
思わぬ「拾いモン」だった!
監督の松尾スズキが「とにかく勢いのある映画にしたかった」というとおり、この作品のウリは「おんどりゃぁ!」と言わんばかりのストレートな勢い。いつの間にか観客はその世界に飲み込まれ、マンガならではの理不尽な設定や、全くリアリティのないキャラクター、多少問題のある演技なんか全然気にならなくなる。そのテクニックは演劇で長年培ったものだけにさすがだ。
主人公の「漫画家」と監督の本職「劇作家」にはいくつか共通点があると思う。「売れないと全然食えないし、売れないのは自分を理解できない世間が悪いと思っているヤツが多い」ということ、そして「自分は表舞台に立つほどルックスが良くないので、他のキャラクターを動かす方の立場を選んだ」ということだ。だから両者がどうしてもダブってしまい、原作モノでありながら、監督本人がやりたいことを作品を使って楽しんでるように見えた。類似職業に携わる身としては羨ましい限り。あんなに監督が主演女優とキスしてる映画は初めて見たが、決してそこだけではない。
最後も演劇にありがちな「主張はわかるけど、しっくりこない結末」ではなく、意識して「くだらなくてもハッピーになれるエンディング」でまとめているあたりはちょっとやるなこの監督、という感じである。
別の映画を見るつもりだったんだけど満席。まっすぐ帰るのがイヤで行ったレイトショーでこのヒット。ドラフト7順目入団だったのにセーブ王&新人王当確の彼みたいな映画だ。
彼がダイエーの三瀬投手だと一発でわからんかった人はクリックして下さい!(映画風呂具ランキング)