
(「いしかり」クハ780-901・白石・1980年7月)
この781系登場前に、交流専用特急形電車が計画されました。これは北海道電化のパイオニア711系の走行システムと485系に準じた車体を組み合わせたような車両でしたが、主変圧器の絶縁油として使用していたPCBが公害防止の観点から製造禁止となり、代替品の確保などが急務となり計画は頓挫。
PCB対策済み主変圧器の開発が終了していた485系をベースに徹底的に酷寒地対策を施した485系1500番代を暫定的に投入し、その間に781系の設計・開発を行ないました。
車体は485系をベースとしていますが、車体には雪切り室を設置。そして床下に主電動機冷却用風洞を設置したため床面高さは65mm高くなり、側窓の天地寸法も小さくなっています。乗降扉は700mm幅の引戸で、全車札幌方に設置。凍結対策のためドアレールのヒーターを強化しています。
711系の1M方式がベースですが、485系1500番代で好評だった発電ブレーキを搭載。冬季の接地事故対策のため、発電ブレーキ用抵抗器が屋上に搭載されました。M車への搭載機器が増え、重量が増加したため、パンタグラフ、主変圧器、主整流器はクハ780とサハ780に搭載し、電動車に電力を供給するM-TAユニットが採用されました。

(クハ780-901・札幌運転所・1980年8月)
先頭部は485系1500番代の4灯ヘッドライトを踏襲しましたが、着雪防止の観点から丸みを帯びた形状となり、腰部の投下類は外ばめ式となっています。また警戒色の意味を込めて赤帯を前面に配したのも特徴的です。故障が多発した485系1500番代の影響か、先頭車は自動連結器を装備していました。
走行システムは711系ベースとしたサイリスタ連続位相制御。直流電車のシステムを利用する交直両用電車では交流20,000Vを1,500Vまで降圧させ、端子電圧375VのMT54主電動機を駆動しますが、直流区間を考慮する必要がない交流専用電車の781系では2,000V=主電動機端子電圧500V程度で使用できるため、MT54E主電動機の出力も150kWまで高められ、弱め界磁制御も不要となっています。
なお量産先行試作車900番代は換気用に内開き式の非常窓を備えていましたが、これは量産車では不採用。900番代も量産化改造時に廃止されています。ボルスタアンカの高さも異なっていましたがこれも量産化改造で統一。しかし愛称表示幕、行き先方向幕、乗降扉窓のHゴムは、量産車の金属押さえに変更されることなくそのままでした。
781系900番代は1978年11月3日に落成。入念な試運転の後1979年3月19日から485系1500番代と共通運用で「いしかり」に充当されました。
1980年6月から量産車が3編成投入されて「いしかり」は781系に統一。

(「いしかり」クモハ781-1・白石・1980年6月)
さらに1980年10月のダイヤ改正からの千歳線、室蘭本線が電化に備え、781系量産車7編成と900番代の合計8編成が出揃いました。

(クモハ781-2・札幌運転所・1980年8月)
このダイヤ改正で「いしかり」は発展的解消と遂げて「ライラック」となりました。残念ながらこの8月で引っ越ししたので「ライラック」の黎明期は知りません。
でも試作車の試運転から付き合った781系なので愛着は人一倍ありました。
次に781系と会ったのはJR北海道となった1989年のこと。
781系と再会を果たすまでの9年間の間に、781系には様々な変化が生じました。
1985年には運転台屋上にスタビライザーが搭載されています。

(南千歳・2006年7月16日)
冬季の運転では最後尾に雪が付着し、折り返しの際に雪を除去するのに時間がかかるため、ヒーターを内蔵した風洞を屋上に取り付けて走行風を温めて運転台窓に吹き付ける仕組みになっています。

(札幌運転所・2007年5月27日)
これによって短時間の折り返しを維持できるようになりました。
国鉄時代末期の1986年3月3日、千歳空港~札幌~旭川間に「ホワイトアロー」の運転を開始。同時に781系の120km/h運転を開始しました。

(「ホワイトアロー」クモハ781・札幌・1989年8月)
「ホワイトアロー」は札幌~旭川間をノンストップとした速達列車として設定。781系は所要本数が増えましたが、6両編成2本を4両編成3本に短編成化して対応。中間車に運転台を取り付けたクモハ781形100番代とクハ780形100番代が誕生しました。そして同年11月1日のダイヤ改正で全編成4両化。4両編成12本体制に改められています。

(「ライラック」クモハ781-103・札幌・1989年8月)
4両に短縮された781系でしたが、多客期は2編成連結した8両運転も実施されました。
それに伴って連結器を密着式自動連結器から密着連結器に交換されています。

(「ライラック」クハ780-2・旭川・1989年8月)
1990年9月に785系が登場。781系「ホワイトアロー」に代わり「スーパーホワイトアロー」として130km/h運転を開始。名実共にエースとなった785系とともに781系は「ライラック」専用として活躍。
1992年7月1日新千歳空港が開港し、JR千歳線南千歳(旧千歳空港)~新千歳空港が開業しました。同時に空港アクセス快速「エアポート」の運転が始まりましたが、1時間あたり4本のうち、1本に781系が使用されました。

(「エアポート」クモハ781・札幌・1994年2月8日)
781系「エアポート」は札幌から「ライラック」旭川行きとして直通運転する運用です。

(「ライラック」クハ780・白石~厚別・2001年8月12日)
785系登場以後は編成に余裕があったのか多客期の増結は中間車2両の6両編成となっています。
また、室蘭本線系統の特急は分離されて「すずらん」となっています。

(「すずらん」クモハ781-901・苫小牧・2004年5月10日)
「エアポート」の運転が開始された1992年以降、乗降時間短縮を図るためにクハ780形とサハ780形に扉増設工事を実施。翌1993年には「ライラック/エアポート」編成のモハ781形も扉が増設されました。また扉増設と同時期にカラーリングもキハ183系ラベンダーカラーに準じたものに変更されています。
2000年から721系「エアポート」に指定席車Uシート車を連結するのに伴い、781系「ライラック/エアポート」編成用のクモハ781-1~6もUシート車に改装されました。また冬季の飛び石による窓ガラス破損防止のため、窓の外側にポリカーボネートを取り付ける工事も実施しています。

(「ライラック」クモハ781-2・旭川・2007年5月27日)
2002年3月16日のダイヤ改正で「エアポート」の最高速度が130km/hに引き上げられることになったため、781系「ライラック/エアポート」は785系「スーパーホワイトアロー/エアポート」に置き換えられ、781系は「エアポート」から撤退。とはいえ、「ライラック」「すずらん」で引き続き使用されていました。そして晩年にはびっくりするような編成も登場しました。