
(「宇和海」2001・伊予吉田~高光・2014年5月23日)
遠心力を利用して車体を系刺させる自然振り子車両は国鉄381系で前例がありました。しかし381系は車体傾斜から復元までが遠心力に依存するため、カーブに入ってから車体の傾斜が始まる振り子遅れや、直線に戻っても車体が安定しない揺れ戻しという問題がありました。
そこで、台車に振り子シリンダーを装備して、カーブに入る手前から車体を予め傾けておき、直線に入る前に徐々に車体の傾斜を復元させるようにしたのが制御付き自然振り子車です。この動作を確実に行なうために、車両には線路データをインストールした振り子制御装置を搭載し、緻密なプログラムによって車体の傾斜を制御しています。この制御付き自然振り子車の実験は国鉄時代から381系を使って行なわれてきましたが、TSEが登場するまで実用化には至っていませんでした。
加えて気動車の場合、エンジンの回転力が車体傾斜に影響を及ぼすと言われていました。そこで、互いに逆回転するエンジンを2基搭載することで回転力を打ち消すという発想が生まれました。
こうして制御付き自然振り子を搭載した気動車というまったく新しいコンセプトで1989年に登場したのがTSEなのです。
「TSE」とはTrance Shikoku Experimental(四国横断実験)の頭文字です。これは高速バスに対抗するためにスピードアップが急務だった土讃本線向けに開発されたことに由来します。そして数々の新技術を盛り込んだ試作車だったということもあり、もし実用化に失敗しても観光列車として使うことができるように、大型モニタやソファ席を装備して登場しました。
結果から言えば、制御付き自然振り子車の実用化は成功。以後JR各社に制御付き自然振り子車が登場しました。
現在、TSEは松山運転所に配属され、松山~宇和島間の「宇和海」に使用されています。基本的に運用は固定され、4往復に充当されているようです。
まず「宇和海1号」で松山から宇和島へ向けて出発。そして「宇和海4号」で松山に戻ってきます。

(「宇和海」2101・市坪~北伊予・2014年5月23日)
2101は貫通構造でしたが、現在は扉は塞がれています。
TSEは松山到着後、しばらく松山運転所で整備され、午後の「宇和海15号」で宇和島に向かいます。

(「宇和海」2001・伊予吉田~高光・2014年5月23日)
2000形は量産車ではグリーン車となりますが、TSEでは普通車。そして愛称表示幕も備わっていません。
宇和島からは「宇和海18号」で折り返しです。

(「宇和海」2101・伊予吉田~高光・2014年5月23日)
そして「宇和海21号」で再び宇和島に戻ってきます。

(「宇和海」2001・伊予吉田~高光・2014年5月23日)
このあと「宇和海24号」「宇和海27号」「宇和海30号」に使用されて、松山運転所に入区します。
さて、JR四国は新型電車8600系を登場させました。製造の目的は老朽化した2000系の取替えとされています。となると現在2000系を使用している「しおかぜ」「いしずち」を置き換えることになると思われますが、捻出された2000系は転配されることでしょうから、そうなるとTSEが廃車候補となる可能性がありますね。
TSEに限らずそう遠くない将来、JR四国の特急形車両には変化があると思いますので、今後の動向には注目です。

(「宇和海」2001・伊予吉田~高光・2014年5月23日)
TSEは、もし廃車になっても保存して欲しいな。