【国鉄形電車の思い出】Part64 北海道専用の711系は初めて尽くし | はやこま すていしょん!

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更新頻度は遅めですが、日々の出来事や趣味的なことを書いていこうかなと思っています。若干鉄分は濃い目の予定(笑

国鉄の電化の波はついに北海道に到達。1968年に函館本線小樽~滝川間が交流20,000V50Hzで電化開業しました。それに先だって1967年に国鉄初の交流専用近郊形電車711系が登場しました。
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(クハ711-210・砂川・2010年9月12日)
711系は国鉄初の北海道用酷寒地仕様電車ということで、客室内保温のため近郊形電車ながら片開き2扉デッキ付き構造を採用しているため、側面デザインは急行形に酷似しています。
とはいえ近郊形電車なので車内はデッキ付近をロングシートとしたセミクロスシート。
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(札幌・2010年5月5日)
ただし、当初から急行運用を考慮していたようでボックスシートは1,470mmピッチとなっています。

側窓は北海道仕様標準の小型二重窓を採用。
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(札幌・2010年5月5日)
前面デザインも新湘南形高運転台のスタイルを基本としていますが、前照灯はシールドビームを採用し、タイフォンは下部に設置されています。また運転台窓、貫通扉、種別表示幕の位置が50mm高くなっています。

50mm高くなった理由は主電動機冷却風を通す風洞を床下に配置したからです。
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(札幌・2010年5月5日)
この冷却風は車体側面より取り入れて雪切り室で雪を分離させて送風します。これによって雪による主電動機のフラッシュオーバー事故を防いでいます。
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(札幌・2010年5月5日)
新製当時のパンタグラフは下枠交差式のPS102Bを搭載していましたが、現在はシングルアーム式を搭載しています。
主制御器は雪によるトラブルを防ぐために接触部品がないサイリスタ連続位相制御を初めて採用しました。交流専用車では主電動機を制御する電圧変化を変圧器で行なうことが可能なのですが、711系では変圧器の2次巻コイルからの出力を半導体(サイリスタ)によって無接点連続制御します。
サイリスタ連続位相制御は粘着効率が高く、MT54A/MT54E形主電動機の端子印加電圧を500Vに高め、定格出力を150kWにパワーアップしているため、1M方式を採用して1M2T編成を組んでいます。主電動機は永久直列制御(2次車以降は直並列制御に対応)、弱め界磁制御もしないのが特徴です。
1M2T編成ということもあり起動加速度は1.1km/h/sと非常に遅く、また接地事故対策で主抵抗器を廃止するために発電ブレーキも省略しています。
これらの特徴によって711系はかなり独特な走りをします。

台車はMT54系をベースとしたインダイレクトマウント台車DT38を電動車に装着。
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(苗穂工場・2012年9月8日)
基礎ブレーキは踏面両抱き式を採用しています。

付随台車もTR69をベースとしたTR208を装着。
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(苗穂工場・2012年9月8日)
基礎ブレーキはディスクブレーキを採用。
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(苗穂工場・2012年9月8日)
北海道では冬季の氷雪で踏面が荒れる問題があるため、ディスクブレーキの採用例はキハ80系、711系、781系、E26系(JR東日本)と少ないです。

軸箱支持装置は国鉄初の円筒案内式、密閉形円錐コロ軸受を採用。
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(苗穂工場・2012年9月8日)
雪の巻き込みを防ぐために軸バネはゴムのブーツを履かせています。
厳重な酷寒地対策のお陰で711系は大きなトラブルを起こすことなく冬季の運転を継続しました。

札幌圏の電車化に貢献した711系。
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(クハ711-107・札幌運転所・2007年5月27日)
札幌に住んでいた自分にとっても思い出深い形式です。