東京総合車両センターに行って来た!(その4)「青い継ぎ手と緑の継ぎ手」 | はやこま すていしょん!

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更新頻度は遅めですが、日々の出来事や趣味的なことを書いていこうかなと思っています。若干鉄分は濃い目の予定(笑

前回紹介したE233系のDT71形台車。DT71は動力台車なので台車にはMT75形モーターが搭載されています。
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国鉄形新性能電車とJRの電車の駆動方式は平行カルダン駆動方式といいます。これはモーターを台車枠に、文字通り車軸と平行になるように搭載した構造になっています。そしてモーターの駆動力はモーターの出力軸につながる小歯車と、車軸に直結している大歯車の噛み合わせによって伝達されます。余談ですが、ギヤ比はこの小大歯車の歯数の比率を示したもので、E233系の場合1:6.06となっています。
ところで、車軸と台車枠の間には軸バネがあり、軌道からの振動と衝撃を吸収させています。つまり車軸は走行しながら上下するわけですが、その一方でモーターは台車枠に固定されているため上下はしません。国鉄形旧性能電車の吊り掛け駆動では小歯車と大歯車の隙間を大きくして車軸の振動を吸収していましたが、カルダン駆動車は小歯車と大歯車の隙間を最小限としているため、車軸の上下動を小歯車とモーターの間で吸収する必要があります。そこで登場するのが継ぎ手です。

国鉄、JRノ在来線の線路幅は狭軌と呼ばれる1,067mmを採用しているため、車輪の間隔に制約があります。そして当時主流だった直流モーターの小型化にも限界がありました。そこで国鉄形新性能電車が採用したのは東洋電機製造が開発した中空軸平行カルダン駆動でした。
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これは103系用のMT55形モーターですが、中空構造となったモーターの回転軸(中空軸)を左側のたわみ板に連結し、そのたわみ板に取り付けたネジリ棒が中空軸を通過して写真右側のたわみ板に連結され、小歯車とつながります。このネジリ棒とたわみ板が車軸の上下動を吸収し、モーターのサイズを最大限に確保しました。

VVVFインバータ制御を採用した209系に搭載されたMT68形は三相交流誘導電動機と呼ばれるものですが、直流モーターと比べて小型軽量化が図られました。
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その結果、車輪間の空間に余裕ができたため、中空軸とネジリ棒は廃止され、カーボンプレートをたわみ板が挟んだようなTD継ぎ手が採用されました。

三相交流誘導モーターの内部構造もかなりシンプルなものとなっています。
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MT68の1時間定格出力は95kWとMT55の110kWより小さいのですが、実際にはMT68は1時間以上の過負荷使用を前提に設計されたので、実質的な出力は150kW以上となるようです。

こちらはE217系用MT68Aモーター。
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センサボックスが廃止されて、冷却風排出口が増えていますね。ということはモーターの回転音も違って聞こえていたのでしょうか?

MT68Aは回転子のカットボディが展示されていました。
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三相交流モーターでは直流モーターの欠点だった通電ブラシという摩耗部品が廃止されたため、メンテナンスフリー化が進みました。

209系500番代2次車、209系1000番代、217系7次車とE231系はMT73となりました。MT73はMT68よりも高回転に耐えるように強化され、外観上では冷却風取り入れ用のエアフィルターボックスの形状が大きく変わり、冷却風排出口がまた減っています。
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MT73のカットボディをみるとエアフィルターの形状が全然違う事がわかりますね。このフィルターはE231系の途中から変更された模様。
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また出力軸と反対側に検知ギヤが設けられていますが、これはモーターの回転数をTIMS(トレイン・インフォメーション・モニタリング・システム)が管理しているということなのかな?

そしてE233系用のMT75形、1時間定格出力は140kWとなりました。
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軸受構造は240万km走行非分解を目指した構造とし絶縁軸受を採用しています。また騒音はMT73よりも2dB低減させたのだそうです。

このMT75も他のモーター同様TD継ぎ手を使用しているのですが、なぜかこの継ぎ手だけ緑色をしていますね。
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ちなみに写真のMT68Aをはじめ、MT68、MT73は青いTD継ぎ手です。
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話を聞いてみたらMT73以前とMT75ではモーターのサイズが異なり、その寸法差をTD継ぎ手の厚みで調整しているのだとか。それで間違えて装着しないように色分けしているそうです。

色々な種類の大量なモーターを整備するための工夫のようですね。
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(続く)