今、話題になっている本を探しに図書館に行く
。
その本とは柴田哲孝著『暗殺』幻冬舎 2024.6.19
。

安倍晋三元総理大臣が白昼堂々、2発の銃弾で倒れる
。
その事件を題材として膨大な資料や取材を基にして書かれたフィクション小説。
様々な報道を通してこの本の存在を知り、読んでみたくなった。
書店の店頭にこの本が積まれていることは知っている。
ここでもケチな性格が顔を出す
。
図書館で借りた方がいい。
検索コーナーで本の名を入力すると『貸し出し中』『1件の予約中』と表示される
。
「やっぱり、人気本なんだ」と落胆する
。
気を落としながらも、著書名『柴田哲孝』で検索し直す。
すると、かなり多くの本を書いていることを知る
。(知らなくてスミマセン
)
その中で、あるタイトルに目に留まる。
柴田哲孝著『下山事件 暗殺者たちの夏』祥伝社 平成27年6月30日初版

注目した理由は2つ。
1つは、探していた本のタイトル『暗殺』とサブタイトルが似ていること
。
2つ目に、私の好きな時代の昭和混乱期に起こった『下山事件』だったこと
。
松本清張著『日本の黒い霧』シリーズでもこの事件が取り上げれていることは承知している。
すぐに、この本を手に取って読み進める。
約500頁にもなる分厚い本にもかかわらず、たった1日で読み終えてしまった
。
それだけグイグイ引き込まれてしまった
。
ネタバレしないように気を付けながら、感想を述べる。
まず最初に衝撃を受けた言葉がある。
あとがきの中の1文。
著者の大叔母曰く:~下山事件をやったのは、もしかしたら兄さんかもしれない~
つまり、著者柴田哲孝氏の祖父、柴田宏が下山事件の犯人かもしれないと言っているのだ。
この文章に衝撃を受ける。
事実を先に言うと、この事件は未解決のまま時効を迎えている
。
当時の警察主流派は『自殺』として片付けたかった。
しかし、警察内、検察の一部、東大の法医学者の古畑教授は『他殺』を主張。
※東大の古畑教授は『死後轢断』と言い、決して『他殺』とは言わなかった。
この事件を『他殺』だと堂々と主張し、世間に大きく影響を与えたのが先ほど名前を挙げた作家の松本清張氏
。
松本氏の著書『日本の黒い霧』では、GHQの犯行であると強くにおわせている。
発表当時、タブーに鋭く切り込み、ブームになったとのこと。

さて、この柴田作品では、GHQはもちろん、様々な立場の人たちの利害、利権関係が複雑に絡んでいる背景を克明に描いている。
驚くことには、白洲次郎(ここでは白須一郎)も大きく関わっていること
。

その事件後、電力再編成が行われ、彼が東北電力会長に就任していることもうなずける。
舞台にあまり姿を見せないミステリアスな雰囲気が魅力でもある
。
裏を返せば、きな臭い事件にも絡んでいたということだろうか
。
この当時は戦後混乱期だけあって、事件の背後には色々なことが複雑に影響している。
その一例を以下にまとめる。
<下山事件の背景や影響を与えた一例>
・GHQ内の政争:GS対G2
・国鉄職員10万人規模のリストラ断行
・国鉄労働組合の反発(特に共産党系)
・国鉄内の利権関係(書籍、電力など)
・児玉誉士夫などの大物右翼活動
・その後に起こった『三鷹事件』『松川事件』。
この本が凄いのは、『他殺』と主張するために、目もくらみそうな膨大な資料を基に書いていること
。
GHQ、労組、各種の利権が絡んでいる組織の動きを克明に描いている。
読み終えた翌日も興奮が収まらない
。
読後も、私の頭の中に色々なことがよぎる。
・轢死体に特殊な油が付着していた理由。
・旅館で休憩したのはアリバイ作りの替え玉だった。
・あまりにも轢死体に血液が少ないこと。
・現場に残された衣類が不自然だったこと。
無性に誰かにこの本のコトを話したいと思ったことは久しぶり。
それだけ含蓄のある本だった証拠![]()
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これからも、柴田哲孝氏が書いた『暗殺』を含めて他の本も読んでみたいと強く思う
。