(その6)
報告を避けて描写に
旅先の吾子の温き絵葉書を日に幾度も出して読みぬ
「温き」は作者の感じた感銘であろうが、それはこの歌の表現の結果において、読者の感じるべきものであり、作者が説明してはならないものである。
だから「旅先の吾子のくれたる」でよい。
また「日に幾度も」と説明しなくとも、「またとり出して」といったことでわかるのである。歌の言葉はくどくなく、あっさりといったほうが、読者に伝わるものである。
結句の「読みぬ」は報告になっていて、読者の共感を誘わない。
つまりこの歌は、
旅先の吾子のくれたる絵葉書をまたとり出して読み返しをり
ということでよい。または、
旅先の吾子の出せし絵葉書はまたとり出して読むに飽きざり
でもよい。
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ついつい、自分のつくった短歌を人に伝えようとするあまり、まるで業務報告しているかのような歌になってしまうことがあります
この添削例は、それを適切になおしているものです。
「報告」ではなく「描写」へ!
短歌はやはり描写力がものを言います。
その力をつけるために、いろんな短歌に触れ、自分の個性をみがきたいものです