
(「はくつる」クハネ583-12・日暮里・1982年10月)
581、583系は交直両用で、60Hz仕様の581系が1967年に登場し、翌1968年に50/60Hz仕様の583系が登場しています。そのため60Hz仕様車は存在しません。
走行システムは当時の国鉄新性能電車の標準的なもので、ノッチ戻し、抑速発電ブレーキ付のCS15主制御器とMT54主電動機を搭載。

(野辺地・2009年12月5日)
駆動方式は中空軸平行カルダン駆動で、ブレーキ方式は発電ブレーキ併用電磁直通空気ブレーキです。
台車も特急、急行形用として標準的なDT32系台車を装着しましたが、寝台設備を備えて車重が増加したため、台車枠の板厚を増やしています。
DT32D

(野辺地・2009年12月5日)
TR69D

(野辺地・2009年12月5日)
また空気バネをベローズ式からダイヤフラム式に変更しました。
昼夜兼行形の581、583系。夜行列車として使用する際は3段式B寝台車なるため、車体断面は車両限界一杯のサイズとなっています。

(モハネ583-12・野辺地・2009年12月5日)
車体側面には中段と上段寝台用の小窓が設置されています。屋上には新設計のAU15分散クーラーを搭載しています。
581系及び583系初期車の先頭車はクハネ581。

(クハネ581-33・吹田総合車両所・2012年10月27日)
分割併合を考慮して、貫通扉付きの先頭部デザインが初めて登場。以後183系や485、489系に影響を与えました。
運転台背後には150kVA容量の電動発電機(MG)と2,000L/minの電動空気圧縮機(CP)を搭載した機器室を備えています。
1970年に登場したクハネ583はMGの容量を150kVAに増強すると共に、定員を増やすためMGとCPを床下配置としました。

(クハネ583-5・野辺地・2009年12月5日)
昼行特急として使用する際は通常の座席特急として使用。

(2009年4月8日)
座席は1,970mmピッチのボックスシートとなります。
夜間はプルマンタイプの3段式B寝台となり、寝台特急として使用することが可能な構造となっています。

(2009年4月8日)
この寝台のギミックですが、実はかなり凝ったものとなっています。
下段寝台はプルマン式寝台そのもの。すなわち、ボックスシートの座布団と背もたれをスライドさせると幅1,000mmの寝台ができあがります。


(九州鉄道記念館・2009年2月19日)
中段寝台は窓の上にヒンジがついた跳ね上げ式で。昼行使用時は荷棚の奥に跳ね上げ格納されます。

(2009年4月8日)
中段寝台のセット解体時は、荷棚を通路寄りに跳ね上げて、アーム間に寝台を通す構造になっています。

(2009年4月8日)
中段寝台は側窓を避ける部分が必要なため700mm幅となっています。
この部分があるため、実は下段寝台の窓側には頭上空間があるのですが、意外と知られていませんね。

(2009年4月8日)
そんな側窓ですが、製造当初はベネシャンブラインドを採用していました。

(九州鉄道記念館・2009年2月19日)
現在はカーテンに交換されていますが九州鉄道記念館で保存されているクハネ581-8で再現して保存されています。
上段寝台は荷棚の上にセットする構造になっています。

(2009年4月8日)
寝台幅は700mm。ちなみにB寝台で700mm幅を最初に採用したのは581系です。
ところで581、583系にはパンタグラフ搭載車があり、この部分の屋根は低くなっています。

(モハネ582-12・野辺地・2009年12月5日)
当然ながら天井の高さも低くなっています。

(2009年4月8日)
この部分には上段寝台は設定されず、下段と中段のみとなっていました。

(2009年4月8日)
そのため、B寝台ながら頭上空間のゆとりがあり、この寝台を指名買いしていた人も多かったようです。
上段寝台がないため、荷棚は中段の舟にヒンジで連結。

(2009年4月8日)
寝台セット時はこの用に中段寝台の下に荷棚が張り付くような形となります。

(2009年4月8日)
581、583系製造当初はA寝台車は用意されず、グリーン座席車が連結されていました。

(2009年4月8日)
座席は標準的なリクライニングシート。

(2009年4月8日)
これはA寝台もプルマン式なので、昼間に座席として使用した場合、普通車との設備差がなくなってしまうからで、グリーン車は昼行使用を意識したものとなっていました。
583系は急行「きたぐに」に転用された際にサハネ581を改造したA寝台車サロネ581を登場させています。
下段寝台の幅はB寝台と変わりませんが、2段式となったため充分な頭上空間が確保されています。

(2009年4月8日)
上段寝台も1,000mm幅となりました。

(2009年4月8日)
車両基地の滞伯時間を短くすることを目的とした昼夜兼行形の581、583系でしたが、実際には寝台のセット解体に要する時間が長かったこともあり、必ずしも効率的ではなかったようです。
さらにボックスシートが1980年代に鉄道雑誌で「急行並みの設備」と酷評されました。

(2009年4月8日)
シートピッチも背もたれの傾斜も充分ゆとりがありましたが、折しも簡易リクライニングシートが導入され始めた時代だったので比較されてしまったようです。
寝台は24系25形で2段式B寝台が採用されてからは「頭上空間がない居住性の低いB寝台」と酷評され、寝台特急からの撤退を余儀なくされる要因となりました。
その結果車齢が若いにも関わらず第一線から退いてまさかの近郊形格下げ改造が実施されることになるのですが、自分が出会った頃はまだ第一線にいました。次回はそんな581、583系の思い出話をします。