私達の学び舎、天狼星神女学院は
信州の豊かな自然に抱かれたこの世の楽園です。
冬の澄んだ空氣の中、ワルツのピアノの音が静かにこぼれていました。
その音は、凍てつく空気をやわらかくほどいていきます。
尾根を一望できる大きなガラス窓に囲まれた音楽室。
鍵盤机が擂り鉢状に広がる教室の中央で、一人の少女がグランドピアノに向かってワルツを奏でるのは
中等部弍年A組、西音寺舞咲季。
私、内村 心露の親友です
彼女は143cmと小柄な身体に似合わず、
鍵盤の上に置かれた指先は、育ちの良さを感じさせるほど凛としていて、
まるでプリマが舞うように軽やかだった。
しかし、講義終了の鐘が《カラーン コローン》と響いた途端、
さっきまでの集中と品はどこかへ飛び、
「ん〜〜っ、まだ弾きたい〜!」
と天真爛漫な声が跳ねた。
背伸びをしながら両の指をワキャワキャうねらせ、
大きな椅子から「よいしょっ」と軽く飛び降りる姿は、
つい目で追ってしまう無邪気さだ。
片付けを終えると、公恵と心露がやってきた。
「マーちゃん、ピアノほんと上手〜」
と心露。
「え〜、“ココ”ちゃん褒めすぎ〜。耳コピだよ? 適当適当〜」
と舞咲季が笑えば、
「でも〜、楽譜と全然違うよね♡」
とキミちゃんこと[家神公恵]さんがさらりと毒づく。
「もうっ、キミちゃんは言いすぎっ!」
と舞咲季が頬をふくらませた
三人は顔を見合わせて笑いあった――。
「でも、全然違っても自由で心地よい響きだから大好きだよ」
「ありがとうココちゃん〜」
公恵が
「まーちゃん、
明日は私と連弾しませんか?」
「イイよ〜〜
負け無いからね!!」
と舞咲季
「イヤイヤ、私は勝ち負けは関係なく
単純にまーちゃんの演奏な合わせて奏でて楽しみたいんですよ〜」
「ああ、成る程、確かに確かに
そうだよね〜」
心露が
「そもそもまーちゃんは何の勝ち負けを想定してたのですか〜?」
と疑問に感じた事を聞いてみたらまーちゃんは即答で
「速弾き〜」
!!
「成る程、それは対決だよね〜」と二人は納得していた