JR北海道キハ285系が2月中旬頃に苗穂工場の解体線に移動して、部品の取り外しが始まっているそうです。
(キハ285-901・苗穂工場・2015年4月14日)
キハ285系は函館本線の新型特急車両として開発されました。
キハ285系は曲線で車体を8度傾斜させることで半径600mの曲線区間で本則+50km/hの140km/hで通過することを目指し、しかし振子装置で8度傾斜させると床面の移動量が100mmとなり、乗り心地が悪化してしまいます。そこでハイブリッド振子装置(複合車体傾斜システム)を採用しました。
ハイブリッド振子装置は振子装置で車体を6度まで傾斜させ、残る2度を空気ばねストローク式車体傾斜で補うものです。
この結果8度傾斜時の床面移動量は68mmとなり大幅に乗り心地を改善できる見込みとなりました。ちなみに振子装置の6度傾斜時の床面移動量は75mmあるので、キハ283系よりも乗り心地が向上する事になります。
ハイブリッド振子装置の試験はキハ283系を使用して実施されましたが、開発にはかなりの時間を要していました。
もうひとつの技術はモーターアシストハイブリッド駆動(MAハイブリッド)です。
こちらは従来の液体変速機に代わって、アシストモーター付のアクティブシフト変速機を搭載するというもので、エンジンの駆動力をモーターがアシストすることで高出力化と省燃費化が期待できました。
MAハイブリッドは2007(平成19)年にキハ160 1を改造して現車試験を実施しました。
(キハ160 1・苗穂工場・2012年9月8日)
ハイブリッド振子装置とMAハイブリッドシステムを搭載した新型特急車両、キハ285系の開発は2011(平成23)年4月にスタートしました。そして川崎重工業で試作車3両の製造が始まりました。
ところが2011(平成23)年5月27日に石勝線でキハ283系の脱線火災事故が発生。2013(平成25)年7月6日にはNNキハ183系「北斗」のエンジンが発火するなど、JR北海道で次々と不祥事が発生します。
そのような状況からJR北海道は試作車落成直前の2014(平成26)年9月10日にキハ285系の開発中止を発表しました。この時点では検測車への改造を検討するとしていて、9月26日に落成したキハ285系は苗穂工場に甲種輸送されました。
しかしキハ285系は構造が複雑で、検測車への改造を断念。結局ほとんど走ることなく廃車され、苗穂工場内に留置されていました。
(キハ285-901・苗穂工場・2015年4月14日)
そして解体線に移動したキハ285系。この後の運命を想像すると心が痛みます。