そんないすみ鉄道の経営努力のひとつが、キハ52 125を使用した観光急行列車の運転です。

(キハ52 125・上総中川~城見ヶ丘・2012年12月16日)
この観光急行列車は土日祝日に大原~大多喜間を2往復運転されています。12月の運転案内によると、ヘッドマークは土曜が「夷隅」、日曜が「そと房」、そして祝日はヘッドマークなっているそうです。祝日が土日と重なる場合は土日が優先となります。また雨天の場合はランダムで変更されるそうです。

(キハ52 125・大多喜・2012年12月16日)
急行料金は当日発売で300円、急行指定席料金が600円。

(キハ52 125・大多喜・2012年12月16日)
ちゃんと「急行」のサボも入っていますね。そして単行だけど「1号車」の号車札が。
また大多喜~上総中野間でも料金不要で臨時運転されることがあるようです。
キハ52は一般形気動車キハ20系の一員となる両運転台車ですが、勾配線区向けとしてDMH17エンジンを2台搭載しています。
台車は2個とも動力台車のDT22。DT22の駆動車輪は1軸のため、1エンジン車だと落ち葉や雪、氷などで空転(スリップ)しやすくなるので、冬季は単行運転を避けて2両以上に連結する必要がありましたが、2エンジン車のキハ52の駆動車輪は2軸あるため空転にも強く、冬季の勾配線区でも単行運転が可能でした。
また国鉄時代は急行形には両運転台の2エンジン車がなかったため、このようにキハ52が急行に使用されることもありました。

(「いなわしろ」キハ52 17・会津若松・1980年8月)
いすみ鉄道の臨時急行は、国鉄時代の急行列車の再現もしているというわけですね。
ちなみにキハ52 0番代は垂直シリンダーのDMH17Cを2台搭載していました。いすみ鉄道のキハ52は水平シリンダーのDMH17Hを搭載しているため100番代に区分されています。
さらに付け加えるとDMH17HのDMはディーゼルモーター、Hは8番目のアルファベット=8気筒を表し、17は排気量17リッター、そしてHは水平を意味するHorizonの頭文字です。
話を戻しましょう。
いすみ鉄道を走るキハ52 125はJR西日本大糸線で活躍してきた3両のキハ52のうちの1両です。

(キハ52 156/キハ52 125/キハ52 115・糸魚川・2010年2月27日)
3両とも越美北線から1992年に転属し2010年3月13日のダイヤ改正まで使用されていました。一番右はキハ52 115で2004年7月に一般色(クリーム4号+朱色4号)に塗装。2010年3月31日に廃車後岡山県の津山扇形庫で保存されています。一番左のキハ52 156は2004年12月に首都圏色(朱色5号)に塗装されました。2010年8月21~22日に運転された臨時快速「ジオパーク号」に使用された後、10月1日付けで廃車。糸魚川市に譲渡されましたが、大糸線での観光列車運転の構想があるようで、現在も金沢総合車両所松任支所で保管されているそうです。
3両とも越美北線時代にワンマン化されて冷房装置を設置。便所は撤去されました。

(キハ52 125・根知・2004年4月2日)
この白に緑色のストライプは越美北線色。大糸線転属当初はこのカラーリングで活躍していました。
キハ52 125は2006年11月に鉄道省色(黄褐色2号+青3号)に塗装されました。

(キハ52 125・頚城大野・2009年5月19日)
1959年9月以降製造のキハ20系は一般色となっているため、1960年製のキハ52 125が鉄道省色を纏ったのはこれが最初ということになります。
キハ52 125がキハ52 156とともに「ジオパーク号」に使用された後、2010年9月1日付けで廃車され、いすみ鉄道にやって来ました。12月12日にこの鉄道省色で撮影会を実施し、その後一般色に再塗装されました。
そして2010年4月29日から営業運転を開始しました。

(キハ52 125・上総中川~城見ヶ丘・2012年12月16日)
関東では小湊鉄道にだけ残るDMH17エンジンのサウンドが響き渡る様子を見るのは楽しいものです。
いすみ鉄道ではさらにキハ28 2346をJR西日本から譲渡され、現在整備が進行中です。

(キハ28 2346・大多喜・2012年12月16日)
国鉄急行色を纏い「うち房」のヘッドマークが装着されています。
車庫の長さが足りずにお尻が飛び出しています。

(キハ28 2346・大多喜・2012年12月16日)
所属表記は「千カウ」。これはかつて木原線の気動車が所属していた勝浦機関区をイメージしたもののようです。
さて、キハ28は急行形気動車キハ58系の一員で、DMH17Hを1台搭載した片運転台の普通車です。キハ28 2346はキハ28 346を1972年に冷房改造するとともに3両分の冷房用電源給電能力を持つ4VK冷房用発電装置を搭載し、+2000の2346となりました。
キハ28 346は1964年4月15日に米子機関区に新製配置されましたが、5月24日に新潟機関区に転属し、さらに7月14日に千葉機動車区に転属。房総地区の海水浴期間に活躍して9月17日に米子機関区に転属していて、房総地区と縁がある車両です。
その後七尾機関区、富山運転所、高岡鉄道部、小浜鉄道部と渡り歩いて2003年に高岡鉄道部に転属。高岡鉄道部塗色となりました。

(キハ28 2346・富山・2004年7月31日)
その後越美北線の災害救援にも使用されたほか、2007年には富山鉄道部に転属して高山本線で使用されました。
廃車後金沢総合車両所松任支所で国鉄色に塗り戻され、いすみ鉄道に搬入。現在は保安機器を始めとした整備が進められています。
営業開始は2013年初頭とのこと。キハ52と連結して運転されることになります。
国鉄形気動車2両編成の運転が予定されているいすみ鉄道ですが、さらにもう1両国鉄形気動車が入線することが決まっています。それが久留里線で使用されていたキハ35系通勤形気動車、キハ30 62です。

(キハ30 62・久留里~平山・2010年1月11日)
久留里線では3両のキハ30が使用されていましたが、キハ30 98とキハ30 100が水島臨海鉄道に譲渡されることになっており、残るキハ30 62がいすみ鉄道に譲渡されることになったようです。このキハ30 62は勝浦に新製配置されて木原線で使用されていた実績があり、里帰りともいえそうです。ただしキハ30はエンジンをカミンズ製DMF14HZに換装されてしまっていますが。
キハ30 62は2013年1月ごろに配給回送されるようですが、詳細はまだ発表されていませんね。
それにしても一般形、急行形、通勤形と揃ったら近郊形気動車も入れて欲しいと思うわけです。しかし近郊形のキハ23系は既に全廃されているので、後継車であるキハ40系しか選択肢がないですね。

(キハ47 189・会津若松~堂島・2006年11月4日)
ちょっと新しい気動車ですが、近郊形が入れば両開き3扉(通勤形)、片開き2扉(一般形)、両開き2扉(近郊形)、片開き2扉デッキ付き(急行形)と揃うので楽しいのですけどね。
ともあれ、国鉄形気動車が続々集まってきているいすみ鉄道。

(キハ52 125・上総中川~城見ヶ丘・2012年12月16日)
いすみ鉄道からは目が離せませんね。