交直両用電車は、直流1500V電化区間と交流20000V電化区間の両方を走行することができる電車ですが、実は電車の制御システムは直流電車とまったく変わらず、CS12主制御器とMT46モーターを搭載した抵抗制御車となっています。
直流回路と交流回路の切換は、交直切換器を使います。直流区間では直流電車と同様な回路構成で運転しますが、交流区間では交流20000Vを車両に搭載した主変圧器で交流1500Vに降圧し、整流器で直流1500Vに変換して運転します。つまり直流電化区間の沿線に設置されている変電所を電車自らが搭載しているのが交直両用電車というわけです。
401系、421系と同時に2形式登場したのは、周波数の違いによって主変圧器が異なるためで、401系が交流50Hz対応のTM2を搭載し、421系が交流60Hz対応のTM3を搭載。なお主変圧器以外は両形式に違いはありませんが、電動車はもとより制御車までわざわざ別形式にしているのが、この系列の特徴といえます。
元々交流電化方式は地上設備投資を抑制し、列車運転本数がさほど多くない地方エリアを中心に電化推進することを目的としていましたが、常磐線取手以北は沿線にある気象庁地磁気観測所へ影響を与えないために交流電化されました。
そのため常磐線の取手以北から上野へ向けて交直両用電車が上ってきていましたので、401系は意外と身近な存在ではあったのですが、あのローズピンク(赤13号)一色でライト回りだけがクリーム4号というカラーリングという事もあって、なんだか地味な印象が強かったです。

(鶯谷・1982年8月)
401系のクリーム色登場当時はクリーム1号だったそうです。また低運転台車は晩年シールドビーム化されていました。
401系で目新しかったのは、近郊形電車ということで車体が両開き3扉セミクロスシートとなったことです。前面デザインは153系と同様の新湘南顔ですが、運転台の奥行きが狭くなっています。
一方60Hz仕様の421系は、山口県以西に行かないと見ることができなかったのですが、1984(昭和59)年の九州初上陸の時に対面を果たしています。

(博多・1984年8月)
421系は登場当初ライト回りと車体裾部の細いラインがクリーム2号だった様ですが、後年ラインは廃止され、ライト回りはクリーム4号となっています。
低運転台の近郊形は401系と421系だけしか存在しなかったので、低運転台車を見かけるとちょっと嬉しかったりしました。
クハ401-50~は高運転台となりましたが、そのまま403系の先頭車としても製造されていて、401系とともに製造されたのは50まででした。で、調べてみたら該当するクハ401高運転台車の写真は撮影していなかったようです。まぁ外観での区別がつくわけではないのですけどね。
逆にクハ421の高運転台車は421系と共に製造された39以前の写真しかないようです。

(クハ421-25/博多・1984年8月)
結局421系を見たのはこの時限りでした。
一方401系の低運転台車は晩年に筑波博臨時列車「エキスポライナー」にも使用されて華を飾りました。

(我孫子・1985年8月)
その時にカラーリングをアイボリーホワイト(クリーム10号)に青20号のラインに変更したのですが、神奈川在住の鉄からは「小田急常磐線」って揶揄されていましたね。まぁ垢抜けた感はありましたが。なお401系低運転台車は1987(昭和62)年に全車廃車されてJR東日本には承継されませんでした。
自分が撮影した401系はこれが最後だったようです。
交直両用電車のパイオニア的存在だった両形式ですが、1両も保存車がないまま401系は1991(平成3)年までに全車廃車。そして421系も1996(平成8)年までに全車廃車となっています。結局自分にとっては最後までなんとなく地味な印象のままでした。