中空軸平行カルダン駆動 | はやこま すていしょん!

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更新頻度は遅めですが、日々の出来事や趣味的なことを書いていこうかなと思っています。若干鉄分は濃い目の予定(笑

国鉄新性能電車のパイオニアである101系以来、VVVFインバータ車が登場するまで定番だった中空軸平行カルダン駆動。
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(1003・熊谷・2013年1月2日)
101系は秩父鉄道1000系として最後の活躍をしていますね。

さて、この中空軸平行カルダン駆動はカルダン駆動方式のひとつです。カルダン駆動はモーターを台車枠に架装した構造となっています。台車枠と車軸に跨がるようにモーターを架装する吊り掛け駆動に対してカルダン駆動は車軸にモーターの重さがかからないので、車輪部分の重量(バネ下重量)が軽くなり、線路のうねりに対する車輪の追従性が向上。さらに線路への衝撃も緩和されるため、高速運転に適しています。
また車輪からの振動がモーターへ伝わらないので、モーターを頑丈にする必要がなくなり、軽量化することも可能です。

ところで、車輪は線路のうねりに応じて変位します。これに対してモーターは台車枠に固定されているため、モーターと車軸間の変位を吸収する機構が必要となります。それが継手で、カルダン駆動の要とも言えます。ちなみに車軸にモーターが乗っかる吊り掛け駆動でも車輪の変位を吸収するため、歯車間の遊びを大きくしています。これが吊り掛け駆動独特のうなり音となります。

継手原形はイタリアの数学者ジェロラモ・カルダーノが考案した自在継手「カルダンジョイント」。いわゆるユニバーサルジョイントです。そしてモーターをレール方向に搭載し、カルダンジョイントと傘歯車を使用して車軸に伝達したのが直角カルダン駆動方式で、初期の私鉄車に採用されたほか、相模鉄道では長らく直角カルダン駆動車が主力でした。
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(2010年6月18日)
これは元東急5000系台車ですが、日本では整備性や重量面の問題であまり普及しませんでした。

平行カルダン駆動は吊り掛け駆動と同じく枕木方向にモーターを架装する方式ですが、モーターと継ぎ手、歯車を車輪間に置くため、1,067mmの狭軌ではモーターのサイズに制約が出てきます。
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(鉄道博物館・2009年5月13日)
そこで、継手を極力薄くして、モーターを極力大きくするための駆動方式が中空軸平行カルダン駆動。原形はスイスのBBCディスクドライブで、日本では東洋電機製造が開発しました。
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(東京総合車両センター・2009年8月22日)
この駆動方式の特徴はモーターの出力軸が歯車と反対側についていること。そしてモーターの回転軸が中空構造になっていることです。中空軸平行カルダン駆動の中空軸という言葉はここからきています。

中空軸の中には両端にたわみ板を取り付けたネジリ棒が通されています。これがたわみ板継手です。
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(東京総合車両センター・2009年8月22日)
このネジリ棒の一端はモーターの出力軸に取り付けられ、もう一端は小歯車と連結されます。

モーターを外から見るとたわみ板はこんな風に見えます。
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(下関総合車両所・2009年11月7日)

そして小歯車側はこんな感じ。
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(富士吉田・2010年1月26日)
国鉄新性能電車を象徴する中空軸平行カルダン駆動ですが、標準の新幹線ではサイズ的に余裕があるため、WN継手を採用していました。そして現在のVVVFインバータ車では小型の三相交流誘導モーターを使用するため、在来線でもWN継手やTD継手を使用するようになりました。

しかし、中空軸平行カルダン駆動の存在がなければ新性能電車は語れなかったと思います。