歯のホワイトニング「4割男性」 米国では「出世の条件」 「健康メリット」が後押し





芸能人やモデル、若い女性たちから広まった「歯のホワイトニング」が近年、働き盛りの男性にも浸透してきた。新型コロナウィルス禍で必須だったマスクを外す機会が増え、口元への意識も向上。歯が白いと笑顔に自信を持つことができ、堂々とした印象につながるという。取引先や社内からの信頼感を重視するビジネスパーソンたちが、歯科医院の扉をたたいている。

「口元に自信があるだけで、人の雰囲気はずいぶん変わります。笑顔が増え、会話や振る舞いも堂々としてくる。ビジネスシーンでは相手からの信頼につながるはずです」 こう話すのは、都内のデンタルクリニックで院長を務める石井さん(63)。2005年から12年までミス・ユニバース日本代表たちの歯をプロデュースし、歯のホワイトニングを国内に広めた第一人者とされる。 約10年前まで、石井さんのクリニックで歯のホワイトニングをするのは「女性が9割」だったが、近年は男性の割合が増加。コロナ禍を経て、今では「男性が4割くらいに迫っている」という。 神戸市中央区の歯科医院「デュオこうべデンタルケアクリニックPINO」の松村院長(37)は、コロナ禍でリモート会議が定着したことも「大きなきっかけ」とみる。患者からは「パソコン画面に自分の顔がアップで映るのを見て、口元が気になった」との声をよく聞くという。 「白い歯は健康的」というイメージだけでなく、実際に健康上のメリットがあるという研究結果が相次いだことも、普及を後押ししているとみられる。 日本で歯のホワイトニングが行われるようになったのは約20年前とされる。当初は「歯が弱くなるのでは」と疑われたが、近年の研究により、施術後に再石灰化(カルシウムの再沈着)やフッ素の取り込みが促されることが判明するなど、むしろ「歯が強くなり、虫歯予防の効果がある」との考え方が有力になってきたという。 松村院長は「ホワイトニング剤の漂白成分は、もとは歯周病の治療に使われていた。歯を白くする効果があると分かってホワイトニングの施術に転用されたものなので、そもそも安全なんです」と話す。 また「せっかく白くなった歯を守りたい」という意識が働き、食事や生活習慣を見直す人が多いため、間接的にも健康維持のきっかけになるという。 石井さんは「人の印象を決めるのは目よりも口元。自己管理ができる人か、つまり信頼に値する相手か、口元を見れば判断できます」と指摘。「米国ではきれいな歯は『出世の条件』で、ビジネスパーソンの大切な心得です。日本にもそうした考えが定着しつつあるのではないでしょうか」と話す。