家族を見送った後、朝食の後片付けをし、掃除機をかけ、洗濯物を干し、いつも通りの朝。

出勤の10分前でした。
ミシッと一瞬揺れ「地震?」と思うか思わないかの瞬間「ドーン!!」と爆発音のような音と共に身体が沈み、視界が回転し、色んなものが割れる音。
続いて緊急地震速報の不吉な音がけたたましく鳴り響く。

ダメだ、助からない、と思わず「キャーッ!!」と悲鳴をあげていました。
それでもとっさにメアリーを守らないと!と思い「メア!!」と叫んだ時、メアリーは本能的にどこに行けば安全かを知っていたように一目散に寝室のクローゼットの毛布へ。
そして怯えて震えていました。
「メア、大丈夫、大丈夫だよ」と繰り返し言う私の声は涙声で、手の震えを止めることができませんでした。

メアリーの上から何も落ちてくるものがないことを確認してからキッチンを見に行くと、さっき片付けたばかりの食器類が床に粉々に割れて散乱していました。
冷蔵庫が開き中身は床に落ち、たまごは割れていました。
冷蔵庫の上の電子レンジが落ちかけて壁で止まっていました。

このままメアリーを置いて仕事には行けない。
割れて散乱しているガラスを片付けないと。
上にあるものを全部下ろさないと。
倒れそうなものを確認しないと。
まだ揺れが続いている。
動かないといけないのに、手が震えて動けない。
どうすればいいのかわからない。
パニックってこういうことだな。

みんな無事かな。
どこに居るのかな。
不安で泣いていないかな。

旦那さんからの電話でハッと我に還りました。
手が震えていたので、応答の画面をうまくタッチできません。
「やっと繋がった!大丈夫?」
「大丈夫やけど、ガラスが割れて大変…」

モノが少なくて良かった。
家具がなかったから倒れるものがなくて良かった。
でも重たい活力鍋が棚から落ちていて…これに当たっていたら、私もメアリーも死んでいたかもと思うとゾッとしてまた震えてきました。

旦那さんが一旦帰ってきてくれて、やっと安心できました。
帰るなり「家壊れてるわ…」と。
ところどころ家の壁にヒビが入り、外壁が剥がれ落ちていました。
網戸が外れて外に落ちていました。
引っ越したばかりでショックだけど、命が一番だから。
命があればいい。

長女と次女はLINEで連絡がつきました。
「メア大丈夫?」と。
一番にメアリーの心配をしていました。
電車の中で地震に遭い電車が止まり、しばらく閉じ込められてから、線路上で下ろされて歩いて最寄り駅に向かっていると。
ひと安心。

三女は通学時、携帯電話を持っていない。
連絡の取りようがない。
でも脱線事故のニュースはないからきっと無事だろう。
学校も電話が繋がらない。
どうしよう。
どこで地震に遭ったかがわからない。
思い当たる駅に向かったとして、果たしてそこに居るか?
車も渋滞で動かないのでは?

でもただ考えていたって不安なだけ。
メアリーと家を旦那さんに任せて、車を出しました。
ご近所のお家の屋根瓦が落ちて道路で割れていました。
水道管が破裂して道路に水が溢れていました。

予想通り、道路は大渋滞。
いつもなら20分くらいの道のりに2時間半かかって、目星を付けていた駅でようやく娘に会えました。
誰かに携帯を借りようと思ったけどみんな自分のことで大変そうだし、駅員さんもみんな忙しそうだし声をかけられなかった…
歩いて学校に行こうかとも思ったけど、遠いし道がわからないし、ここで動かずに居た方がいいと思って待っていた、と。
駅はタクシーを待つ人で長蛇の列でした。

その間に長女と次女は2時間かけて徒歩で帰宅していました。

夕方前に家族全員が家に戻り、やっと心の底から安心できました。
でも油断はできない、まだ余震は続いています。
当たり前が当たり前じゃないことを改めて突きつけられます。
旦那さんはまた仕事に戻っていきました。
離れるのが怖い。
怖いけれど、家族を守らなければ。
大人が怖がっていたら子どもたちはもっと不安になるから
「引っ越したばっかりやのにこの家ヤバイなー、もう笑うしかないよねー」
「ただでさえ食器少ないのにほとんど割れたし、またモノが減ったねー」
なんて笑ってみます。

子どもたちに不安は見せない。
「無いもの」じゃなくて「在るもの」を見る。
「在るもの」に感謝する。

23年前の阪神淡路大震災を一気に思い出す。
あの時もドーン!!という爆発音のような音だった。
テレビが吹っ飛んできた。
家にヒビが入っていた。
でも、あの時の私には怖いものがなかった。
なんにも考えていなかった。
自分のことだけ考えていた。
「自分を盾にしても守りたい命」がなかった。
自分の命すら大切に思えなかった。

今の私には守りたいものがある。
だから今の方が怖い。不安でたまらない。
怖くて怖くてしかたがなくて、手が震えてしまうのです。
どうか、やっと手に入れたしあわせがどこかにいきませんように。
私に最後まで守らせてください。


まだまだ余震が続いています。
皆さま、励まし合ってどうか身体も心もお大事に。