【鉄道基礎知識】鉄道車両の動力(蒸気機関編・その1)「蒸気機関車と蒸気動車」 | はやこま すていしょん!

はやこま すていしょん!

更新頻度は遅めですが、日々の出来事や趣味的なことを書いていこうかなと思っています。若干鉄分は濃い目の予定(笑

鉄道の技術をできるだけ簡単に説明しようという「鉄道基礎知識コーナー」、第2回目以降、しばらくは「動力」をテーマに進めていきます。鉄道車両は車輪を回転させて走行しますが、その車輪を回転させる力が「動力」だと考えるとわかりやすいと思います。ということで、まずは蒸気機関からお話ししましょう。

蒸気機関
簡単に説明すると蒸気機関とは、水を沸騰させて作り出した水蒸気の圧力を使ったエンジンのことです。
この蒸気機関を搭載し、客車や貨車を牽引するのが蒸気機関車です。

(D51 498・水上・2006年11月5日)
車体の大部分を占めている円筒形のボイラーが蒸気を作り出すところです。ボイラーの大部分を占める缶胴には水が入っていて、その缶胴内に多数通された煙管を通過する燃焼ガスの熱エネルギーによって水を沸騰させて、蒸気を得ています。ボイラーの後部内側には火室があり、石炭や重油、木などの燃料を燃やして燃焼ガスを作り出しています。そのため、水や燃料を搭載するスペースが必要となりますが、長距離運転をする機関車では、それらを搭載した炭水車が連結されています。

なお、パンタグラフで集電した電力を使う電気式ボイラーを使った蒸気機関車がスイスに存在したほか、蒸気機関とディーゼル機関を搭載したハイブリッド蒸気機関車(?)もイギリスで試作されたことがあるそうです。
そのほか、あらかじめタンク内に充填した蒸気を使用する無火機関車というものも存在し、火気厳禁エリアなどで活躍していたそうです。

蒸気を使って走行するためには蒸気の圧力を運動エネルギーに変換して車輪を駆動しなければなりません。そのなかでも一番ポピュラーなのが「ピストン駆動式」です。上のD51 498では煙突の真下、動輪の直前下部にピストンがあり、このピストンを蒸気の圧力で往復運動させています。余談ですが動力を伝達する車輪は動輪とも呼ばれていますので、ここでは動輪と呼ぶことにします。

ピストンと動輪ははロッド(連結棒)を通じて動輪と連結されています。このロッドは動輪の中心よりもオフセットして取り付けられ、ピストンの往復運動を回転運動に変換することで、走行することができるのです。このロッドを使った動力伝達方式を「ロッド式」といい、この「ロッド式」が蒸気機関車の主流となっています。

蒸気機関車以外にも、蒸気機関を搭載して自力で走行する客車=蒸気動車も存在していました。

(ホジ6401・リニア・鉄道館・2011年3月)
見た目はかなり違いますが、車端部に小さなボイラーを搭載し、台車部分にピストンとロッドが配置されています。

「ロッド式」以外の動力伝達方式としては、回転運動に変換後、歯車を介して動輪に動力を伝達する「歯車式」、チェーン駆動の「チェーン式」、動輪ごとに蒸気機関を搭載して動輪を直接駆動する「独立駆動式」、そしてロッド駆動する動輪と走行用の動輪を接触させて、その摩擦力で走行する「摩擦式」がありました。

また「ピストン式」以外の蒸気機関の方式もありました。「タービン式」は蒸気の圧力でタービンを回し、そのタービンの回転軸の回転エネルギーを車輪に伝達するものです。また蒸気の圧力でタービン発電機や蒸気発電機を駆動させ、発電した電力を使ってモーターを駆動する「発電式」というものもありました。「発電式」の中には原子力でタービンを回す方式も計画されていたとか。実用化されなくて良かったですね。

日本では1975(昭和50)年の国鉄蒸気機関車完全引退後、現在の復活運転に至っていると思われていますが、実は国鉄形蒸気機関車でただ1両一度も現役を退いていない機関車があります。
それが大井川鐵道を走るC11 227です。

(C11 227・新金谷・2010年3月15日)
大井川鐵道は本格的なSL運転を実施するために1975(昭和50)年春から準備を進めました。そして北海道の標津線で使用された後1975(昭和50)年6月25日に除籍されたC11 227を譲り受け、11月22日に大井川鐵道に入線。そして1976(昭和51)年7月9日から運転を開始しました。たしかに除籍から大井川鐵道入線、運転開始まではラグはありますが、いわゆる静態保存をされたことがないという点は特筆すべきだと思いますし、現在の復活蒸気への足がかりになったという点でも重要な機関車だと思います。