スカトール (1) | ロゼッタへの道

スカトール (1)

 ジェンダー的にマイノリティとされる学生に殴られそうですが、それでも学生のためにあえて修羅の道へ。


 小学生のころ、いまは亡き父に「ウンコってなんでくさいの?」と聞いたことがあります。

 父は理系の研究職に就いていたせいでしょうか、こう答えました。


 父 「それはスカトールっていう物質が含まれているからだ」。

 私 「スカ・・・?」

 父 「スカトール」

 私 「どういう意味の言葉?」

 父 「糞の臭いっていう意味の外国語だ」

 私 「へえ、なるほど・・」


 で、何が言いたいかというと、この説明ってどこかおかしいと思いませんか?


 だって、「ウンコの臭いがくさいのは、ウンコの臭い(=スカトール)がくさいからだ」というのは、ほとんど同語反復(トートロジー)だからです。


(注)ちなみに「・・・オール」とか「・・・チオール」というのは、香りの化学的成分のことを意味する接尾語です。たとえばヒノキの臭いのする成分(化学物質)は「ヒノキチオール」って言います。


 ただし、スカトールは「ウンコの臭い」という意味の名前ではありますが、同時に物質でもありますので、完全な同語反復にはなっていないため、その物質そのものをみたことがなくても、妙に納得させられてしまうところがあります。


 じゃあ、その物質が存在すると仮定されていても、見つかっていないばあいはどうでしょうか?たとえば次の例を考えてみましょう。


(例)阪神ファン(トラキチ)の臭いは、トラキチオールの臭いである(もちろんそんな物質ありません)。


 「こんな妄想を」と思われるでしょうが、先のスカトールとトラキチオールの違いは、極端にいえば、ただ後者が「物質として」みつかっていないだけです。それだけで後者を「妄想」として片づけられるでしょうか?


 こんな例だったらどうでしょう。


(例)反社会性人格障害は、脳内の反社会性人格形成物質が増大するために起こる。


 あるいは、もっとよく知られている説明として


(例)快感は、脳内に快感物質が発せられることで起こる。


 最後の例は、かなり人々のあいだに共有されて「事実」とみなされているようです。


 それでもよくみれば、すくなくとも因果関係の説明としては、どの例もトラキチオールと同レベルじゃないでしょうか?



・・・論文を書いていると苦しかったので、こんなしょうもないこと書きました。ごめんなさい。ちなみに、調べたら、スカトールは香料としてタバコにも使われてるそうです