
(ML-500・交通科学博物館・2009年5月8日)
ML-500は超電導リニアの目標最高速度500km/hを達成するための1977(昭和52)年に開発されました。ML-500は純粋な実験車両で客室はなく、車重も10tと軽量でした。
またML-500の試験走行をするために宮崎実験線を建設しました。
宮崎実験線のガイドウェイは逆T字形で建設。逆T字形ガイドウェイでは底面に浮上用コイル、側面に走行用コイルを設置していました。また浮上走行前のタイヤ走行時の案内路が底面に、ガイドレールがガイドウェイの上にあります。
これが車体の浮上および走行に使う超電導磁石です。

(交通科学博物館・2009年5月8日)
L字断面で、こちら側がフレームに取り付ける面です。底面には浮上用超電導磁石、側面裏側に走行用超電導磁石を設置しています。
ところで超電導というのはある特殊な材料を極限まで冷やすと、ある温度で電気抵抗がゼロになるという現象のことです。この現象を利用すると普通では流すことができない大量の電流を流すことが可能となります。
また、電流を流した後コイルをループ状につなぎ替えると電気を供給しなくても電磁石に電流が流れ続けます。
超電導磁石のコイルは液体ヘリウムを使って-269℃に冷却しています。
これは交通科学博物館にあったML-500の内部構造です。

(交通科学博物館・2009年5月8日)
フレームに超電導磁石が4個搭載されていたようです。
このML-500は1979(昭和54)年12月21日に世界最高の517km/hを記録しました。これによって超電導リニア500km/h運転の可能性を示すことができたわけです。
しかし営業運転をするためには解決していかなければならない課題がありました。そのひとつが冷却用液体ヘリウムの再利用です。
ML-500では液体ヘリウムをコイルの冷却に使用すると気化ヘリウムとなり、そのまま大気放出していました。しかし液体ヘリウムは高価だったので、気化ヘリウムを冷却して液体ヘリウムに戻して再利用する車載冷却装置を設置したML-500Rが1980(昭和55)年に開発されて、ML-500は引退しました。
ML-500Rの実車はありませんが、模型がリニア・鉄道館にあります。

右がML-500、左がML-500Rです。RはRefrigerator(冷凍機)の頭文字。車載冷却装置が重いため車重は12.3tとなり、最高速度はML-500よりも落ちましたが技術的には前進しました。
目的を達成したML-500Rはあっという間に引退しました。これは超電導リニアを次の段階に移行するためでした。
次の段階はいよいよ有人走行。そのためにU字形ガイドウェイに改めました。ガイドウェイに側壁に浮上用と走行用コイルを備え、車体の超電導磁石のコイルは浮上用、走行用両方の役目を持つことになり、車体の小型化が可能となりました。実験車両も有人走行が可能なMLU001となり1980(昭和55)年11月に1号車が完成しました。
この結果、逆T字形ガイドウェイの超電導リニアは終止符を打ち、ML-500は交通科学博物館で保存されることになりました。ちなみに世界最高記録517km/hは1997(平成9)年にMLX01が550km/hを記録するまで破られなかったそうです。
そんなML-500ですが、交通科学博物館の閉館後、東京、国立の鉄道総研に運ばれたそうです。
ということで確認しに行ってみました。

(鉄道総研・2016年4月17日)
わかりにくいかも知れませんがMLX01の向こう側にML-500の姿が見えます。あの場所では一般公開以外では見ることが難しそう。それに屋外保管となっているので車体が痛んでいかないか心配です。