家族に向けた愛情たっぷりの眼、そして一人ぼっちの時の捨てられた子犬のような眼。調べてみたら今年で42歳。あの年であんな純粋な眼を持ってる俳優は毛唐にはいるわけがない。

確かに欧米に実質支配された映画界で勝ち上がっていくのは並大抵のことではないと思う。でも彼には「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」で演じたウォン・フェイフォンのように西洋支配の世界から立ち上がり、人々の希望になってほしい。

追記)モーガン・フリーマン、最近出すぎ。お前はハリウッドの岸部一徳か!