
(クモハ475 46・津幡~倶利伽羅・2011年2月8日)
事実上と書いたのは、富士急行の2000形「フジサン特急」の種車が急行形の165系なので、車体としてはまだしばらく存続するわけだからです。

(「フジサン特急」クモロ2201・大月・2013年6月29日)
ですが、いわゆる急行形の車内設備のイメージを残す車両による営業運転は475、457系が最後です。
1957(昭和32)年に登場した国鉄新性能電車は、翌1958(昭和33)年から用途別に発展していきました。このうち急行形電車の元祖となるのが153系です。

(「伊豆」クハ153 540・品川・1981年)
しかし153系の登場当初は80系の後継車という位置づけで実際は準急形電車でした。そのため急行形客車と違い、これは80系同様に都市圏の普通列車への運用を考慮して急行形客車よりも300mm広い1,000mm幅の乗降扉を採用しています。そして扉が大きくなった分の定員減少を最低限とするため、シートピッチは急行形客車よりも10mm狭い1,460mmとなりました。
この車体構造は国鉄急行形電車のスタンダードとなりました。
153系の登場以後、修学旅行用電車というバリエーションを含めて準急形~急行形電車。まず国鉄新性能電車の基本スペックといえるCS12形主制御器と100kW出力のMT46形主電動機を搭載した車両は直流用の153系を基本とし、修学旅行用に700mm幅の乗降扉と2+3列シートを配置した155系、2+2列に改めた159系が製造されました。
また、交直両用として常磐線向けの50Hz仕様の451系と北陸本線向けの60Hz仕様車471系が登場しています。
1963(昭和38)年から定格出力120kWのMT54形主電動機が登場。CS12形主制御器を搭載した平坦線区バージョンと、抑速ブレーキ付きのCS15形主制御器を搭載した山岳線区バージョンが設定されました。
急行形電車については平坦線区バージョンは少数派にとどまり、直流用の163系はサロ163形が7両製造されたのみでした。交直両用の453系、473系の製造両数も少なく、過渡期的存在となってしまいました。
MT54搭載車の主力となったのはCS15形主制御器搭載車。直流用は165系を基本として、修学旅行用の167系と碓氷峠でEF63形電気機関車と協調運転可能なCS15F形主制御器を搭載した169系が製造されました。
交直両用では東北本線向けの50Hz仕様車として455系、北陸本線、九州向けの60Hz仕様車として475系を製造。さらに50/60Hz両用の457系が製造されました。
これら急行形電車でしたが、地方線区では運用の関係で気動車を使うことが多く、それほど運用範囲は広がりませんでした。さらに新幹線の開業や特急の大増発によって急行列車が減少。
153系、155系、159系、167系が相次いで消滅。保存車もありません。165系や169系も急行運用を失いました。165系にはお座敷電車「なのはな」やジョイフルトレイン「パノラマエクスプレスアルプス」に改造された車両があり、後者は富士急行に譲渡されました。また169系もしなの鉄道に譲渡されています。
JRの直流急行形電車はすでに完全消滅。
165系はリニア・鉄道館にクモハ165 108とサロ165 106が保存されているのみです。

(クモハ165 108・リニア・鉄道館・2014年2月21日)

(サロ165 106・リニア・鉄道館。2014年2月21日)
サロ165もあるのでかなり貴重ですが、保存方法があんまりなのが残念。
しなの鉄道に譲渡された169系も引退しましたが、クモハ169 1+モハ168 1+クハ169 27がしなの鉄道の板城駅構内で保存されています。

(クハ169 27・大屋~信濃国分寺・2013年4月7日)
またクモハ169 9も軽井沢駅で保存されました。

(クモハ169 6・西上田~テクノさかき・2013年4月7日)
前照灯がシールドビーム化され、車内はリクライニングシートに交換されていますが、リニア・鉄道館の165系ともども直流急行形電車を今後に残す存在となります。
鉄道博物館にはクハ167のカットボディがありますが、これは完全なレプリカです。

(鉄道博物館・2012年10月31日)
レプリカですが、日本車輌製造が実物の素材を使って製作したもので、完成度は実車同様だったりします。
「パノラマエクスプレスアルプス」車が譲渡された富士急行では部品取り用としてクモハ169 27が富士山の工場に留置されています。

(クモハ169 27・富士山・2006年10月18日)
この車両も2000形の引退とともに消えていくことでしょう。
交直両用急行形電車もほとんどは急行運用を失い、客室端部をロングシートとした近郊形改造を施されて余生を過ごしました。また車体を載せ替えて近郊形電車となった仲間も多数存在しました。
すでにJR東日本車とJR九州車は消滅。残るはJR西日本車だけとなっています。
JR東日本車は3両が鉄道博物館で保存、利用されています。
クモハ455 1は181系、485系とともに往年の上野駅をイメージさせる存在となっています。

(クモハ455 1・鉄道博物館・2007年11月30日)
上野発の急行列車としては東北本線系統の方が格上だったのでしょうか? 個人的には165系がいないのが残念なんですけどね。
またクハ455 2とモハ454 4が休憩施設として利用されています。

(クハ455 2・鉄道博物館・2007年11月11日)
仙台色で、前照灯も改造されていますが、今となっては現存唯一のスタイルです。
そして最後の活躍をするJR西日本の457、475系。

(クモハ475 46・富山・2014年1月26日)
東北本線と同様に北陸本線の主力であり続けた車両ですので、ぜひぜひ保存して欲しいところですね。
そして引退前に何回か北陸に行ければいいなと思っています。