マサオ・ミヨシ講演会
今日は大学のセミ・クローズドの研究会で、マサオ・ミヨシの講演会がありました。マサオ・ミヨシは米国カリフォルニア大学の英文学の教授ですが、日本文学の研究者としても、グローバリゼーション文化研究者としても世界的に著名な左派知識人です。日本語で読めるものとして、「抵抗の場へ 」という本があります。カリフォルニアの大火事のせいで、来日直前まで避難生活をしていたそうです。うちの大学によく来てくれました、ほんとうに。
講演のタイトルは「アメリカの大学と教養教育」というものだったのですが、講演の内容のほうはかなり脱線して、最初は中世ヨーロッパの大学の話やアメリカの大学成立の背景の話だったのですが、途中からはグローバル化と新しい知のあり方について、かなりスケールの大きな話になって終わりました。質疑応答も環境問題からグローバリゼーションの話など、タイトルとはあまり関係のない話題が中心になったのですが、主催者が「面白ければテーマから逸れてもかまわない」と割り切ってくれたおかげで、自由闊達な意見交換がおこなわれました。
大学という場所は昔から、一方では職業教育の場としての役割もありますが、他方では理念を追求する場としての役割も担ってきました。つまり、一方は現実への適応、他方は未来に向けた革新を準備する役割です。就職教育やら資格教育やらコミュニケーションスキルやら、現実適応のための「実学」ばかりが求められる昨今ですが、未来のための「虚学」がなければ、知というものは死んでしまいます。
そうした意味でも、人類の未来という大きな視点から新しい知のあり方、大学のあり方、そして大学教員のあり方を説くような講演というのは、ありそうでなかなかないものですから、皆さん膝を乗り出して聞き入ってました。ほんとうは、大学ってそういうことを考えるところじゃないかと思うのですが、実際にはどんどんタコツボ化する一方です。ひるがえって本学を省みると、専門教育と就職教育は重視されているのに、肝心の教養のほうはあいかわらずの大人数講義で、情けないことしきり。まあ、まだマシなほうかもしれませんが・・・。
終わった後の懇親会でも、今回の講演の内容から、うちの大学の今後のあり方についていろいろな意見が出て、なかなか楽しかったです。