403系は水戸線電化準備用の50Hz仕様車、423系は鹿児島本線熊本電化用の60Hz仕様車という名目で新製していますが、それぞれ常磐線用401系、鹿児島本線用421系のパワーアップ版です。

(クハ401-74・荒川沖~土浦・2004年9月19日)
111系のパワーアップ版である113系同様に、403系、423系も中間電動車のみが製造され、先頭車は401系、421系の続番として製造されています。ちなみに403系と同時期に製造されたのはクハ401-51~90。423系と同期時期に製造されたのはクハ421-41~60、71~106です。ここでは便宜上このクハの車番ベースでお話ししますが、そんなわけですので403系、423系だという確固たる認識で両形式を見たことはありません。
423系に関しては該当する先頭車を撮影していませんが、ひょっとしたら1984年に出会ったいたかも知れません。その後423系は1996~2001年に廃車されています。
403系は常磐線で見る機会がなんどかありました。奇しくも上の写真と同じクハ401-74の原色時代の姿です。モノクロですが。

(クハ401-74・我孫子・1983年)
この編成は国鉄時代に冷房改造され、屋根上にはAU75集中クーラーを搭載。その際に運転台上の大型押し込み式ベンチレーターをグロープ式に交換しています。JR時代に入り、前面強化とシールドビーム化、アンチクライマーの設置などの改造が実施されました。
先ほどお話ししたように、厳密に言えば403系を指し示すのは中間電動車となります。
電動車ユニットの主電動機を制御するのがM車のモハ403です。

(モハ403-9・高萩・2005年9月4日)
モハ403は主制御器、主抵抗器など直流機器だけを搭載しています。主制御器は401系と同様に平坦線区向けのCS12ですが、主電動機が強馬力形のMT54となったため容量は増やされています。同様に主抵抗器の容量も増大しました。CS12はモハ403とモハ402に搭載されている合計8個のMT54を駆動します。なお平坦線区向けですので抑速ブレーキはありません。なお交流を変換した濁った直流(脈流)を使用するため、直流電気機器は脈流対策が施されています。
モハ403-9は1989年に車体更新と冷房改造が実施されましたが、車体補強を省略してコストを削減
するために集約分散式のAU712を2基搭載しました。
モハ403の相方となるM'車モハ402は交流関連機器を集中搭載しています。

(モハ402-9・高萩・2005年9月4日)
モハ402はパンタグラフ、主変圧器、主整流器などを搭載。交流20,000V50Hz区間と直流1,500V区間を直通するための交直転換器を備えています。直流区間では、直流1,500Vをそのまま相方のモハ403に供給しますが、交流区間で交流20,000Vを主変圧器で交流1,500Vに降圧し、主整流器で直流1,500Vに変換してモハ403に供給します。主変圧器は50Hz専用のTM9。なお421系、423系の主変圧器は60Hz仕様のTM10となっています。
なお冷房改造に際して屋根の構造上AU712を搭載することができないため、従来通り車体を補強してAU75集中クーラーを搭載しました。
403系勝田車は1985年に開催された筑波万博へのアクセス列車「エキスポライナー」に使用されました。それに先だって1983年からカラーリングをクリーム10号に青20号のラインへ変更しました。

(「エキスポライナー」クハ401-66・日暮里・1985年3月)
クハ40-66は冷房改造後も運転台上のベンチレーターが大型押し込み式のままになっています。
1987年4月1日。JR東日本が発足し403系も事故廃車となった2両を除いて全車承継。

(クハ401-60・鶯谷・1987年4月)
JR発足後しばらくは、記念ヘッドマークを掲出していました。
この頃はまだ非冷房車も残っていました。塗色こそ変わりましたがこの姿が原形と言えるでしょう。

(クハ401-76・鶯谷・1987年4月)
クハ401-76は新製時より運転台上のベンチレーターが大型押し込み式となったグループです。なお最終グループは押し込み式ベンチレーター化されていますが、この最終グループを見た記憶はありません。
意外と見る機会があった403系。415系1500番代の投入やE501系に置き換えられて徐々に数を減らしていったものの、E531系の投入まで生き残っていました。しかしE531の投入が始まった2005年から再び運用を離脱する編成が現れ、疎開留置される姿が見られました。

(クハ401-68・高萩・2005年9月4日)
最後まで残っていた403系の1両であるクハ401-68はモハ403-9などとともにAU712集約分散クーラーを2基搭載していましたが、E531系の投入で早々に引退しています。そして403系は2007年3月18日のダイヤ改正で引退。2008年には全車廃車となっています。
これでグローブ式ベンチレーター搭載の交直両用近郊形電車は見納めとなりました。