偶然、図書館で城山三郎氏の本を目にする。
城山三郎氏の本は大好き。
特に、第5代の国鉄総裁の石田禮助を扱った『租にして野だが卑ではない』が一番印象深い。
今回の本のタイトルは『本当に生きた日』新潮社
昭和61年の作品。
今から約40年前。
ちょうど、前年に男女雇用機会均等法が成立し、この作品が出された年に施行された


大まかなあらすじを述べる。
※ ネタバレしないように気をつけます。
主人公の素子は子ども2人抱える専業主婦。
ちなみに夫は単身赴任中。
その素子のもとに、高校の同級生で女性実業家のルミが現れる。
ルミはアメリカ在住経験もあり、女性が活躍する社会の実現に向けて、ひたすら突き進む

ルミは素子を自社の『副所長』として招き入れる。
素子の意思とは関係なく、ビジネスの世界に巻き込まれることとなる

その世界とは『食うか食われるか』の弱肉強食の世界

今でこそ改善されているが、当時は女性だけで活躍するにはメチャクチャハードルが高い

その結末は・・・。
ここから、私見を述べる。
ちなみに著者の城山氏は専業主婦の仕事にも未来や希望があると言いたいように感じる。
しかし、40年後の今現在、専業主婦は絶滅危惧種になっているように思う

私の周りを見渡しても、専業主婦は数えるほどしないない。

さて、私が述べたいのは、女性の社会進出がいいか、家庭に入るのがいいかの議論ではない。
心に刺さったのは、当時のビジネスの世界

城山氏の著書には、経済小説が多いことは有名。
本作品では3つのコトが多く取り上げれていた。
まずは『M・N・N』。
当時のビジネスでの成功(サクセス)は、MNNと言われていたようだ。

M・・・メンターの略。精神的な保護者、引き立ててくれる後援者。
N・・・ネットワーク。人脈、人の繋がり、コネとは異なり、もっと知的で広がりのあるもの。
N・・・ニュース・ヴァリューのこと。話題性のことであり、イベントやパフォーマンスなど話題となること。
他にも、3つについては、ルミは夫や子供に対して3つの『無』を貫き通す。
<夫や子供への3つの無>
・無期待
・無親交
・無干渉
また、ルミの職場で働いている女子社員(OL)たちの職業選びの基準が述べられている。
<OLの職業選びの3条件>
・場所・・・都心部。
・金 ・・・賃金が良いこと。
・時間・・・労働時間が緩やかなこと。
3つ以外にも、5つの条件が取り上げれていた。
それはマズローの5つの欲求。
①生理的欲求
②安全欲求
③社会的欲求
④尊厳欲求
⑤自己実現欲求

ルミは女性も④、⑤を満たすために社会進出するべきと主張している

話は変わるが、日本の政治家の必須アイテムは『ジバン(地盤)・カンバン(看板)・カバン(鞄)』の3つと言われている。

また、社長が職を辞めない理由は『車・秘書・個室』の3つの旨味があると聞いたことがある。

話を戻す。
確かに今現在において、専業主婦は皆無に等しい

しかし、これほど技術が進歩した社会と言われても『M・N・N』は形こそ変えてはいるものの、今も確実に存在していると思う

本書ではネットワークを広げるために名刺交換会に参加したと書かれている。
現在ではインターネットを通して、人の輪を広げているといえる。
もう1つの『N』である『ニュースヴァリュー』も、今もしっかりと根付いている。
トレンドとなる話題性に飛びつく視聴者、そして、その話題に飽きるのも早い

タピオカ屋、から揚げ屋、台湾カステラ、芸能人のスキャンダル・・・。
高速道路並みのスピードで話題が駆け抜けてる感じ。
この本も約40年前の作品であり、シチュエーションに違和感を感じる面はあるが、当時の時代背景として受け流す。
それよりも、『M・N・N』『夫や子への3つの無』『職業選びの3要素』、『マズローの5欲求』は今も通用する話ではないだろうか

結局は、技術はドンドン進歩してるが、人間の本質は変わらない。