
(クハ711-32・白石~厚別・1989年8月)
711系はクハ711+モハ711+クハ711の3両編成を基本として、3、6、9両編成を組んでいました。国鉄時代末期以降は9両編成は消滅していますが、現在も6両編成の運用は残っています。
第1次量産車は1968年の小樽~滝川電化にあわせて、3両編成8本と、試作車増結用のモハ711-9の25両が製造されました。

(クハ711・白石~厚別・1978年)
この当時はまだ室蘭本線や夕張線、歌志内線など支線に直通する気動車列車も多く、またED76形500番代牽引の客車列車も多数運転されていました。そのため711系は1M2Tで起動加速度が1.1km/h/sと遅かったもののダイヤ構成上ではまったく問題なかったようです。またサイリスタ連続位相制御に加えて発電ブレーキを備えていなかったため主抵抗器が存在せず、その結果主抵抗器冷却用ブロアが存在しなかったこと、主電動機の冷却は雪切り室を経由した外気を送風する他力通風式としたため、主電動機の冷却ファンの音がしないなど、非常に静かな電車でした。
特に減速時は空気ブレーキのみを使用するため、新性能電車とは思えない静かさでした。
711系はもともと急行への使用を考慮していて、1968年には札幌~滝川間の「かむい」1往復に711系が投入されています。残り5往復は旭川行きの気動車でした。

(「かむい」クハ711-10・白石・1980年7月)
1969年の旭川電化では「かむい」が9往復に増発されましたがそのうち8往復が711系となりました。
1971年には「かむい」1往復を札幌~旭川間ノンストップの「さちかぜ」に変更。同区間を1時間36分、表定速度85.5km/hで運転。これが函館本線速達列車伝説のパイオニアでありL特急「いしかり」の試金石だと言われています。
1972年には「かむい」は10往復にまで成長しましたが、1975年に485系1500番代「いしかり」が設定されると「さちかぜ」は廃止され「かむい」は電車6往復、気動車1往復に削減されました。
しかし485系1500番代は酷寒地対策が十分ではなく冬季のトラブルが頻発。その結果2時間ヘッドを4時間ヘッドにするという驚愕の間引き運転を実施せざるを得なくなりました。その裏で711系は普通に運転されていたというのは紛れもない事実です。
近郊形電車の急行使用は遜色急行とも言われますが、711系に関しては遜色どころか看板急行だったと言えます。
そんな「かむい」は1986年まで運転されていました。
さて、話は戻って。1969年の旭川電化に併せて2次車10編成が製造されました。

(クハ711-28・札幌・1980年7月)
モハ711は直並列制御に対応したCS38(1次車はCS35)に変更されたため50番代となりました。クハ711は循環式汚物処理装置の準備工事をしましたが0番代のまま17~36まで製造されています。
なお1次車、2次車のクハ711は両渡り構造で方向転換可能です。
1980年10月には室蘭本線と千歳線、室蘭~白石間が電化されることになり、711系3次車が登場しました。この3次車はかなり仕様変更されたため100番代に区分されています。

(クハ711-116・札幌運転所・1980年7月)
100番代は主制御器の水銀を廃止してCS48に変更。トイレは1両に変更されたためトイレ付はクハ711形200番代とされ旭川・室蘭方に連結。小樽方のクハ711形100番代はトイレなしとされました。その結果クハ711は片渡り構造となっています。
また雨樋縦管を車体外付けに変更し、側面に行先方向幕を設置したのも外観的特徴となっています。
100番代は3両編成17本に加えて、モハ711-9と組み合わせるクハ711-118、218、そして試作車を3両編成化するためのクハ711-119、120が製造されました。これによって711系は全車1M2Tの3両編成に統一されています。
この711系100番代の運用開始を待たずに引っ越ししたのですが、大学時代の1989年に渡道する機会を得て、711系と再会しました。
国鉄時代末期から全国的に電車を3両編成と単編成化して高頻度運転し「待たずに乗れる」コンセプトを打ち出しましたが、札幌圏も例外ではなく「くるくる電車ポプラ号」という高頻度運転列車を打ち出しました。ただし711系はもともと3両編成だったため、先頭車化改造などは発生していません。

(クハ711-29・札幌・1989年8月)
ただし塗色は変更され、それは現在にも続いています。
このころは711系900番代も健在でした。

(クハ711-902・札幌・1989年8月)
S902編成のクハ711-902、独特のベンチレーターもそのまま残っていました。
S901編成とも再会できました。

(クハ711-901・札幌・1989年8月)
いかにも試作車然とした2段窓を見ると嬉しくなりますね。
S901編成は小樽でも再会しています。

(「マリンライナー」クハ711-901・小樽・1989年8月)
711系は「エアポート」や「マリンライナー」などの快速にも使用されていました。
この頃運転されていた「SLニセコ号」牽引のC62 3との顔合わせもありました。

(クハ711-209・小樽・1989年8月)
しかし1988年から721系が登場しており、このあと711系の活躍の場は縮小していくことになります。