薄幸の電車E331系 | はやこま すていしょん!

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更新頻度は遅めですが、日々の出来事や趣味的なことを書いていこうかなと思っています。若干鉄分は濃い目の予定(笑

3月25日にJR東日本E331系が京葉車両センターから長野総合車両センターへ向けて配給輸送された様です。

(クハE331-1・潮見・2009年2月21日)
E331系は次世代通勤形電車の量産先行車として、2006年3月に製造されましたが2011年に運用を離脱。長期間留置された後、今回の配給輸送となりました。おそらく廃車されると思われますが、製造からわずか8年という短命な車両となりました。

なぜE331系が短命に終わったのかはE331系の構造を見るとわかってきます。
最大の特徴は連接構造を採用していること。

車体間に台車を配置する連接構造は、急曲線の通過に有利なため、主に路面電車に普及しました。しかし鉄道線用の車両では採用例がそれほど多くはありません。しかもその多くが2車体3台車や3車体4台車といった短編成がほとんどでした。
日本での長編成連接車の採用例は小田急ぐらいです。
3000形SE車の登場時は8車体9台車でしたが、その後登場した3100形NSE車、7000形LSE車、10000形HiSE車は11車体12台車となっています。
そして50000形VSE車は10車体11台車となりましたが、その分車体長が伸びていますので、編成長はLSE車とほぼ同じです。

連接式の最大の欠点は車両の切り離しに手間がかかり、整備性が悪いという点にあります。小田急では検査時に編成を分割していますが、台車がない側の車体には仮台車を履かせています。頻繁に切り離す必要が少ない短編成が多い理由もこの辺にあります。
同様の理由で国鉄では試作車の591系やキハ391系で連接式を使用した程度。そしてJR東日本が高速試験電車952形「STAR21」とE993系「ACトレイン」で5車体6台車を採用した程度に留まっています。

E331系は14両編成で登場しました。これは小田急を超える長編成ですが、14車体15台車ではなく14車体16台車となっています。つまり、7号車と8号車はボギー台車とし、7車体8台車に分割できる構造として、検査時の利便性を向上させたものだと言えるでしょう。

それほど採用に消極的だったJR東日本が連接式を採用した理由は、輸送力増強のための客室面積の拡大にありました。
JRの車両限界は全幅3,000mmですが、カーブ区間では台車の外側のオーバーハングや、台車間の車体が建築限界に抵触しないようにする必要があるため、例えば全長20,000mmであるE231系の全幅は2,950mmに抑えられています。
全幅を広げるためにはオーバーハングをなくし、台車中心間距離を短くすればいいわけで、E331系は連接式とすることと、車体を13,400mmと短くしたことで、全幅を2,985mmに広げることができました。

(モハE331-4・海浜幕張。2009年2月21日)
なおボギー台車付の車両の全長は16,500mmです。

(クハE330-1・海浜幕張・2009年2月21日)

(サハE330-1・海浜幕張・2009年2月21日)
車体長が短くなった分両数を増やして14両編成としました。
ともあれワイドボディ化によってE331系の編成定員は1,566名となったわけですが、実はE233系10両編成の1,564名と2名しか違いません。これではわざわざ連接式にするメリットはありませんね。
E331系は永久磁石式同期電動機を搭載し、駆動方式はダイレクトドライブモーター(DDM)方式を採用しています。
DDMは間に小歯車や大歯車を介さないため、フリクションロスが少なく、またメンテナンスコストの低減が図れるなどのメリットがありますが、車輪の回転数とモーターの回転数が完全に一致するために回転数制御の精度を高くする必要があります。
永久磁石同期電動機は誘導電動機よりも高効率ですが、JR東日本ではFASTECH360も含めて試験的に採用している程度。実用化されたのは東京メトロ02系リニューアル編成と16000系となっています。
この頃のJR東日本はとにかく信頼性の向上に努めていて、E233系は伝送系の二重系統化や、予備パンタグラフを搭載しています。このような時期に新規のシステムを導入するのは得策ではないと言えます
結局E331系は連接車にするメリットもなく、新システムを採用するリスクを避ける意味でもDDMや永久磁石同期電動機を採用することを控えた結果量産されなかったのかもしれませんね。もっともはじめから量産する気はなかったのかも知れませんが。